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南充浩 オフィシャルブログ

エドウインの強みと生き残り策を頼まれもしないのに勝手に考えてみた

2021年6月1日 ジーンズ 4

お恥ずかしいことながら自分はこれまで、スモールビジネスしか体験していないので、衣料品の大規模ビジネスということに対して想像力が追い付かない部分がある。

学生時代にはDCブーム、青山・はるやまブーム(当時、関西にAOKIはほとんどなかった)というのを体感したが、あの時のような洋服への購買意欲は国内では訪れないと思っている。

厳密にいうならDCブームはある程度の高額品、青山・はるやまブームは低価格品ブームの走りなので、厳密にいうと動機は少し異なる。

DCブームと同じ価格帯ならビンテージジーンズブーム、アムラーブームあたりになるだろうか。それでも2005年以降はそういう価格帯での大ブームは起きにくくなった。

 

現在のカジュアル衣料品消費においては、ユニクロ・ジーユー・しまむら・無印良品などの低価格ブランドの寡占化が進み、従来の大衆向けだった大型スーパーのカジュアル平場やジーンズチェーン店が苦戦し続けている。当然、そこへ卸売りしていたカジュアル専業メーカー各社も何らかの手を打たなければ苦戦を強いられる。

エドウインを始めとするかつてのジーンズ専業メーカー各社の凋落はその一つの表れだといえる。

 

エドウインが国内4工場の閉鎖を発表し、残るは5工場となった。

原因は、コロナ禍による消費低迷がスピードを速めた感があるとはいえ、主力であるジーンズの販売不振だった。

前回のブログでも触れたがエドウインは卸売りがメインなので、卸先の小売店の苦戦の影響をダイレクトに受けてしまう。主な卸先はライトオンやマックハウス、ジーンズメイトに代表されるジーンズチェーン店だが、コロナ禍以前から販売が減少し続けてきた。また、大手スーパーのカジュアル平場もコロナ禍以前から苦戦が続いている。百貨店ジーンズ平場もプレミアムジーンズブーム以降はパっとしないし、そもそも、販路全体で見た場合それほど売上比が高いわけではない。

 

こうなると、直営店や直営ネット通販の強化しか活路は無いが、メーカーが直販を開始してもノウハウが異なるため、なかなか成功例が少ない。特にかつてのジーンズ専業メーカーでアウトレット店以外に成功している例は皆無に等しい。

短兵急には成功しにくい。

 

エドウインの強みとは何だったのかと思い返してみると、最大手メーカーとしての販促力とか売り場を飾るPOPや看板などの積極活用とかそういうこともあるが、商品自体で考えてみると、8000円前後の国産ジーンズで、めんどくさいので一括りにして「品質」もそこそこに高かった。

ビンテージジーンズブーム以降、高額ジーンズが多数登場したが、完全に同等でないことはいうまでもないが、8000円とか1万円弱くらいでそれっぽく見えるという「コスパの高さ」にあったと思っている。

 

ただ、現在、このゾーンの需要ではエドウインの200億円の売上高を支えきれなくなってきたというのは事実だが、需要が全くないわけではない。

例えば、アダストリア傘下ブランドなんかは8000円内外のジーンズを販売している。SPA型なので販売不振となったら半額以下に値引きして叩き売っているが。(笑)

最近、あちこちで見かけるユニバーサルオーバーオールなんかもカジュアルパンツは8000~1万円弱くらいである。

そう考えると、この価格帯の需要は総数では減少しつつ、さらに分散化しているように感じる。

 

このゾーンに特化して企業やブランドとしては成り立つとは思うが、220億円規模の売上高を維持することは難しいだろうというのが個人的な意見である。

ユニバーサルオーバーオールもあれだけあちこちで見かける割には売り上げ規模は大きくない。せいぜい20億~30億円規模である。

エドウインも数十億円規模まで売上高を縮小させれば良いのではないかと思うが、伊藤忠商事という商社がそういう経営方針を許さないのだろうと見ている。もっとも、エドウインの中の人も縮小は避けたいと思っているのではないかと思う。

 

さらに悪いことには、メンズカジュアルでジーンズというアイテムはマストレンドから外れてしまっているというタイミングでもある。レディースカジュアルでも微妙な存在である。

