昨日、ちょっとしたミーティングで年少のデザイナーの友人と会った。

かれは「RBT」という自分のブランドを主宰している東哲平くんというデザイナーで、たしか年齢は32,33歳くらいだったと思う。
単独の展示会を開催したり、合同展示会に出展したりという活動を精力的に行っており、当然、同年代でのデザイナーブランド同士の付き合いも広い。独立して6年か7年くらいである。

その彼が「先日、東京の合同展示会に出かけたら、『日本製生地を使用した』ことを売り文句にしている独立系デザイナーが増えていて驚いた」という。

いわゆる小規模な独立系若手デザイナーブランドは、これまで国内で製造された生地に興味を示さなかった先も多くあった。
自分のブランドを立ち上げるにあたって、物作りの背景に興味を持つデザイナーと、ひたすら「ファッション」としてのデザインやシルエット、面白さだけを追求するデザイナーとの二種類がある。

どちらが正しいとか間違っているとかそういうことを俎上に上げたいのではない。

「ファッション」としてのデザインやシルエット、面白さを追求するタイプの独立系デザイナーも実際に何人も知っている。あまり理解できない部分もあるがそれはそれで個人の姿勢としてはアリだと思う。

そういうタイプのデザイナーは、「生地の製造元が云々よりもシルエットとか面白さとか世界観とか、コーディネイトの妙を評価してほしい」という気分が濃厚だったように感じる。

これまで15年くらい独立系デザイナーの展示会を断続的に見ているが、たしかに以前は「○○産地の○○織布で作られた生地です」というアピールをしているデザイナーブランドはそう多くなかった。

また産地の機屋側も「デザイナーとかアパレルブランドはうちらが前に出ることを嫌がる」という既成概念に囚われすぎていた部分もある。たしかにほんの10年ほど前までは、ブランド側は製造業者が表舞台に立つことを非常に嫌ってきた。それをかいくぐって表舞台に立った製造業者はほんの一握りである。

国内製造業者の「引っ込み思案」なところは、デザイナーやアパレルブランドにも責任の一端は間違いなくある。

そういう過去からすると、デザイナー側も産地側も雰囲気が変わりつつあるのだろう。

一方で、穿った見方をすると、小規模な独立系デザイナーブランドは国内産地生地を使用していることを「有効な販促手段」として認識するようになったということだろう。
実際にユニクロが自社のジーンズに福山のデニム生地製造業者の「カイハラ」のタグを付け、グローバルワークがチェック柄シャツのコーナーに「播州織」のPOPを作って貼り付けるご時世である。

こうした動きに対して「安易な販促に使いやがって」と思わないではない。
けれども動機はどうあれ、露出が増えることは産地側にとってもプラスに作用することの方が多いだろう。
もちろん、小ロットを越えた極小ロットの依頼が増えて製造ラインに乗らないというデメリットもあるだろう。
それでもまだプラス面の方が多いのではないかと考えるがいかがだろうか。

それにしても皮肉なものである。
国内繊維製造業が今まさに滅びようとしている時期に、雰囲気が変わりつつある。
いや、滅びようとしているから希少価値が誰の目にも明らかになってきたのかもしれない。
廃館セールを行う百貨店が通常営業の三倍賑わうのと同じ理屈か。
朱鷺やコウノトリが手厚く保護されているようなものか。

けれどもせっかくムードが変わりつつあるのだから、産地側もこれをチャンスととらえてなんとか次の展開に結び付けてもらいたいというのが正直な気持ちである。