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南充浩 オフィシャルブログ

大手セレクトこそ実店舗が重要

2021年6月17日 売り場探訪 4

つい数日前にこんな内容の連絡があった。

知り合いのOEM業者からである。

「大手セレクトショップ各社が厳しい。発注を絞っていたり期中対応が増えていたりする。ECが好調と言われる『あの』大手セレクトも仕入れは絞っているのでトータルでは厳しいようだ」

との内容である。

実際の連絡には全て社名が書かれていたのだが、あえて社名は伏せておく。

 

大手セレクト各社が厳しい理由の最大のものは、今春の長期間の営業休止だろう。

前回も書いたがこれによって春物の処分期間と、夏物の初動販売の機会を完全に失ってしまった。昨春とまったく同じで、ユニクロ、しまむら、ジーユーの3強は、東京・大阪の都心店だけではなく、地方に郊外型路面店を持っている。特にしまむらは都心店はほとんど無きに等しく、地方の郊外型路面店ばかりである。

そのため、今回の非常事態宣言でもほとんど影響を受けないだろう。

ユニクロとジーユーは郊外型路面店や非常事態宣言のない地域での出店も多いから、被害は軽微だろう。

しかし、大手セレクトショップ各社は都心店や都心ターミナル店に偏っている。当然、今回の非常事態宣言による被害は大きく、昨年春とまったく同じ構図だといえる。

当然、店頭は売れないから発注も絞らざるを得ないということになる。

 

最近はユニクロのデザイナーコラボ、ジーユーのデザイナーコラボと値下げ品でほとんど満足してしまっていて、わざわざ大手セレクトでは服を買いたいと思わない当方だが、大手セレクトショップとか百貨店内のテナントとかそういう店の雰囲気は嫌いではない。たまには覗いてみるくらいには好きである。

ただ、あの雰囲気と、下がったとはいえユニクロよりは高い商品の値段を見ていると、大手セレクトのような業態は大都市都心だからこそ成り立つ業態だと強く感じる。

田舎のオッサンやオバハンが顧客ではああいう雰囲気の店、品揃え、価格では絶対に売れない。

良くも悪くも都会人相手だから成り立つ。

だから大手セレクト各社が、コロナや今後のパンデミックに備えて地方路面店を増やすというのは、机上の空論に過ぎず、実現不可能なのだろうと思う。

業界人の好むようなテイストは田舎では到底受け入れられない。

 

ECがあるじゃないか

 

という声が衣料品業界や浅いメディアやテック業界から聞こえてきそうだが、なんどもこのブログで書いているようにネット通販では実店舗の苦戦の穴埋めを完全にすることはできないのである。いくらか補完できる程度が実情である。

だからECが好調な大手セレクトもトータルでは売れ行きが鈍いから今期は仕入れを絞っているという先ほどの話になる。

 

自分もネット通販で買うようになったから感じるのだが、ジーユーやアダストリアあたりの商品ならネットで買いやすい。値段的にも数百円~5000円くらいまでだから仮に失敗してもちょっとは惜しいがすごく惜しくはない。もちろん収入の多寡にもよるだろうが、当方レベルの低い収入では、大手セレクトショップの商品では失敗した時に高すぎてすごく惜しいのである。この服1枚で勝男に何回飲みに行けたのか、ガンダムのプラモデルが何個買えたのかと思うとすごく惜しくてならない。

また、「物」だけで買うわけではなく、大手セレクトの場合、実店舗の内装や雰囲気、空間などが相まって購買意欲に結び付く。ジーユーやアダストリアの値下げ品は別にそういう物が後押ししてくれなくても「物」と「値段」だけで買う気になる。もちろん、アダストリアのネット通販で買ってみたけど思ったより生地が薄かったとか厚かったとか着用してみたら似合ってなかったなんていうことも珍しくないが、値下がりした値段が値段なのでそこまで惜しくなく、知り合いにプレゼントしたりする。

 

しかし、プロレタリアートな当方からすると、大手セレクトショップのあの値段の商品を試着せずに画像だけで買うことは、非常な勇気が要る。それこそ清水の舞台から飛び降りる覚悟が求められる。

アパレル業界人のみなさんは「服には金をつぎ込んでも惜しくない」と思っている人が多いのかもしれないが、そんな考え方をしている人は世の中では少数派である。

 

