南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

「無くなっても誰も困らない」百貨店という業態は生き残れるか?

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 大西洋・前社長が電撃解任され三越伊勢丹HDの新体制が発足したわけだが、一連の動きについては賛否両論さまざまな意見がある。

お家騒動によってイメージ低下を懸念する声も多いが、杉江新社長に期待するという声もあるし、大西・前社長の不備を指摘する声もある。

大西時代には催事が160~200もあったという報道もあり、それが事実だとすると、現場が疲弊するのも理解できる。催事で目先を変えて売り場の鮮度を保ちたかったのだろうが、ネタはそんなに落ちているわけではないから、ネタ作りだけでも現場は疲弊する。

そんな中で一連の動きに対する報道で個人的に賛成できる部分が多いのが、ダイヤモンドオンラインのこの記事である。

三越伊勢丹HD「1億かけて1銭の利益も出ない催事」が象徴する苦境
http://diamond.jp/articles/-/127814

仕入れ構造改革について「利益貢献額は目標値を上回ったが、改革に要したコストを含めればマイナスの可能性がある」と負の側面を挙げ、中小型店の展開については「ビジネスモデルを確立する前に店舗数を拡大してしまった」として見直す方針を強調。特にエムアイプラザについては、新規出店の原則凍結を打ち出すなど、大胆に見直す考えだ。

とあり、それはその通りだ。
とくにエムアイプラザやイセタンサローネ、イセタンハウスなどの中小型店は不振だといわれており、拡大路線を転換することは当然だろう。

業界内部から聞こえてくるのは、東京ミッドタウンに出店した「イセタンサローネ」と大名古屋ビルヂングに出店した「イセタンハウス」の不振の噂だ。

ただでさえ店舗面積の狭い伊勢丹新宿本店のさらにその中小型版は果たして必要なのだろうかと思ってしまう。ジェイアール大阪三越伊勢丹からリニューアルしたルクアイーレ内の伊勢丹コーナーもわずか1年ほどで縮小されてしまった。縮小されたということは業績不振だったと考えるべきである。業績が好調なら拡大もしくは維持されていたはずだからだ。

しかし、この記事では

 ただ、今回、未達に終わった中期経営計画は、杉江社長が当時、経営戦略本部長として大西前社長とともに策定したもの。社長就任時の記者会見でも「計画の立案には私も携わった」と明言している。

 杉江社長は、不採算事業の見直しを後回しにして成長事業を優先していた大西前社長に対し、「自分はコストカットに最優先に取り組むべきだと訴えていたと」主張するが、「なぜ計画策定時ではなく、今になって全否定するのか疑問は残る」と指摘する百貨店関係者は少なくない。

とも指摘しており、これもその通りである。

杉江新社長は大西時代の中期経営計画の策定にもかかわっており、それを今更まったくの他人事のように批評するのはどうかと思う。

もちろん、反対意見を述べたもののトップの意向で却下された可能性もあるが、経営戦略本部長という要職にあったのだから責任は免れない。
現場の平社員や外部の評論家とは立場が異なる。

人件費の削減は大西・前社長も取り組むべき課題だとしていた。

三越と伊勢丹が合併して、本部スタッフをほとんど減らさないままに10年が経過してしまっている。
合併したら本部スタッフは1・2倍くらいに抑えねばならないのに、これを純増ないし微減で10年過ごしてしまったとかつて大西・前社長も反省の弁を述べたことがある。

今回、大西・前社長の根回し不足という要因はあるものの、地方店リストラに現場が反発して電撃解任に至ったと公表されており、杉江新社長のリストラ構想も容易く実行できないのではないかと見られてもおかしくはない。

この記事は

もっとも中計の達成度や業績を見れば、大西路線の成果には確かに疑問符が付く。杉江体制に入り、その問題点の洗い出しがようやく始まったわけだが、かといって明確な成長戦略があるわけでもない。立て直しに残された時間は、決して多くはない。

と結ばれており、これもその通りである。
そもそも従来型百貨店を維持しながらの成長戦略なんていうものは考えられない。

それが可能ならジェイフロントリテイリングは「脱百貨店」を打ち出さなかっただろう。

これは大西・前社長も明言されたことがあるのだが、今の時代、百貨店はなくなっても誰も困らない。
百貨店従業員とその家族、納入業者とその家族は困るだろうがそれくらいである。
今の百貨店はライフラインでもなければ圧倒的なステイタスシンボルでもない。

そういう「なくても困らない物」をどのようにブランド化して、大衆から利用され続ける店にするのか。
百貨店各社にはそういう難問の解決が求められており、何らかの答えを導き出さなければ市場から退場させられてしまう。



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産業間での人材獲得競争に敗れ続けたアパレル業界

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 2年ほど前のことになるが、筆者にインポート業界の基本を教えてくださった方が引退された。
最終的には某ブランドの社長にまで上り詰められたが、親御さんの介護に専念するということで退職された。

