南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

堺市ブランド創造事業の住民訴訟

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今日は趣を変えて、失敗に終わった堺市ブランド創造事業について。

今年6月に堺市議が、創造事業を推進した木原敬介元市長や事業を受託した業者に対して、4億2000万円の損害賠償を請求するよう求める住民訴訟を起こし、10月に公判が始まった。
6月時点の産経新聞に掲載されているので、URLを貼り付けておく。

http://sankei.jp.msn.com/region/kinki/osaka/100630/osk1006300339002-n1.htm


堺市が平成17~20年度にかけて、「堺市の製品ブランド化を作る」として合計5億4000万円の税金を支出していた。当初は衣食住のすべての分野でのブランド確立を目指して、ニューヨークでレセプションを開いたりしていたが、最終的に「包丁だけ」をアピールすることに決まるという尻すぼみの結末を迎えた。

数年間の合計とはいえ、5億4000万円もの費用を使い、リサーチとプロモーションした結果が「包丁をアピールすることが有効だとわかった」であるから、なんと無駄な金を使ったものかと呆れてしまう。
この程度のリサーチであれば、単年度で3000万円も使えば十分な資料が完成したであろう。その木原敬介元市長とその側近は、業者に食い物にされたとしか思えない。

この事業が問題視され始めたのは昨年の9月。大阪の毎日放送(MBS)が夕方のニュース番組で扱ったためである。
自分も昨年9月のアパログでもそのMBSの報道に基づいて紹介させていただいている。

http://apalog.com/minami/archive/45

この一連のブログを読まれた、堺市議の田中たけよしさんからも、今年10月には地裁の口頭弁論が始まりましたとのお知らせをメールでいただいた。


常々、書いていることの繰り返しで恐縮だが、行政やそれに準じた「お役所的性質の組織」が主体となってブランド事業やファッションイベントを主催するのは、土台無理な話である。堺市も含めた大阪府内や関西地区にはそんな失敗談の屍がゴロゴロしている。批判を恐れずに言えば、国の経済産業省が推進しているJFW(ジャパンファッションウィーク)やJC(ジャパンクリエーション)などもかなりそれらに近付いているといえる。とくにJCは来年以降の展望がまったく持てていない。(来年以降もやるぞ。という掛け声だけはあるけれど)

「お役所」が声をかけて有識者ないし有力者を集めて合議制で事業を進めるというやり方では、動き出すまでに時間がかかるし、動き出してからもひたすら中庸を行く。ブランド事業やイベントは中庸では何の魅力もなくなるのに。である。
私見だが、少数の突出した企業や個人がリーダーシップを取り、お役所がサポートし、それに「賛同した人、企業だけが」ついていくという形が理想ではないだろうか。オール与党体制では何事も進まない。

今回の堺市の件で、疑問なのが「なぜファッションブランドに取り組もうと思ったのか?」である。現在、堺市を拠点とする繊維企業もアパレル企業もファッションデザイナーもいない。以前には福助が本社を置いていたが。そんな土壌がないのにファッションを掲げたこと自体が馬鹿げた取り組みだったと言える。
最終的に包丁に落ち着いたが、わざわざ5億4000万円もかけてリサーチせずとも、堺の包丁はもともと有名であった。最初から一番有名な包丁に絞って事業を推進し、徐々に他分野に広げるという手法を採るべきだった。
根本からの事業プランミスである。


この住民訴訟がどうなるのか、結果を待ちたい。

保温肌着あれこれ。フィット感が重要

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 肌着メーカーによると、もっとも肌着が活発に動く季節が冬だという。理由は保温肌着である。逆に夏の吸水速乾肌着はそこまでの動きではないようだ。
しかし、今年夏ユニクロが「サラファイン」という夏向け肌着を発売したので、来年以降は夏肌着の動きがどうなるかはわからない。
余談だが、サラファインには旭化成のキュプラという素材が使用されている。サラファインが増産出来なかった理由はキュプラの生産が追い付かなかったと言われている。

さて、保温肌着の代名詞ともなりつつあるユニクロの「ヒートテック」だが、自分はパッチを1枚持っているのだが、それほど暖かいとは感じられない。1枚穿いた分だけの暖かさは実感するが、よく言われるように「汗をかいてしまう」ほどではない。別に普通のパッチでも同じではないかと思う。



