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南充浩 オフィシャルブログ

加速するワールドの縮小政策

2021年2月4日 ネット通販 1

昨日、ワールドが追加でのブランド廃止と大規模な店舗閉店、100人の人員削減を発表した。

 

「 構造改革の追加実施について」

00.pdf (eir-parts.net)

 

興味のある方は、こちらの発表をご自分でお読みになられた方が良い。

 

めんどくさいという方に向けて、それぞれ抜粋してご紹介する。

まず、廃止の7ブランドは

ジェット、スーナウーナ、エアパペル、スマートピンク、モディファイ、ピンクアドベ等の7屋号

である。

 

退店は450店舗だが、その内訳は

 

450 店舗を来期に退店する予定です。尚、上記ブランド終息に伴う退店は 104 店となります。

 

とのことで、7ブランドの合計店舗は104店で、のこり350店舗弱は残存ブランドの不採算店閉鎖だということがわかる。だから、残存が決定しているブランドでも無くなってしまう店舗があるということである。

そして100人の人員削減の内容は

 

1.対象会社 :株式会社フィールズインターナショナル、株式会社ワールドストアパートナーズ
2.対象者 :対象会社に勤務する 2021 年4月 20 日現在、40 歳以上の社員
(定年再雇用者を含む)、ただし、店舗従事者は含まない
3.募集人数 :約 100 名
4.募集期間 :2021 年3月9日~2021 年3月 19 日

 

である。40歳以上で店舗従事者は含まないことになっているから、本部スタッフ、バックヤードスタッフがメインの削減対象ということになる。

ワールドは昨年8月にも385店舗の閉店を発表しているから、今回の発表と合わせると合計で835店舗の撤退ということになる。

 

ワールド/358店を閉店、5ブランド廃止 | 流通ニュース (ryutsuu.biz)

 

 

ちなみに今年1月のワールドの既存店舗数は2039店舗なので、撤退が完了した場合でもまだ1500店舗くらいは残ることになる。

ただし、某大手GMS関係者によると、その某大手GMS内からはワールドの店がほとんど姿を消すことになるという。今回の店舗数の最大の削減先はGMSとショッピングセンターということになるようだ。

 

今回の大規模退店の理由としては2020年春から始まった新型コロナ感染症の拡大による消費低迷と、2021年1月からの11都道府県での新型コロナ非常事態宣言によるものだということは間違いないと考えられる。特に今年1月の非常事態宣言はワールドのみならずアパレル各社にとっては痛かっただろう。何せ、最大のかき入れ時である1月バーゲンの腰を折られた形になったからだ。

営業利益額は別として、1月のバーゲンは単価の高い防寒アウター(ダウンジャケットとかウールのコート類ね)や高価格セーター類などが動くので、高い売上高が見込めるからだ。

商品単価が高くなる冬商戦、中でも正月と相まって財布のヒモが緩くなる1月バーゲンで年間売上高の何割かを稼いでいるアパレルは数多い。

 

業界の内外からは実店舗が退店すると、決まって「ECがあるじゃないか」という声が上がるが、月次速報を見てもらえば、ECの伸び率がいくら高くても、実店舗の落ち込みを穴埋めすることができていない現状がすぐにわかる。

ワールドの2021年1月の月次売上速報を見ると、

Eコマース売り下高は前年比11・6%増である。

しかし、

Eコマースも含めた国内小売売上高は前年比33・2%減に終わっている。

分母が小さいEコマースの売上高増では、分母の大きかった実店舗売上高の減少を全く穴埋めできていないということが、この2つの数字から見ても普通の頭の構造なら理解できるだろう。

もちろんEコマースが無ければもっと悲劇的な数字になっていたことは間違いないが、いかに実店舗のこれまでの実績が大きかったかということが分かる。

さらにいうと、年間を通じてもEコマース売上高は常に2桁%増加しているが、国内小売売上高は前年実績を上回ったことがない。いかに実店舗の売上高が重要かとEコマースの分母の小ささが理解できるはずである。

 

 

 

ここ数年の大規模退店については、削減対象となる人たちはまことにお気の毒としか言いようがないが、一方で良い部分もあると感じる。

それは、多すぎたブランド数が適正化されつつあるという点である。

国内の大手総合アパレルは概して抱えるブランド数が多いが、ワールドの抱えるブランド数はこれまで突出して多かった。最盛期には100を越えていたと言われる。

現在どれほどのブランド数があるかというと、

 

ブランド一覧| ワールド オンラインストア | WORLD ONLINE STORE

 

ここで見る限り、直近で廃止された数ブランドやアウトレット1つを含めて60くらいある。廃止ブランドを除いても60弱だろう。

まだこれでも多いくらいである。

逆に言えば、これまでのブランド数が超過剰だったともいえ、外野から見ている分においては、ほとんど同じ内容なのに名前だけが違うというブランドも少なくなかった。

これが整理されるということなのだから、人情を外して考えると適切な施策だといえる。

 

さて、今後のワールドも含めたかつての大手総合アパレルの今後だが、今のままで行くと売り上げ規模を縮小し、営業利益率を高めるという施策になると考えられ、そしてEコマースと衣料品以外の新規事業で稼ぐという2段構えとなるだろう。

Eコマース売上高は一定水準までは何年間か伸び続けるとは思うが、洋服という商品の性質上、半数以上がネットに置き換わることは難しい。また異業種への参入もノウハウと顧客を獲得するまで、少なくとも5年間くらいの時間は必要になり、即効性は薄い。

この辺りを経営陣・スタッフが整理して理解・納得できるかどうかにかつての大手総合アパレルの今後がかかっているといえる。

 

 

そんなワールドのザ・ショップ・ティーケーの1980円のネクタイをどうぞ~

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 comment
  • ハマオ より: 2021/02/07(日) 8:54 AM

    ワールドは買場の変化に素早く対応してきて売上を伸ばしきた歴史が有ります。
    卸から小売への変更
    SPA一番最初のオゾックの成功
    百貨店からファッションビルへ
    ハッシュアッシュ グローブの100億ブランドの成功
    Scへ複数屋号による大量出店
    ストア業態によるNSCまでの郊外マーケットまでの進出 までは対応出来ていましたが、
    ECの拡大はうまく行ってないですね
    上山さんや鈴木さんはお客様の評価よりも
    SMBCや株主の評価が大切と思っているのではないのでしょうか
    お客様の商品に対する期待とワールドの提供しているサービスのギャップが今の不振の原因と思っていますが
    今一度愚直に向きあって欲しいですが

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