退職のお知らせをメールでいただいたきり、その後は音信がない。

その方がまだ現場で部長をなさっていた2006年ごろのことである。
そのとき、「インポート業界には最近、20代の新入社員があまり入ってこなくなった」と自嘲気味におっしゃっていた。
理由を尋ねると

1、バブル崩壊後のファッション市場の冷え込み
2、インポートも含めたファッション業界の待遇の悪さ
3、ITなどの成長企業への注目(当時)

などを挙げられていた。

インポートブランドは景気の良し悪しは別にして高級で華やかなイメージがあるから派手好き・ミーハーな若い人がそれなりに入ってくるのではないかと思っていたが、意外に若い人たちは賢明で堅実だった。(笑)

そうこうしているうちに10年以上が経過した。

国内アパレル企業も新入社員が確保できずに人手不足が顕著になり始めたし、昔だと手軽なアルバイトと見なされてそれなりに人手が集めやすかった販売員も求人難に陥り始めた。

理由は10年前の挙げられていたインポート業界と同じだろう。

さらに2015年ごろから大卒の求人倍率は好転し始めており、少子化の影響もあり、今後はさらに大卒の就職は有利になると考えられる。
そういえば高卒の就職率もかなり高くなってきた。
2006年ごろよりも今の方がはるかに就職にとっては有利となっている。

大卒求人倍率1.78倍、学生の「売り手市場」続く リクルート
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26H98_W7A420C1000000/

こうなると、国内アパレル企業やインポートアパレル企業にはますます人は入らなくなる。
今の状況なら好待遇の大手企業にも入社できる可能性が高まっているのである。

筆者がもし就活生の親なら、間違いなくアパレル業界ではない大手企業への入社を勧める。

以前に大先輩が、「アパレル業界は、業界間競争に負けて人材獲得が困難になった業界である」とおっしゃっていてまさしくその通りだと感じる。

アパレルが業界間競争に負けたのは何も今に始まったことではなく、バブル期から負け続けてきた。

終戦から我が国の経済を立て直す際、最初の輸出品となったのは繊維製品だった。
1ドルシャツが米国に輸出され、貿易摩擦を引き起こした。

「990円ジーンズなんてありえない!」と目を三角にしている自称クリエイターたちはこういう歴史を知らないだけであり、重化学工業が発達していない国は、低価格繊維製品を製造輸出して外貨を稼ぐのである。それが常道である。
我が国だってそれをやって経済復興の礎を築いた。
それを今、他の発展途上国がやっているだけのことである。

その後、我が国は重化学工業へと舵を切り、その後は、金融やITなどの産業に力を入れた。

繊維は国としての重点産業ではなくなり、このころから産業間競争に負けていたというのが大先輩のおっしゃる趣旨である。

アメリカ合衆国だって繊維製造業は脇役となり、金融やIT、機械製品でGDPを拡大し続けている。

昨今注目されているIT系アパレルの成長企業の多くは、業界外から来た若い経営者が動かしている。
産業間の人材獲得競争で勝った業界から来た人なので、アパレル業界たたき上げの人間よりは随分と優秀である場合が多い。

今後、アパレル産業がある程度回復することがあるとするなら、異業種出身者が業界を完全にけん引するようになったときではないかと思う。

70年代~90年代前半の繊維業界黄金期に内部で若い時代を過ごした今の年配層では、成長プランを描くことは決してできないだろう。




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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25


ミーハーでトレンドに流されやすいアパレル経営者

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 日経BP社から、5月29日に発売される「誰がアパレルを殺すのか」を贈呈され読み終えた。

これは昨年秋に日経ビジネス誌で特集された「買いたい服がない」を下敷きにして、詳細にまとめ直した本である。

国内アパレルの不振(米国でもアパレルは不振だが)の原因を過去から遡って追っているのは納得である。
その他の検証や新ビジネスモデルの例示で微妙に疑問を感じるところはあるが、全体的に見れば、100点満点で90点くらいの内容といえる。

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一読して損はない。

今後、何度かにわけて散発的に感想を書きたいと思う。

第1章ではアパレル業界の不振ぶりとその様々な病巣が語られており、業界をよく知る人は「あるある」と肯きながら読んでしまうだろう。

その1章のなかで、「経営もトレンドに流されやすい」とまとめられている。
これはまったくその通りで、アパレル企業各社の経営者は本当にミーハーで「トレンド」に流されやすい。
ひとくくりに年代で分けるのはどうかと思うが、若手経営者よりも古株の経営者の方が流される傾向が強いように感じる。

90年代半ばならSPA(製造小売り)化
90年代後半から2000年にかけては低価格競争
2000年代半ばはラグジュアリー化
2000年代後半ならライフスタイルブランド競争
2015年ごろからはネット通販、ウェブ通販


