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南充浩 オフィシャルブログ

欧米の最先端トレンドでも不便な物・奇異すぎる物はマス化しない

2021年12月1日 デザイナー 2

ファッショントレンドというものがある。

当方も含めた多くの人が注目するのは、マストレンドである。しかし、マスに広がる前には一部の先端層でトレンドとして受け入れられ、何か月かのタイムラグがあってマスに広がる。

マスにトレンドが広がれば、アパレルブランドの稼ぎ時ということになる。

一方、多くの人は気付いていないと感じるが、先端層だけで終わってしまうトレンドは実は昔から山ほどある。それは国内でもそうだし、海外でもそうだ。

海外の一部の着こなしを切り取って「これが新しい」と報じるのがファッションメディアの常套手段だが、ほとんどは我が国のマス層に広がらずに終わる。

正直なところ、あんなものは話半分に聞いておけば十分だと思っている。

 

国内トレンドでも昔からそういう一部のトレンドは珍しくない。

2000年前後だったと記憶しているが、メンズでカラーパンツが流行っているという時期があった。だいたい赤が人気とされていたが、東京の原宿だったか渋谷だったかでは黄色が人気で、これが全国的なマストレンドに広がるかどうかというのをジーンズメーカーの人と取材で話し合ったことがあった。

まあ、結局は原宿だか渋谷だかの限定トレンドで終わったのだが、この手の話は昔から今まで日常茶飯事にあって、すぐに飛びつくのは愚策だろうと当方は思っている。

海外、特に欧米セレブ系のトレンドとなると、珍妙な内容が多く、普通の生活をしている日本人には到底取り入れられないものも多い。また、機能的に不便だったり、めんどくさいものも多く、その手の海外トレンドは経験上ほぼ100%マスにはならない。

結局のところ、大衆はめんどくさい物、機能的でない物、不便な物はいくら一部のファッションメディアが持ち上げようが使わないのである。もちろん当方も使わない。

 

つい最近、読んだ記事の中で

「こんなもん絶対マストレンドにはならんわ。アホちゃうか」

と思った記事を2本紹介する。

 

パンツの裾に異変あり 靴のひもを巻きつける新技が登場 – WWDJAPAN

 

パンツの裾に異変が生じています。ハーレムパンツやジョッパーズなどの人気がじわじわと浸透する中、パンツの裾に靴ひもやストラップを巻き付けるトリッキーな小技を好む人が増えてきました。よく見かけるのは、足首に巻くサンダルのストラップをパンツの上からぐるぐると巻き付けるスタイル。他にも、靴ひもや共布ベルト、リボンを巻くバリエーションも登場しています。足首を引き締めつつ、動きを加えるアイデアが足元にウィットを添えてくれます。

写真は、ジョガーパンツの上からシューレースを無造作に巻き付けたスタイル。ジャスト裾ラインより少し上で絞ると、裾が遊んでスレンダーな印象に。

 

要するに編み上げサンダルのストラップでズボンの裾を巻き付けるわけである。昔でいうなら、鬼滅の刃の鬼殺隊の隊服のゲートルである。動きやすいようにズボンの裾がピラピラしないように鬼殺隊はゲートルを巻いている。ああいう感じで編み上げサンダルのストラップでズボンの裾を編み上げるのだそうだ。

これがなぜ、マス化しないかというと、普通の生活をしている日本人にとって靴の着脱がめんどくさいことになるからである。

自宅から出る時は一々、サンダルのストラップを裾に巻き付けなくてはならないし、帰宅して脱ぐ時も巻き付けたストラップを外さねばならないのでめんどくさいことこの上ない。

自宅から出かける時と帰宅した際だけならまだしも、靴を脱がねばならない飲食店に入ってしまうと、さらにめんどくさい。自宅のように落ち着いて巻き巻きするわけにもいかない。

