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南充浩 オフィシャルブログ

EC、DX、D2Cという言葉は一般的に通じにくい

2021年3月10日 ネット通販 2

アパレルが世間一般から分かりにくいと思われている理由の一つとしてカタカナ語・アルファベット語の多さがある。

洋服は「洋」服というくらいなので、西洋の服だから基本的にはシルエットとかデザインとかプリーツとか、そういう向こうの言葉を音訳したカタカナ語が増えるのは当然である。

明治から戦前までは、カタカナ語も上手く日本語に訳して使用してきたが、戦後はGHQの占領政策もあってか、それへの反動として日本語訳せずにカタカナ語を使うことが良しとされた風潮も強まった。

明治から戦前までは、economyは経済、socialは社会、companyは会社、という風にほぼ造語で日本語訳されてきた。これが我々が英語を学ばず母国語のままで高等教育を受けられる理由となった。デメリットとしては必要がないから英語を覚えられなくなったという点がある。何事にもメリットとデメリットがあるということである。

 

で、時代が進んで現在になると、すでにカタカナにすらせず、アルファベット何文字かの名称を「さも常識か」のようにして使うことが増えている。

しかし、そのアルファベット何文字かの呼び名は世間的にはあまり通用していないのではないかと思っている。

「業界の常識は世間の非常識」というやつだ。

 

例えばD2Cなんて業界人が思うほど世間一般には浸透していない言葉だろう。だから、ブランド側が「D2Cガー」と力説したところで一部のイシキタカイ系(自称)消費者しか飛びつかない。必然的にD2Cブランドはマスには売れにくいということになる。

多分、一般消費者からすればスターウォーズに出てきたロボットであるR2D2の仲間くらいにしか思わないだろう。

DXにしてもそうだ。

未だに「デラックス」としか思わない。

たしかにデジタルトランスフォーメーションとカタカナで書けば膨大な文字数が必要になるし発音するにしても長ったらしくてめんどくさい。

digitaltransformationとアルファベットで書いても膨大な文字数が必要になる。DXと略して書きたくなる気持ちもわかる。あちらの国の人もめんどくさくて略したんだろう。大阪人だって天神橋筋六丁目は天六と略したい。

だが、DXという表記は、多くの日本人にとって長らく「デラックス」の略式表記だった。

DX超合金シリーズの玩具で育った我々世代は、DXと書かれれば即座にデラックスを思い浮かべる。恐らくは、イキった業界人かイキったコンサル、イキったネット業界人が思っているほどDXという言葉は一般的に理解されていない。

そういえば、WEBもアルファベット3文字表記しないと恥ずかしいのだそうだ。別にカタカナでウェブでもええやんけと思うが、イキった業界人にそういわれたことを思い出す。しかし、いちいち変換するのはめんどくさいので当方はウェブと打つ。別に笑われることは慣れているし、イキった業界人と仕事をする案件もないし、第一、イキった業界人から依頼を受けることもない。

 

さて、以前から当方が最も違和感を感じていたのがECという表記である。

ハッキリというが、一般人には「ネット通販」と言った方がはるかに通じやすいだろうと思う。恐らくは業界の年配者にもネット通販と言った方が分かりやすいだろうと思う。

それを端的に漫画形式でまとめてくれているのがこのブログである。

 

「EC」という言葉、通じる? – アパレル販売員・高山のブログ (hatenablog.com)

 

現場のアパレル販売員をリアルに描いていて、アパレル本部病に冒されたエライさんは全員が読むべきだと思う。多分、ブログ主とは政治的・経済的思想が当方とは合わないので、一読者としての立場以上に仲良くなることは永遠にないと思うが、ブログは読み続ける価値がある。

で、ここでは身の周りアンケートだがだいたい半数の人はECという意味がわからなかったとのことで、これが一般人のリアルな反応だろうと思っている。

当方は原稿を書く際、できるだけ「ネット通販」と書くようにしているが、編集部によってECに修正されてしまう場合がある。(笑)

 