というのがざっとした業界の「トレンド」である。

ああ、そうそう、なんだかよく分からない「日本製ブーム」なんていうのもあった。

アパレル企業の古株経営者は本当にそのときどきのトレンドに流されやすい。
猫と杓子しかいないのではないかと思う。いっそのこと猫経営者にでもしたほうが人気が出て物販も好調になるのではないかとすら思う。

本文中でも業界関係者の言葉として

「なにかがヒットしていると聞けば、それに飛びつかずにはいられない。洋服だけでなく、経営もトレンドに流されやすい」

が挙げられており、本当にその通りである。

これは恐らく、かつての70年代・80年代・90年代前半のアパレル活況期のビジネスモデルが「ヒット商品の後追い」「先行企業のキャッチアップ」「海外ブランドからのグッドチョイス・グッドコピー」だったからで、70年代・80年代・90年代前半に現場を担当していた人が今、経営者に昇っている。
このため若いころに染みついた体質を変えられないのだと思う。

そもそも彼らは若いころからファッションが好きで、彼らの若いころのファッション好きというと「単なるミーハー」であまり理論的でないというタイプの人が多かった。
三つ子の魂百までという言葉があるように若いころからの性格というのはそう簡単には変わらない。
昨今の逆切れ暴走老人に見られるように、若いころと比べて老化による劣化も起こりうる。

「三つ子の魂百まで」タイプと「老化劣化した」タイプが多く、ミーハーで深く考えないことに拍車がかかっているといえる。

本書ではこの部分の例として昨年末に発表された三陽商会の新経営計画を引き合いに出している。

新社長の岩田功氏が発表した内容で、本書が指摘するまでもなく、新機軸のまったくない方針計画だったといえる。

「ネット通販の強化」
「ショッピングセンターや駅ビルにも販路を広げる」

など、漠然とした方針にとどまっており、方針だけを見ると陳腐すぎて劇的なV字回復はまず見込めない。

もちろん岩田新社長にも三陽商会にもいろいろなしがらみやら事情があったのだと推察するが、出てきた方針だけを見ると、「ふーん」という感じしかない。

三陽商会に限らず、苦戦に陥った旧大手アパレル各社はそろいもそろって「ネット通販の強化」を打ち出しているが、本当に「三つ子の魂百まで」だなと失笑を禁じ得ない。

以前にもこのブログで紹介したように、ネット通販市場は15兆円にまで拡大しており、それだけを見ると売上高の拡大が期待できそうな気がする。
しかし、実態はあくまでも「気がする」だけなのである。

永江一石さんが指摘するように、ネット通販の売り場の数は10年間で数十倍から数百倍にまで拡大している。

例えば、不振といわれる楽天市場でさえ4万店の出店がある。
Yahoo!ショッピングは40万店、ファッションではナンバーワンのZOZOTOWNも1000店以上の出店がある。
そしてAmazonも出店数が増えている。

良く知られた総合通販サイトでさえ、これだけの出店数がある。
さらには今では零細業者ですら、自社のウェブサイトに通販ページを併設している。
これを含めるとネットでの売り場の数は数百倍に増えたことになる。

普通に通販サイトを開設したところで埋没してしまうことは間違いない。

現在の主流だと、ブログやインスタグラム、ツイッター、フェイスブックなどのSNSから通販サイトに誘導するが、三陽商会も含めて旧大手アパレル各社はSNSに極端に弱い。若年層に企業名・ブランド名がほとんど知られていないのはそのためでもある。

SPAブームはファイブフォックスの「コムサ・デ・モード」の躍進がきっかけだった。
ワールドの寺井秀蔵・前社長は嬉々として毎年の決算発表で「SPA比率を今期これだけ高めました」と報告していたことが今では懐かしい。(笑)

低価格ブームはユニクロがきっかけ。
生産数量や生産システムの違いなどまったく気にもしないで、表示価格の低さだけをむやみに競って、その結果、各社とも大爆死した。本当に「考える」ということが苦手な人たちである。

ラグジュアリーブームは2005年ごろの景気回復がきっかけで、2008年のリーマンショックで簡単に死滅した。

洋服が売れなくなったので、雑貨が売れるライフスタイル提案型に注目したが、「単に雑貨を置いただけの店」をライフスタイル提案型ショップだと勘違いしたブランドが続出した。

これの派生形になるが、ロンハーマンのヒットを見て、西海岸型ショップも増えた。
早い話、ロンハーマンの低価格パクリ版である。

その結果、とりあえずサーフボードが飾ってあって看板を外したら区別ができない店が増えた。

そして今が競合の多さも考えずに市場規模の拡大だけで「ネット通販強化」である。

おそらく大半以上の企業が結果を出せずに終わるだろう。

経営陣から変えないと旧型アパレル企業の回復はありえないだろう。


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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25





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