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南充浩 オフィシャルブログ

エドウインの生き残り策は規模の縮小しかないのではないか

2021年6月4日 ジーンズ 3

ジーンズカジュアル系のアパレルにはエドウインのOBが多い。

独立して自分のブランドを立ち上げた人、別のアパレルに入社した人、OEM会社を設立した人、などなどさまざまである。

ちなみにファーストリテイリングの「ユニクロ」のジーンズ担当者もエドウインのOBが多い。

 

そんなわけで多数いるエドウインのOBの中でも何人かはちょくちょくと連絡をくださる。そんなOB何人かと最近の4工場閉鎖の報道をきっかけに話をすることがあった。

 

知っている範囲でいうと、エドウインの販路は、ジーンズカジュアルチェーン店への卸売りが最も多い。ついで量販店への卸売りだろう。百貨店のジーンズ平場への消化仕入れもあるが、例えば、ビッグジョンが百貨店平場への消化仕入れをやめてしまったことから考えてみても、この販路にメーカーとしてはあまり旨味がないということがわかる。

広告と考えるのなら一定の効果はあるのだろうが。

直営店が約60あり、半数がアウトレットとなっている。正価直営店は正直なところそれほど売れているようには見えない。一方、アウトレットはそれなりに好調だったと聞く。

工場閉鎖の報道の際、エドウインは売上高220億円だったと明かされている。この数字が正しいと仮定すると、今の販売体制で220億円規模を維持するのは、至難の業だと言わざるを得ない。

 

メイン販路であるジーンズカジュアルチェーン店はかなり疲弊しており、コロナ禍でそれが一層加速している感がある。

各地方には有力店があるが、こちらもオサダの経営破綻を例に出すまでもなく、疲弊しており「実は〇〇は相当に経営がヤバイ」という噂も飛び交っている。

全国チェーンでいうなら、業界1位はライトオン、2位はマックハウス、3位はジーンズメイトということになるが、2位と3位の間は大きく離されている。

個人的にはジーンズメイトは、東京を中心とした大都市チェーン店というのが正確な表現であり、とても全国チェーンとは呼べないと思っている。

1位のライトオン、2位のマックハウスとも苦戦が続いており、コロナ禍以前から年々店舗数を減少させ続けてきた。もちろんジーンズメイトも同様だ。

ここを最大の販路としているからには、コロナ禍を度外視してもエドウインが苦戦するのは当然の結果だといえる。

 

もちろん、エドウインとてそれを見越してのアウトレットを除いた直営店約30店舗の出店だったのだろうと思うが、220億円を支えるには店舗数が少なすぎたし、先述したように、入店者の少なさを見ると、到底売れているとも思えない。

これはエドウインに限らず、リーバイスストアも同様である。

リーバイスは戦略を切り替えてリーバイスストアの店舗数拡大を続けているが、こちらも入店者数から見て、それほど好調に売れているとは思えない。

 

その理由としては、

 

1、メーカーにはショップを運営するノウハウと人材が欠けている場合が多い

2、ジーンズ(それに類するカジュアルボトムス)という商品がメインの店は売れづらい

 

という2点が考えられるのではないかと思う。

1を解決するには、外部から優秀な人を招聘するしかない。しかし、これはこれでなかなか成功の確率は低く、「優秀だと言われる人」を招聘したものの、この人が「名ばかり優秀」であることはアパレル・繊維業界では珍しくない。成功事例は全く聞かないのに、次々と仕事だけは獲得できるという「名ばかり優秀人」がアパレル・繊維業界の著名人の中には数多くいる。

また、真に優秀な人だったとしても、現在のメンバーとの相性がすこぶる悪い場合も珍しくない。この辺りは何十年も前から変わらない業界あるあるである。

 

2についてだが、ジーンズのダウントレンドとか機能性ボトムスへの需要の高まりとか、そういう環境要因を除いても、ボトムス専門店はなかなか成立しにくい。

理由としては、多くの消費者はトップスの方を多く買う傾向が強いからではないか。

例えば、Tシャツやポロシャツをまとめ買いすることはあっても、ズボンをまとめ買いする人はあまりいない。いたとしてもせいぜい3本くらいが限界だろう。

またトップスと同じ数量のボトムスを所有している人も多くはないだろう。トップスの所有数量の方が多いという人が多数派ではないかと思う。

 