結局のところ、当方は大手セレクトのような業態はいかに実店舗が大事かということではないかと思う。

実店舗があるからユニクロより高い商品がそれなりの数量売れるのである。

大手セレクトの中では比較的価格が安いナノユニバースの通販サイトも時々は見るが、画像だけで買おうとは全く思わない。やっぱり店頭で一度試着してからにしたいと思う。

ナノユニバースの通販サイトで買おうと思うときは、よほど値下がりしている物だけである。値引き後2000円くらいに値下がりしている商品なら「試しに買ってみてもいいかな」と画面を見ながら思うが、何十%値引きされてようが、5000円を越える商品を画像だけでは買おうとは思わない。

 

大手セレクトのEC売上比率は最大に伸びても5割だろうと思うし、もしかしたら、コロナ禍の現在がピークだという可能性も否定できないのではないかとすら思う。

 

60%オフのナノユニバースのメンズパンツをどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2021/06/18(金) 1:21 PM

    某大手セレクトショップのバイヤー氏とかがYouTubeで「今年買ったもの」みたいな話してる動画見てたら、『冷蔵庫とかパソコンに10万20万円出すのは悩むけど、服は悩まず買っちゃうんだよねぇ』みたいな会話してて、服好きな業界人の価値観は一般人とは違うんだなぁ、と思いましたw
    ちなみに、この前N社のジャケTの半袖のスーピマコットンバージョンが値下がりしてたので、また通販で買っちゃいましたが画像では分からないペラペラの下着っぽい薄さで、アラフィフのオッサンがティクビポッチりで着るのは憚られる感じで失敗しましたw
    あ、あと私に220万払えと損害賠償請求してた某経営コンサルタントとは一銭も払わずに和解できました~ヽ(´ー`)ノ

    • BOCONON より: 2021/06/19(土) 8:07 PM

      洋服の販売員というのはもともと服好きなのはもちろんの事,社販や自腹購入を課せられるのが当たり前だから,感覚が麻痺してるんじゃないですかね。給料の大部分を服につぎ込んでいても当然,みたいな。大手セレクトショップに勤めているような男子は昔はモテたらしいし(笑)。
      とは言え,今やお若い人たちは服好きでもセレクトショップや百貨店の服なんて買わないらしいから,入社もしたがらないような気もする。僕にはその辺は詳らかでないですが。

      某経営コンサルタント氏というのはその世界では結構有名な御仁のようですが,このコロナ禍で業績も落ちているのでしょうからひつこく裁判なんてやっている場合じゃないですわな。僕のかかりつけの医者も「本当はオリンピックどころじゃないんだけどね…」なんて言っているようなご時世ではねぇ。

      • とおりすがりのオッサン より: 2021/06/20(日) 1:16 PM

        >BOCONONさん
        某コンサルタント氏の会社は、去年度は売上1割減になっただけで営業赤字に転落して、今年度も0.6%しか回復してないそうなので助成金とか無ければ実質赤字になってたようです。
        民事裁判は3割くらいは和解で判決出ないらしいですが、恐らく裁判官の「心証開示」で「原告の主張は認められないから和解したらどう?」って感じのことが代理人弁護士に提示されたんじゃないかと妄想してます。ま、判決出ても控訴されたら、また裁判続いて面倒なので和解に応じましたw

  • BOCONON より: 2021/06/19(土) 8:22 PM

    僕は別に “意識高い” 系の服好きではないけれど,大手セレクトショップや百貨店の服を通販で買うような客ばかりになったらもうお仕舞いな気がする。だって電車に乗っていて見回しても(見て分かる明らかな業界人以外で)スーツのサイズがちゃんと選べている男なんてほとんどいないですからね。いちおう試着した上で買ったであろう人が大部分でもそんなものだもの,スーツ,テイラードジャケットに関する全部を通販で買ってお洒落しようなんて絶対無理(と断言しても良い)。ネクタイだって靴だって自分のスーツやシャツに合わせてみなきゃ選びようがない。
    まぁセレクトショップのカジュアルは品質悪い割に高いから,そんなものは(もし買いたいなら)通販でたくさんだろ,とは言えますけどね。

    まあ世の中こういう本当すぎる事を言うと嫌われるのは分かっているのですが,誰も言わないのはあんまりなので敢えて書いてみた次第。

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