当方がECという言葉をあまり使いたくないのは、似たようなアルファベット語が見受けられるからである。例えば、英会話のECCとか。ヨーロッパ連合(EU)の前身はECと表記されていて、今年51歳になる当方の前半生の何十年間かはECといえばヨーロッパ共同体のことだった。

新聞でも「EC」という表記に出くわせばヨーロッパ共同体のことだった。

 

今、言われているECとは何かというとEコマースのことである。Eは多分「電子云々」のことだろうと想像がつきやすいが、Cがコマースだと知らずに使っている人は想像以上に多いのではないかと思う。

電子商取引というのが日本語訳だそうで、インターネット上の情報通信によって商品やサービスを売買したり分配したりすることを指すのだそうで、厳密に言えば「ネット通販」はその一部ということになるだろう。

だから、イキった業者は頑なに「ネット通販」ではなく「EC」と言いたいのだろうと思う。

だが、世間一般的に、またアパレル業界人が使用したり従事したりしている電子商取引とは「ネット通販」のことである。

そして、今、売る方も買う方も頭の中に思い浮かべるのはネット通販である。

となると、ECCと間違いやすいECを乱発するよりもネット通販という方が誤解が生じる可能性が少ないだろうと自分は思う。

 

カタカナ語、アルファベット語を多用した方がカッコいいと思っている人が一定数存在する。コンサル、ウェブ業界人、広告代理店、小池百合子なんかがそうである。

成長をわざわざ「グロース」と言ったり、規模拡大するを「スケールする」と言ったりしている。しかし、言われた方はまったく意味がわからない。ズロースかと思うし、鱗のことかと思ってしまう。アウフヘーベン(止揚という意味)なんて日常会話で使わねえよ。

 

まあ、そんな感じで、ECやDXやD2Cに限らず、広めたいなら一般人にもわかりやすい表記や言い方を考えた方が得策である。

 

 

DX超合金 バトロイドバルキリー ロイ・フォッカー専用機をどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2021/03/10(水) 3:58 PM

    やっぱ、バルキリーはロイ・フォッカー機が一番カッコイイなぁw
    ってか、「ネット通販」を「EC」に書き換えるとかヤバいっすね。昔、自動車評論家の福野礼一郎氏は、カーグラフィック誌に寄稿すると「タイヤタイヤタイヤタイヤと書いても、タイアタイアタイアタイアと直される」と言ってたの思い出しました。日本語ではタイヤなんですが、発音だとタイアだからカーグラフィック誌はタイアだと主張してたらしいですw
    別分野の雑誌ライター氏は逆に「シルヴァーティップと書くと編集部にシルバーチップ」に直されると憤慨してました。なんでも雑誌内の表記は統一するべきだという編集部の主張のようでした。

    「IT」が流行った時は新聞とかには説明で「IT:情報技術うんぬん」ってのはあってもInformation Technologyの略だとは書いてなかった記憶があります。ECも何の略か知らずに使ってる意識高い系の人が結構いそうっすよね。今は、調べればすぐに何の略か分かりますが、調べないで使ってる人も多そうですw

  • sakeparadise より: 2021/03/11(木) 12:23 AM

    私がアパレルに入社した35年前は、EC=ヨーロピアンカジュアル、AC=アメリカンカジュアルだった。現在では死語だろう。重装(アウター、スーツ類)、ヨットパーカーも現在は使われてない。
    一方 古い言葉遣いは健在だ。
    用尺(1着あたりに掛かる生地のm数なのになぜか尺 放送業界でも尺はなぜか使用)
    着分(サンプル用の生地→1着分の略)
    目付(ニットの1着に掛かる糸が何gかor生地の単位面積あたりの重さ)
    生機(染色・精練前の生地)
    番手・正則斜文・葛城・機屋・比翼・どんでん・見返し・成型編み
    新しい横文字が多用されている一方で生産部門では横文字にならない用語が多いのはなぜだろう?
    水着がswim wear にならないのは泳ぐ目的で購入する人が少ないからか?

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