MENU

南充浩 オフィシャルブログ

老人向けビジネスにあまり可能性を感じない理由

2021年9月24日 トレンド 3

来年は52歳になる。

実は今年の夏はずっと腰痛で苦しんでいる。6月に軽度のぎっくり腰になって、ある程度は7月10日ごろにはおさまったのだが、8月下旬から再びぎっくり腰ほどではないが腰痛が再発して今もまだ続いている。

まあ、はっきりというと体がジジイになって老化してきているのが如実にわかる。

また老眼も始まってきた。近視なので老眼を自覚するのは随分と遅い方だが、今、軽度の老眼だという自覚がある。

 

最近はすごく服が欲しいと思うことがなくなった。

高いブランドを買うかどうかは別にして(買えない)、毎年いろいろと新しいアイテムを試してみたいという欲求が強くあった。

少なくとも2~3年くらい前までは。

しかし、年々それは薄れてきて、今年はかなり薄くなってきた。とはいっても何となく安くなった服はパラパラと買ってしまうのだけれども。

45歳くらいまでのように「今シーズンのあれを試してみたい」と思うようなことはあまりなくなってきた。

 

長い事衣料品の仕事をしていると、機能面でもだいたいどの程度の物かということが見当がつくようになってきたし、似合う服と似合わない服がはっきりとわかるようになってきた。

なので、どんなにブームでも似合わないと思われる物をわざわざ試しに買ってみようとは思わなくなった。それならそのお金で他の物を買った方がマシである。

 

最近、50代・60代向けのブランドの立ち上げが増えている。

 

アダストリア初の60代向けアパレルブランド「Utao:(ウタオ)」が2020年9月16日デビュー!|株式会社アダストリアのプレスリリース (prtimes.jp)

 

マッシュグループから40~60代向けショップ「タグドレス」が誕生(FASHIONSNAP.COM) – Yahoo!ニュース

 

と言う具合である。

 

アダストリアは以前に団塊世代向けブランド「アンダーカレント」を開始したが反響がほとんどなかったのか、すぐに終了してしまったので、再度のチャレンジということになる。

 

2020年現在、日本の女性人口の半分を50代以上が占める状況の中、60代の女性に向けたアパレルブランドはまだ少ないのが現状です。

 

という説明が記事中にあるが、確かに若者に比べると40代~60代は人口が多い。最も人口が多いのは後期高齢者になりつつある団塊世代だが、40代後半は団塊ジュニア世代である。

また50代、60代も人口は多い。

人口=需要数とみなすなら、この市場を取りに行かない手はない。

そこまでは当方も理解する。

また、50代・60代は子育ても終わっている人が多いし、子供も就業している場合が多い。当方の長男と次男も社会人になったが、学費がかからなくなって生活は楽になった。

以前なら我慢していた高いガンプラも買えるようになった。

そう考えると、若い世代よりも50代は経済的に余裕のある人が多いだろうから、市場としては有望であるという分析も理解できる。

 

だが果たして本当にその理論通りに動くのだろうか?

男女の違いはあるが、同世代である50代の当方は甚だ疑問である。

 

若い世代は一度顧客化してもらえれば、30~50年くらい愛用してもらえる可能性がある。20代だと50年くらい、40代でも30年くらい、理論上は顧客化してもらえる可能性がある。

しかし、50代・60代は手持ち時間が残り少ない。

平均寿命は延びているが、健康寿命はそれほど延びていない。もちろん、昔にくらべると元気な60代・70代は増えたが、80代はどうだろうか?昔と同様にヨボヨボの人が多い。

タレントの大村崑さんは今年89歳でお元気だが、それは厳しい筋トレの賜物で、それくらいしないと80代の身体は衰える一方なのである。

これができない80代はだいたいヨレヨレ・ヨボヨボである。そして物理的にも精神的にもこれができない人の方が多いだろう。

 

先日、近所で祖父母と父母の知り合いだった近所の老女から話しかけられた。推定80代前半くらいだろうか。

「長生きできても、体がある程度自由に動くのは80歳まで。それを越えたら動かすことすらしんどくなる」

と言っていて、親戚などを見ていても、これは本当にそうだろうと感じる。80歳を越えると如実に衰えている。

 