かつて、90年代後半にドゥニームがボトムスのみの直営店を京都にオープンさせたが、あえなく閉店しているし、ハニーズの「パンツワールド」もいつの間にか消えてしまっている。

ボトムス専門店の成功例はバリュープランニングの「ビースリー」くらいではないかと思うが、最近は勢いが無くなっているし、勢いがピークだった頃でも1店舗あたりの年間売上高はせいぜい高くても平均1億円弱だったので、パンツという商品がいかに数量を売りにくいのかがわかるのではないかと思う。

 

もちろんエドウイン、リーバイスともにカジュアルボトムスのみの商品構成ではない。ジージャン、デニムシャツ、ネルシャツのほか、Tシャツ、スエットなどが昔から展開されている。

しかし、ジーンズに比べてそれらは注目度・認知度が低いため、そこまでの需要はない。

 

低価格路線に舵を切れという意見もあるが、ビッグジョンが3900円ゾーンのGLハートを廃止していることから考えても今更そこへの参入は厳しい。さらに1990円のジーユー、2990~3990円のユニクロに勝てる見込みは全くない。

 

となると、エドウインの生き残り策としては、20~50億円規模に縮小し、7000~1万円台の商品に集中し、直営店・ネット通販をじっくり強化・育成することではないかと思う。

当方に連絡をくれるエドウインOBもだいたいが同意見である。

 

まあ、しかし、そんな政策を果たして天下の伊藤忠商事様がお許しになるのかどうかは極めて怪しいのだけども(笑)。

 

 

そんなエドウインのジージャンをどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2021/06/04(金) 1:17 PM

    イタリアなんかだとパンツ専業のメーカー(ブランド)があったりしますね。
    インコテックスとかPT TORINOとか。まぁ、一本2~3万の高額パンツで一般層に広く売れるものじゃないですがw
    でも、日本のオサレな紳士には売れてるっぽいっすね。とはいえ、売上100億とかには行くはずもないでしょうけど。

  • 通りすがりのオッサン より: 2021/06/09(水) 3:10 PM

    1980年代に小郡商事と仲良くしていればSPAの波に乗れたかもしれない。もう遅いけど。

  • ヒレッジ より: 2021/09/02(木) 6:33 AM

    エドウィンは、アルファインダストリーズのライセンス販売権所有と日本独自の商品企画ができるので、もっとそちらに力をいれたら、ジーンズ屋から脱却できるのではないでしょうか。
    アルファのMA1やN3BやM65やM51モッズパーカーなどは、冬の定番で、リーバイス501のように世界的に知られています。古着屋でも割と値引き率低い
    (新品15000円くらいの商品が古着屋で5000円以上しますが、売れている。セレショの3万円くらいのコートとだと古着は3980円程度ですから。)ので
    重要はあると思います。三陽がバーバリーを日本独自企画生産して育てて儲けたり、ゴールドウィンが低迷していたノースフェイスを日本独自規格と独自生産して世界的なブランドに
    復活されせて現在も好調なように、エドウィンもMA1 N3B M65 M51などの定番商品をノースフェイスのように最先端素材などを素材メーカーと共同開発して導入して高機能性を追求していけば
    カナダグースのような高価格帯の高性能防寒着として、単価を上げて売ることもできるのではないかと感じます。ゴアテックス採用したN3Bとか。ポーラテックのような高性能化繊を導入した
    MA1とか。今登山系アウトドアメーカーは、透湿性能が高く防寒性が高くかつ軽量な中綿化繊素材の開発にやっきになっています。ダウンは汗や雨に濡れると防寒性能が極端に落ちるからです。
    この数年、ミリタリー服は世界的に再ブームがきています。そのため、アルファのミリタリー服は人気があります。さらに高性能素材を導入して、登山服としても使えるようにすれば、アウトドアと登山が今ブームなので、客層を増やせる気がします。ミステリーランチのようなミイタリーリュックメーカーが今は登山リュックとしても注目され一部登山家の間で導入されつつあります。
    ノースフェイスはゴアテックスを採用したマウンテンダウンジャケット6万円相当品が毎年抽選販売になり、争奪戦になり、入手困難になります。アルファもそういう方向性を目指して育てていけば、もっとマーケットが広がる気がしますね。

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