いくら、欧米のコレクションで登場しようが、欧米の業界人がやってようが、一部の物好き日本人以外は実生活には不便すぎて取り入れない。そもそも欧米人は靴を脱がないからやりやすいだけのことである。

 

次はこれだ。

ジャケットやシャツは、“前後ろ逆”に着るのがおしゃれの新定義!? | Vogue Japan

 

今、ジャケットやシャツを前後ろ反対に纏うのスタイルが新たなトレンドとなっている。にわかに信じがたいかもしれないが、巷だけではなく、オルセン姉妹が手がけるザ・ロウ(THE ROW)の2022年プレフォールコレクションでも、文字通りファッションの常識をひっくり返したプレゼンテーションが発表された。

 

とのことだが、我が国ではそんな新たなトレンドはいまだに見たことがない。

そもそも、普通の生活をしている人がジャケットを後ろ前に着ていたら、奇異な目で見られるだろうし、普通の仕事には適さない。

画像ではテイラードジャケットを後ろ前に着ているが、後ろ側に回った前ボタンを後ろ手で止めるのはひどく骨が折れそうだし、四十肩・五十肩で肩の可動域が狭まっている中高年女性にはほぼ不可能な腕の動かし方になる。

従って、こんな物が我が国でマストレンドになるはずもない。

例に挙げられている人間もセレブとかファッション変態みたいな人物ばかりなので、欧米でも一般人にはこんな着こなしはマス化しないだろうと思う。欧米のマス層の服装は日本人が空想しているより保守的で画一的である。

 

もちろんこれらの変態向け先端トレンドの中からマス化するものも何分の1かの割合で出現するので、常から見ておく必要はあるだろうが、明らかにマス化しそうにない物はテキトーに流すか、小さく報じる程度で十分だろうと当方は思っている。

この辺りの感覚が、今の大衆消費者層とファッションメディアでは大きく乖離が以前よりも目立っているように感じられ、ファッション雑誌・ファッションメディアの衰退はそれが原因の一つではないかと当方には感じられるがいかがだろうか?

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2021/12/01(水) 1:07 PM

    ファッショントレンドじゃないですが、この前、作業着のカーゴパンツが裂けちゃったので久しぶりにワークマンに買いに行ったら、なんか細身のヤツばかり、全面に押されてるのは、こちらのブログで一般の若者がファッションとして履いていたと書かれていたジーパンもどきの奴なんすよ。明らかに作業員じゃない客もちらほら居るし、昔の殺伐としたワークマンが懐かしく感じましたw
    で、テキトーに買ったら、どうにも細身でお尻がセクシー過ぎるので、次の日にホームセンターの作業服売り場に行ったら、こっちもジーパンもどき作業服押しで、昔ながらのダボダボカーゴパンツは隅の方に追いやられていました。小太りのオッサンにはゆるいカーゴパンツが必須なので、ホント、勝手なことは止めてほしいですw

    • BOCONON より: 2021/12/14(火) 7:03 PM

      デニムのカーゴPをオシャレで穿いている男,最近東京でも見かけるようになりました。と言っても仰言る通り,妙に細い。あるいは太ももまではさほどでもないけれど、膝から下がピッチリした,この人の言う処の “サルエルパンツ風なカーゴパンツ” で,どう見てもいい年したおっさんの穿くものではない。
            ↓
      https://www.minority-ev.jp/f/fj10#con_8-2

      僕は以前書いたように色落ちがひどくなければまた買いたいと思っていたのですが,細いデニムの作業ズボンなんてものにはちょっと手を出す気にはなれない。一般には「黒スキニーはもう流行遅れ」「次はオーバーサイズだッ!」と言われているようですが,作業ズボンがいまだ細いものだらけというのはちょっと不可解な気もする。
      いづれオーバーサイズ/ビッグシルエットの流行もワークマンにまで降りて来るのかも知れませんが,それは一体いつのことになるやら。僕はまだ様子見するよりなさげですね。

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