そうなると、60代女性も新しいブランドを愛用するのは長くて15年くらいではないか。短ければ10年くらいで身体が言うことをきかなくなる。

自分自身のことを考えても、あと20年したらどれほど身体が弱っているのだろうと恐ろしさを感じる。

 

また、60歳を越えて仕事もリタイアすると、それほど服を欲しいと思わなくなるのではないかとも思う。

結局、コロナ禍で在宅勤務やオンライン授業が増えて、若い世代でも服の需要は落ち込んだ。もちろん、下着や靴下、部屋着などは生活必需品としての需要は減らないが、外出着・オシャレ着の需要は減っている。

となると、仕事もリタイアした60代にオシャレ着がどれほど必要とされるのか推して知るべしではないかと思う。

 

自分自身でも60代・70代になってどれほどの枚数の服を買うのかと思うと、この仕事をリタイアしてしまえば、今ほどは買わないだろうと思う。もう新しい服をレビューする必要もないし、論評する必要もないからである。

 

これまで、洋服に限らずシルバー向けビジネスがあまり大きな市場にならなかったのは、たしかに人口は多いが、需要は人口ほどには多くないということに加えて、利用する期間が短い(近いうちに必ず死んでしまうから)ということが理由だろう。

過去、団塊世代向けブランドがどれもヒットしなかったのも同様の理由である。

平均寿命が120歳くらいまで延びて健康寿命も100歳くらいにまで延びるとまた変わってくるのだろうが、今のままでは、老人向けビジネスというのは大規模な市場にはなりにくいだろう。

需要はゼロではないから、老人向けブランドというのも開発されて当然だとは思うが、各社がこぞって突っ込むほどの大きな市場ではない、と老人になりかけている自分は見ている。

ましてや、メディアが持ち上げるような「主役」になんて到底なり得ないとも思っている。

 

そんなわけで当方は、洋服に限らず老人向けビジネスに対して冷淡なのである。

 

 

 

この記事をSNSでシェア
 comment
  • BOCONON より: 2021/09/24(金) 8:06 PM

    以前書いたかも知れませんが,たとえば4,50歳から上の男が穿いているジーンズというのはたいてい “洗い晒し” というのを通り越してぞうきんみたいになっていますね。「ああいうの,奥さんが何も言わないのかな」と思っていたけど,どうやら言っても聞かないらしい。かたくなに同じジーパン穿き続けてもう20年,なんて調子だそうで。
    その心情は僕には理解がたいけれど,たぶん世の中そういう男の方が多い気がする。僕なども「もうジジイだし,必要以上の服買っても嵩張るから邪魔なだけ(と言いつつ結構買う)」といった程度。
    それゆえシニア層取り込みなんてのも,良くてこんな「小さい百貨店ならではの苦肉の策」程度にしかならない気が僕はしています。
            ↓
    https://toyokeizai.net/articles/-/162412?page=2

  • kimgonwo より: 2021/09/27(月) 10:38 AM

    阿倍野に行って ユニクロであれこれ見ても
    「ただでも いらんわ!」とあげるとも言われていないのに悪態をつき
    ニコルを見ては 「こんなんホストやん!」とさらに悪態をつき
    スーツなんとかの スーツを手に取っても
    「こんな接着芯使ってるの すぐアカンようなるわ!」と悪態をつく
    フープに行って Tomorrow landやSHIPS に入れば
    「いいけど 高いねん!」と自分の薄給を棚に上げて悪態をつく
    ですので 60代のファッションがでれば
    「こんなジジイがきるようなん 誰が着るか!」
    と悪態をつくのは必至です

    • BOCONON より: 2021/09/27(月) 6:23 PM

      新しく買うって事はあんまりしないのに,案外流行は意識してたりする…ジーサンズってそういうもんですよね。
      尻が隠れるくらいの長さの白のボタンダウンシャツ,つまり普通のワイシャツ丈のものを無理やり裾出してジーパンに合わせて着てたりしてねw

BOCONON へ返信する コメントをキャンセル

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