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南充浩 オフィシャルブログ

巨大低価格ブランドと個性派零細ブランドの二極化が進みそう

2021年3月8日 トレンド 1

コロナによる消費低迷が続き、飲食業・アパレル業は一層厳しさを増している。

アパレルに関していえば、2019年までは国内アパレル小売市場は9兆2000億円くらいで推移してきており、市場規模は変わらないが、供給量は減らないから、低価格化しやすい状況にあった。

そのため過当競争がずっと続いているだけでなく、退場者も出る代わりにそれに倍する新規参入者も毎年あり、過当競争は緩和される要因がない。

既存のやり方では業界全体が好転することはないから、外国の事例が紹介されるのだが、当方はここに疑問を感じている。

外国の事例を紹介するのは良いとして、欧米の事例だとほぼZARAしかない。あとたまにH&M、プライマーク、などが含まれる。いわゆる、多国籍の超巨大低価格ブランド群である。

ここにLVMHやケリングなどが抱えるラグジュアリーブランド群の紹介が加わる。

これはこれで有意義な情報ではあるが、じゃあ、国内のアパレル業者が全面的に参考にしやすいかというと全く違う。

まず、企業規模が違いすぎる。

売上高3兆円のインディテックス社を見習えと言ったところで、まあ多少のエッセンスは導入できても、投資に使用できる資金が桁違いで全く役に立たない。

規模的にZARAを見習えるのは、世界的に見てもH&MとファーストリテイリングとGAPくらいだろう。

 

今回は、まったく外国へも行かず、英語もできず、外国との仕事をする気もなく、英語も全く理解できない超ドメスティックな初老の独断と偏見と素朴な疑問である。

欧米の事例は圧倒的にZARAである。あとはH&M、プライマーク、エイソスあたりがパラパラ。いずれも多国籍巨大企業である。

これをワールドやオンワード樫山、ぐっと売上高が下がってエドウインやヤマトインターナショナルに「参考にせよ」といくら声高に叫んだところで、売り上げ規模が違いすぎ、ほとんど実行できない事例ばかりである。

コンサルタントという職業の人はマウントが取れて良いのかもしれないが、当方は、欧米ではほぼ国内のみで100億円~2000億円くらいを売り上げているような企業やブランドはないのか?という疑問を常に持っている。

その事例こそがファーストリテイリングを除く国内アパレル各社にとっては干天の慈雨にも等しい有益な情報になるだろうと思う。

何せ企業規模が同等なのだから、参考にしやすい。また投資している金額も近しいだろうから、こちらも参考にしやすい。丸パクリもできる。

ラグジュアリーの施策は全く参考にできない。店頭販売価格が桁違いに高いし、営業利益率も桁外れに高い。コロナ禍で弱っても営業利益率が15%以上もある。

ビジネスモデルが違いすぎて参考にはならない。まあ、国内でラグジュアリーブランドを作りたいというのなら、その部分では参考にできるだろうが。

 

一方で、小規模なコダワリブランドやファクトリーブランドの紹介はある。

こちらは、国内の小規模アパレル・零細アパレルにとっては規模が同等なので参考にしやすいが、やはり国内の中堅・大手は規模が小さすぎ参考にはし難い。

 

欧米にはZARAなどの超巨大ブランドか、小規模個性派ファクトリーブランド、ラグジュアリーブランドしかないのだろうか?というのが当方の長年の疑問である。

冒頭にも書いたように外国旅行にも行かないし、英語もできないし(勉強しなおす気がない)、外国とビジネスをしたいとも思わない人間なので、情報の収集には偏りがあるが、知っている範囲でいうとそういう「中間層」は存在しないらしい。

 

先日、日本の業界で20年くらい働いているヨーロッパ出身の人に久しぶりにお会いした。

もちろん日本語で話してもらっている。(笑)

で、上の素朴な質問をしてみたところ、

 

「ZARAなどの超巨大ブランドか小規模ブランドしか基本的には存在しません」

 

との答えだった。

 

もちろん、1人だけの意見なので、鵜呑みにすることは避けたいと思うが何割かの信憑性はあるだろう。少なくとも日本国内ほどには、著名な中間層ブランドは多数存在しないということだろうと考えられる。

 

コロナ禍でのアパレル業界を外野から眺めていると、日本もどんどんそちらに近づいていると感じられる。

カジュアルでいえば、ユニクロとジーユーがあればほとんど事足りてしまう。ファーストリテイリングの社員みたいな服装を避けたければ、しまむら、アダストリア、ストライプインターナショナル、無印良品あたりの服を差し込めばいい。

若い人は、最近は安くて少し個性的な物が欲しい場合は古着を買っているようだ。

 

一方、最近はSNSの使い方が上手い個性派の小規模・零細ブランドも続々と登場している。

しかし、売り方・価格帯・商品デザインを見ても、これらが70年代・80年代のように100億円規模のビッグブランドに育つことは考えられない。

恐らく、生き残りが上手いブランドは、コアな固定客をガッチリとつかみながら少人数で運営し、利益を確保して何十年間か規模を変えずにビジネスを続けるだろう。

最後はブランドごと売却するか、自身が老齢で引退して廃業するかのどちらかだろうと見ている。

 

日本のアパレルも今のままの消費状況が続くとこの二極化がさらに強まり、最終的には完全にこの二極化になるのではないかと当方は見ている。

これまで日本のアパレル業界を支えた中間層のアパレルは、商品の見た目は低価格巨大ブランドとあまり変わらなくなってしまったから、70年代~90年代のような売れ方は今後も望めない。かと言って、小規模ブランドほどのコアなファンは掴んでいない。

今後、この傾向はさらに強まるだろうとしか思えない。

欧米の業界のような二極化になるとしか考えられない。

 

もし、欧米市場に詳しい方がおられて、「通り一遍のZARA礼賛コンサル」ではない方がおられたら、浅学非才な当方にお教えいただきたい。恐らくそこに国内アパレル救済の鍵が隠されているのではないかと思っている。

 

 

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 comment
  • 繊維業界人 より: 2021/03/11(木) 12:32 PM

    いつもブログ拝見させていただいています。厳しいながらも業界に対する危機感と愛情を持ったご意見、参考にさせていただいています。
    確かに今後、大規模ブローバルブランドと小規模ローカルブランドの二極化はますます進んでいくと思います。。
    日本はかつて、また今も1億以上の人口を抱え、日本国内だけで完結できてしまったが故に外を見る必要が無く、また島国という特性からもガラパゴス化してしまい、ITによるグローバル化が進んだ今もその後遺症に苦しんでいる感がありますね。。
    ヨーロッパなどは人口が5000万人~8000万人規模の国が多いとは言え、陸続きなので、まだ「EU域内での販売」という概念があるのかもしれません。
    そういった意味で、日本と同じような形態の国はなかなかなく、参考に出来る国を探すのは難しそうですが、あればぜひこのブログでご意見お聞かせください!
    今後も南様のブログ、楽しみに拝見させていただきます。

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