新店オープン時やバーゲンセール開始時(百貨店初売りも含む)の「行列に〇〇人が並ぶ」という報道は必要なのだろうかと、時々疑問に思う。
まったく不要とは思っていない。
オープン時やバーゲン開始時に人が並ぶというのは人気のバロメーターだから報道はそれなりに必要だ。またその行列が想像を絶するほど長いとなると、それはそれでニュース価値がある。

当たり前の話だが、それが何日か後、何か月後、何年か後まで継続するとは限らない。
打ち上げ花火のように一瞬でその人気が終わってしまうこともある。
撤退したJR大阪三越伊勢丹なんてその最たる例だろう。
オープン時に何十万人も人は集まったが、すぐに閑散としてしまった。
初年度から目標売上高を大きく割り込んだ。

先日と言っても今年の正月のこと。
例によって各百貨店は1月2日から初売りを行う。
初売りの目玉は福袋である。

福袋が如何に低コストで作られているかは先日も書いた通りである。
蛇足ながら繰り返す。

総額ン万円の洋服が5点入って1万円と謳われている。
この5点がいずれも過去に店頭販売された在庫品ならそれは書かれている通りである。
しかし、昨今は福袋用にわざわざ商品を作っている。
新造された商品が5点入っている場合、その「ン万円」の価値はない。

コート、セーター、ボトムス、カットソー、ワンピースの新造品5点セットだったとしよう。

これらは5点で1万円の販売価格に合うような原価で製造されている。

単品で販売価格を付けるとすると、ざっと

コート4900円
カットソー700円
ニット1000円
ボトムス1900円
ワンピース1500円

くらいの値段になるだろう。(各アイテムとも多少の誤差はある)

原価率は高くても30%、安いと20%程度だから、各アイテムの原価はどれくらいかはわかるだろう。
30%と仮定するなら、

コート1470円
カットソー210円
ニット300円
ボトムス570円
ワンピース450円

くらいになる。

このブランドが通常店頭に並べる商品と比べるとまったくの安物といえる。
仮にこのブランドの通常商品のコートの価格が10000円だったとすると、
その原価は安くても2000円、高いと3000円くらいになる。

単純に原価だけでは服の価値は決まらないが、それでも3000円弱と1470円ではどちらが品質の良い物なのかはだれでもわかるだろう。

これが「わざわざ作られた」福袋のおおよその中身である。

それはさておき。
某ファッション系のウェブニュースで、1月2日の夜か1月3日の朝には各百貨店の初売りの様子がアップされていたのだが、すべての見出しが「〇〇百貨店〇〇店の初売りは〇〇人が行列」という内容で、しかも同じサイトに数本以上が同時に並んでいたから、読む側からすると何だかゲンナリしてしまった。

「〇〇人が並ぶ」っていうニュースがそれほど重要なのだろうか、と疑問に感じてしまったわけである。

冒頭も書いたように確かにニュース価値はゼロではないが、そんなに数本以上も同時に並べるほどのことなのだろうか。

このニュースだけを切り取って見るなら百貨店人気は衰えずという印象を受けるが、実際のところ、百貨店の売上高は年々下がっている。
コアな固定客はいるものの、新規ファンは取り込めていないのが現状である。
食品はどうだか知らないが、衣料品に関しては新たにできた百貨店ファン層というのはそう多くはないだろう。

ヤングからキャリアにかけてのブランドは百貨店に行かずとも同じブランドが都心ファッションビルにも入店している。そのあたりの年代の消費者からするとわざわざ百貨店で買う理由がない。
目上の人にプレゼントするならまだしも自家需要ならどこの包装紙だろうと構わない。
何ならイオンやドンキホーテの包装紙でも十分である。

そういえば、先日も某コーヒーショップが東京にオープンしていたが、金曜日の昼間という平日にもかかわらず、〇時間待ちだったとファッション系のニュースサイトで報道されていたが、平日の昼間に〇時間も並べる暇人が〇〇〇人も存在していることに驚いた。

これが新聞紙面への掲載なら随分と印象が変わる。
「〇〇人が並ぶ」というニュースは文字数も少なく、枠組みも小さく報道されているからだ。
読者はその小ささから「あ、これは大したことがないニュースなんだ」ということが一目でわかる。
どのニュースでも報道スペースが均等なウェブ媒体はその強弱が分かりにくい。

だから、他のニュースと均等な大きさで「〇〇人が並ぶ」というニュースばかりが並ぶと、違和感がある。

これは媒体の特性上どうしようもないことなのかもしれないが。