 自分がときどき、コメントを発表させていただいたり、ショップレポートをさせていただいているモノ批評雑誌「monoqlo」(晋遊舎)という雑誌がある。古い記録で恐縮だが、この雑誌の今年1月号で、自分の担当ではないのだが各社の保温肌着を比較しているコーナーがある。
横浜国立大学の藤本弥生准教授(当時)のコメントによると「各社の保温肌着に使用されている多くの素材は、アクリレート系吸湿合繊を原料としており、さほど違いがない。違いは他繊維との混紡率である」という。

実は大概の繊維には吸湿発熱する性質がある。その温度が高いか低いかだけの違いで綿(コットン)でも実際は水分を吸着し、熱を放出する。吸湿発熱のアクリレート系繊維が開発されるまでは、ウールが保温肌着に使用されていた。
他繊維とアクリレート系吸湿繊維との棍棒素材の発熱効果自体は、綿やウールと変わらないという実験結果もあるという。


で、この号ではユニクロを含めて6社の保温肌着が比較されていたが、サーモグラフィーによると6社間で大きな差は出ていない。ただ、体感温度に差が出たのは着用時のフィット感にあった。フィット感が高い方が暖かく感じられる。薄手素材で肌に張り付く製品を「暖かい」と感じるようである。とくに袖口がピタっと貼りついている物の方が暖かいと感じやすい。

極言すれば、素材自体の発熱効果はヒートテックもヒートファクトもウォームファクトもブレスサーモもウェルサームもヒートファイバーもそれほど変わらないということになる。あとは自分の体型に合ったフィット感の物を選ぶことが重要となる。

ソフトタッチアクリルニットが大人気

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 今秋冬はニット(セーター類)が大人気だ。いわゆるセーターをニットというが、業界では編物全体をニットということもあり、非常にまぎらわしい。編み方によって横編み、縦編み、丸編みとある。
自分の中では、一般のセーターは横編みで編まれるケースが多いように思う。(ニットにくわしい方、ご意見ください)


さて、冬物のセーターのメイン素材はウール(羊毛)だと考えている。高級セーターはウールではなくカシミヤが使用され、低価格品は化合繊のアクリルが使用されると認識している。
レディースアパレルの取材をすると、とくに1900~3900円くらいまでの低価格ブランドのセーター類で、今秋冬はウールが一切入っていないアクリル100%が増えているように感じる。
もしかしたら、もう何年も前からそうだったのかもしれないが、自分が愛用するユニクロのセーターはいまだに1990~3990円でも、ウールが主力素材なので、違和感がある。


今秋冬のアクリルニットで素材的に大ヒットだったのが「カシミヤタッチ」や「ソフトタッチ」と言われる肌触りの柔らかいアクリルである。これは何も目新しい物ではなく、イオンやイトーヨーカドーなどのスーパーマーケット系の売場には数年前から並んでいた。
ジーユーの売り場にも並んでいる。

おそらく30歳後半以上の方々はアクリルニット=安物というイメージを抱いている。50歳代以上の方々はほぼ全員がそう考えていると思う。
実際に羊毛に比べるとアクリルは素材の値段が安い。化合繊は特殊な機能素材を除いて一般的に天然繊維よりも価格が安い。
例えば綿花の値段が高騰しているが、綿(コットン)の使用量を減らし、ポリエステルを配合すれば素材のコストが下がり、製品の値段は維持しやすい。

しかし、アクリルニットファンも間違いなく存在する。アクリルニットの利点は3つにまとめられると思う。

1、軽い
2、洗濯しやすい
3、ウール特有のチクチク感が少ない


である。

おまけに製品の値段が安い。

で、ソフトタッチアクリルニットの多くは、若い女性向けブランドから展開されている。
今の若い人は所得が少ないから安くて機能的であれば、アクリルニットでも構わないのだろう。それを指して「若い消費者の感覚が退化している」とは思わない。若者らしい、なかなか合理的な判断だと思う。
60歳代以上の人間が「若い世代の感覚退化」を嘆くのであれば、自分らが身銭を切って、若い世代の所得が増えるように、雇用促進の社会的取り組みをするべきであろう。
地位も名誉も獲得した老人が若い世代を非難するだけでは、何も解決しない。それは単なる自己満足に過ぎない。

ちょっと脱線。
ただ、40歳のオッサン(自分のこと)からすると、アクリルニットは何か味気ないと感じる。まあ、これもオッサンの郷愁に過ぎないのだけれども。
そのうちに、ウールセーター=オッサン、オバハンの服というイメージが出来上がるかもしれない。

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