個人的なことでいえば、2017年くらいからめっきりジーンズを穿く回数が減った。特に雨の日と夏場はほとんどジーンズを穿かなくなった。

一つにはスキニージーンズという大ブームが終わったこともある。

またワイドパンツやワイドテイパードといったゆったりシルエットのパンツがマス化したこともある。

 

雨の日にジーンズを穿かなくなった理由は、濡れて重くなる上になかなか乾かないからだ。雨の日は合繊100%か合繊割合高めのパンツを穿くようにしている。濡れても重くならないし乾く時間が短いからである。

また夏場は暑くてジーンズなんて穿いていられない。昔はジーンズくらいしかなかったから穿いていたが、合繊の薄手パンツを一度体感してしまうとその快適さから、今更ジーンズには戻れない。

春・秋・冬にはジーンズを穿くことも多いし、エドウインのジーンズも変わらずに着用しているが、それ以外のストレッチパンツや厚手生地のワイドパンツを穿く回数も増えて、相対的に着用頻度は下がっている。

思い出したかのように「今春夏はデニムトレンド」とか「秋冬はデニムが来る」なんていう報道がなされることがあるが、それでもこれだけ多種多様なカジュアルパンツが増えてしまうと、90年代とか2000年代半ばごろのように「カジュアルパンツはほとんどがジーンズ」というような状況にはならないだろう。

 

そう考えるとエドウインは企業規模を縮小する方が望ましいのではないかと思う。

 

一方、海外生産に大幅にシフトして低価格ゾーンを狙えという意見もあるが、ユニクロ・ジーユーがこれだけ猛威を振るっていて、その価格帯でエドウインに勝ち目があるとは到底思えない。

1990~3990円で勝負したいなら、莫大な生産数量が必要になるし、相応の販路開拓も必要になる。これを本格的にやるならエドウインは確実に経営破綻してしまうことになるだろう。

 

1万円台半ば以上の高額品に特化するという方策もある。これをやっているのが今のビッグジョンである。ビッグジョンや工場サイドからの話を総合すると、利益率は好転して黒字化しているとのことである。しかし、売上高の規模はピーク時の15分の1くらいにまで縮小してしまっている。これをやれば間違いなくエドウインも同様の規模に縮小せざるを得ないだろう。

 

ブランドステイタスが高いわけでもなく、ファッション性が高いわけでもなく、低価格競争力があるわけでもないエドウインは、売り上げ規模を数十億円規模に縮小して、7000円台~2万円弱くらいまでの国産商品を強化しつつ、直販力を強化するのが最も現実的な生き残り策ではないかと思うがどうだろうか。そのためには人材確保も含めてハードルが低くないことは言うまでもないが、当方レベルではその方策しか思いつかない。

あと、個人的には、伊藤忠はそのうちにエドウインをどこかの企業へ売却すると予想している。

 

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 comment
  • 世の中変わった より: 2021/06/02(水) 9:51 AM

    簡単なコメントですみません。

    以前のナショナルブランドの8000円くらいのジーンズが需要低下は、
    ①機能性(軽量、通気性、撥水性、ストレッチ性)快適なのが一番!
    ②所得が低くなっている 8000円は買いたくても買えない

    実感してます。。

  • 通りすがり より: 2021/06/10(木) 12:33 PM

    外から見ていて、エドウイン低迷の要因は仰る通りで、どこかのファンドに売られるのでしょう。伊藤忠は儲からない会社には興味がないので。あとは親会社内での熾烈な派閥抗争のあおりで弱体化してしまった側面もあると思います。

  • ビギナー より: 2021/06/14(月) 5:21 PM

    素朴な疑問だが、ジーンズが売れなくなったのなら、チノパンを作って売ろうとは考えなかったのか?
    チノパンの生地はデニムほどには分厚くはない。素人からすると裁断も縫製もジーンズ工場でできそうな気がするのだけど、無理なのか?

  • 小泉 より: 2021/06/23(水) 5:18 PM

    南さん、エドウインが好調のころには絶賛していましたよね。大塚さんが社長のころ、日暮里まで会いに来て、エドウインのビジネスモデルを絶賛されていたと思いますが。(笑)

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