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南充浩 オフィシャルブログ

季節先取りの「先物買い」という消費行動は今後もどんどん廃れる

2020年12月18日 未分類 2

もう何度も書いているが、自分が初老になったこと、洋服をたくさん所有してしまっていること、などが原因で若い時のように洋服に対する強い所有欲は薄れてしまっている。

たしかに、今でも毎月何枚かユニクロかジーユーの値下がり品を買ってはいる。

しかし、20代・30代のころのように「来月はあのブランドのあれが欲しい」という強い欲求が無くなっている。一つには加齢と慣れによって洋服そのものに対して新鮮さを感じなくなったのだろうと思う。

もう一つは、安物ばかりとはいえ、カジュアルシャツだけで何十枚も貯まってしまっているから、着る服が無いという状態とは程遠く、是が非でも買わねばならないとはまったく思えない。

 

まあ、そんな感じなので、シーズン初めに先物を買いたいとはまったく思わなくなって10何年が経過している。

 

洋服が店頭に並ぶタイミングは、当たり前のことだが季節本番よりも少し先んじている。

例えば、春物が一番売れるのは3月、次に4月の上旬とゴールデンウイーク前という感じだが、実際の春物は遅くとも2月中旬には店頭に並ぶ。

夏物なら本格的に売れ始めるのは梅雨入りくらいからだが、店頭には4月ごろから並んでいる。

秋物なら売れるのは9月下旬ごろからだが、店頭には8月中旬くらいから並ぶ。

冬物は本格的に売れるのは12月からだが、店頭には10月20日ごろから並ぶ。

 

少し前から展示・告知しておかないと、売れにくいのは何も洋服に限ったことではないから、この店頭投入のタイミングは間違いではない。

だが、自分に照らし合わせてみると、加齢による萎えを除いたとしても、やっぱり先物を買おうとは思わない。理由は「気温」である。

 

当方は汗っかきで暑さが嫌いである。そして、汗をかく量と期間は年々多く・長くなっている。これは高血圧のせいなのか更年期のせいなのかはわからない。

今年の8月は例年通りの猛暑で汗が止まらなかった。9月はもちろんのこと10月になっても汗は止まらなかった。今年の10月は例年よりは涼しかったが、夏に開いた汗腺は容易には閉まらない。そして11月は例年よりも高気温で11月20日ごろに最高気温27度の夏日がありずっと汗が止まらなかった。

汗が止まったのは12月に入ってからである。

だから、秋物・冬物を買う気にはなれなかった。

9月、10月と買ったのは半袖Tシャツがほとんどで、たまに長袖カジュアルシャツがあったくらいで、長袖をメインで買うようになったのは11月に入ってからで、11月に買った防寒アウターは990円に値下がりして品切れの恐れが出てきたジーユーとKappaコラボの中綿入りロングシャツだけである。

9月・10月のクソ暑い時期に防寒アウターを買っても2カ月近く寝かしておかなくてはならないから、買うのが嫌なのである。

そういう思いは年々強くなっている。

半袖を4月や5月に買おうとは思わなくて、6月、場合によっては7月になってからで十分だと感じている。

 

アパレル業界で「先物」が売れないというのは、当方のような考え方の消費者が増えているからだろうと思う。もちろん加齢云々ではなく、気温に合った物をその時に買うという買い方である。

 

レディスアパレル商戦 コート低調、「今着る」が基本 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

 

初老のジジイと同一視して申し訳ないが、レディースも同様ではないかと思う。

今秋冬は実需購入がさらに強まった。その時に着られるものしか買わないという傾向が強く、特にアウターはちょうどいい着用感が求められる。「今着るには暑い」と思われた商品の動きは一段と鈍くなった。寒くなる先を考えてコートを早めに購入する消費者は減り、薄手アウターの需要が長引いた格好だ。

とのことで、高気温だった11月は軒並み苦戦している。

ユニクロでさえ苦戦しており、感謝祭がちょうど夏日の週と重なってしまっていた。最高気温27度の夏日では、さすがにウルトラライトダウンなどの防寒は売れにくかったようだ。

当方は当然のことながら、防寒なんて買おうとも思わなかった。

 

 ダイドーフォワードの「ニューヨーカー」では、最終盤までいけるとみていたライナー付きモッズコートがアウターの主力商品として売れ続けている。予定通りだが、「ウールの動きの弱さは予想以上」。防寒性の高い物はまだ弱い。

 

とある。

当方のような初老のジジイとレディースの人を同様に扱うのは厚かましい限りだが、恐らくは老若男女を問わず、気温に則して今すぐ着られる物を買う傾向が強まっているのだろうと思う。

その理由はいろいろとあるのだろうが、やはり「多くの人が服をたくさん持ってしまっている」からという理由ではないだろうか。

明日着る物・来月着る物をすでに所有してしまっているから先物買いをする必要がない。先物買いの必要があるとするなら、人気ブランドの人気商品や、人気ブランドの数量限定モデルくらいしかない。

そして暑ければ、いくら値下げしてもユニクロでさえ防寒アウターは売れないということである。

 

今後、消費者の所有する服の数量は増えることはあっても減ることはないだろうから、「先物買い」という消費行動はさらに減る一方だろうと思われる。

防寒アウターの場合なら、繊研新聞の記事でも触れられているように、12月に入るとプレセールで値下げ販売されるため、プロパーで売れる時期は店頭投入した10月下旬と、11月いっぱいの合計1ヶ月半しかない。

 

今年は12月14日から平年並みの低気温となったから、12月下旬以降の冬物の消化は比較的順調になるのではないかと思われるが、コロナ自粛の影響があるので楽観視はできない。

また来年12月も平年並みの低気温になるとは限らない。

冬物に限らず、気温に則した買い方に対応するような売り方や見せ方、商品企画がさらに重要度を増すことは想像に難くない。

 

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 comment
  • BOCONON より: 2020/12/18(金) 9:52 PM

    むかしは「季節を先取りするのがお洒落のコツ(の一つ)」と言われたもんですが,最近そんな感覚を持った若い人はあんまりいそうもない。春物の綿ニットなんて,もともと少なかったのが最近滅多に売ってもいませんね。

    季節の先取りをするかしないかはとも角,仰言る通り服好きで 〈決して若くはない≒すぐ流行にとびつくわけでもない〉 年代だと,うかうかしていると洋服は溜まる一方だ。うちは田舎だから家は割と広いのだけれど,洋服は嵩張るので「1年着なかった服は人にあげるか捨てる」って方針で行かないとエラい事になってしまう。防虫剤も洋服箪笥4棹分だけでも結構な金額になりますからねェ。

  • HM1965 より: 2020/12/19(土) 11:00 AM

    トレンド軸、季節軸でのMDは崩壊しつつあると思いますが、わたしが零細企業ながら実践しているのは
    体型軸というものです。人間、年齢とともに体形が崩れていくのは必然です。
    かといって、一定の感性で洋服をチョイスしてきた方が突然Lサイズ対応のオバサンブランドには抵抗があります。
    これはローカルコミュニティだからこそ成り立つモデルだと思いますが、そういった要望に応えると
    価格を度外視したニーズが発生します。結局、この先アパレルは、ラグジュアリーブランドとユニクロとECがあれば
    大多数の店舗は要らないでしょうね。あとは当方のようなニッチだと思います。

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