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南充浩 オフィシャルブログ

ファッション雑誌の効能

2020年12月9日 ファッション専門学校 2

以前、何か月か前のこと。

深地雅也さんが「洋服の色合わせがわからないという今の若い人は多い」とツイートしていたと記憶している。で、その理由について「ファッション雑誌を読まなくなった部分も大きい」と答えていた。

その発端として、黒いダウンジャケットに合わせる色がわからないというトピックだったが、業界に長いこといる人や業界外でも常識的な人は、「え?黒ってほとんど何色とでも合うのでは?」と考えるから、一体何がわからないのかわからない。

 

色の着いたセーターを着て、とりあえず上から黒のダウンジャケットを着れば、何とかサマになる。

 

と多くの人は考える。

 

しかし、そういえば、ファッション雑誌では年間何度か定期的にカラーチップと実物の服を併記した色合わせ(カラーコーディネート)特集が組まれていたことを思い出した。

 

今、ファッション雑誌の購読部数は激減していることから、読者が減っていることがわかる。ウェブメディアが隆盛を誇り、単にコーディネイトを見たければインスタグラムあたりを流し見すれば、数多くの実例を目にすることができる。

〇〇ブランドの「〇〇(商品名)ロングコート」はどういうズボンに合わせるとスッキリ見えるのか、というような着こなしを見るには、インスタグラムなどのコーディネイト例は最適だと思うが、確かにカラーコーディネイトの定説やカラーチップとの対比は掲載されていない。(掲載されるはずもないのだが)

 

以前から何度も書いているように、自分は大学を卒業するまで洋服には興味がなかった。たまたま洋服販売の会社に就職してしまって販売員をやることになったので、知識が皆無なのでとりあえずファッション雑誌を毎月買って勉強することにした。ただし、レディースには興味がなかったのでメンズ雑誌を選んだ。

メンズ雑誌でも読まないよりはマシだろうと思いながら、読むようになったが、意外と面白く感じられて毎月、全ページを5回くらい繰り返し熟読していた。

もちろん、当初は分からない言葉も出てきたが、その言葉自体を覚えて、毎月雑誌を読んでいると、決まった事柄に対してその言葉が出てくる。

ということは、その事柄を〇〇と呼ぶのだと類推できる。

まあ、そんな風にして用語を覚えて行った。

 

あとは何回も繰り返し読んでいると、コーディネイト例をほとんど記憶することができる。〇〇ブランドの〇〇商品というズバリそのものを使わなくても、別ブランドの類似商品や色合わせをチョイスすれば、そのエッセンスは活かすことができる。

まあ、そんな感じでコーディネイトと色合わせも覚えて行った。

もちろん、ファッション雑誌のカラーコーディネイト特集も役に立った。

一番役に立ったのは、メンズクラブという雑誌だった。リニューアルするまでは本当にカラーコーディネイトから、スーツのオーソドックスな着こなし、洋服に関する用語類なんか、非常に勉強になった。何度も読み返せば自動的に暗記できた。

リニューアル後は、そういう部分が無くなってしまい、LEONあたりの同工異曲になってしまい、読む価値を感じなくなった。

 

先日、今年入学した専門学校生に「洋服のディテールを教えてほしい」と言われた。

秋から洋服販売のアルバイトを始めたが、ディテールや商品に関する専門用語を全く知らないそうで、仕事で苦労するのだという。

例えば、

モックネック、テイパードパンツ、リブニットなどなど

そういう用語に関する知識がないのだそうだ。

 

他の専門学校なら「ファッション用語辞典」みたいなのがあってそれで調べるのではないかと思うが、あいにくと、自分が行ってる学校にはそういうものがない。

この学生は、大学を卒業したばかりの27年前の自分と同じだということである。

当時は、当たり前の話だが、ウェブもなかったしSNSもなかった。携帯電話すら一般には普及していなかった。だから、インスタグラムでコーディネイトを見るとか、ウェブでファッション関連記事を読むとか、そういう手段を取れなかった。

 

今、よく考えてみると、当たり前だがインスタグラムにそんな用語解説はない。またウェブのファッション関連記事では、1つか2つの用語や事象についての解説はあるが、体型立ててまとまったサイトはあまりない。あるにはあるが、そこまで著名ではないし、見つけにくいから利用者も少ないのだろうと思う。また文字のみという場合もあって初心者には理解しにくい。

 

そう考えると、ディテールや形の用語に関しては、ファッション雑誌というのは一つの有効な教科書だったといえる。何せ、例として写真が掲載されているわけだから、文字だけで読むよりも理解しやすい。

一方、インスタグラムを始めとするウェブ上の画像は文字による解説があまりないから、こちらも理解は深まりにくい。

 

このようにつらつらと考えてみると、ファッション雑誌の優位性というのはここにあるのではないかと最近思えてきた。

画像による実例と解説記事の並立、用語や色合わせの定説など、である。

別にファッション用語辞典を買っても構わないが、値段が高いことに加えて、文章に面白味はない。1冊当たりがそれなりに安く、辞典よりは文章にも面白味がある。ここがファッション雑誌の利点だろう。

 

この辺りを強化し、体系立てて組み立てられれば、生き残れるファッション雑誌はあるのではないかと思うが、どうだろうか。

表紙にタレントを起用したり、人気漫画とコラボをしたり、というのはそのタレントファンや漫画ファンがファッション雑誌を買うだけであって、長期的なファッション雑誌のファン開拓にはまったくつながらない。

昔のメンズクラブ的な作りの雑誌がメンズばかりでなくレディースにも今こそ必要ではないかと思うが、どうだろうか。

 

今のメンズクラブをどうぞ~

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 comment
  • BOCONON より: 2020/12/09(水) 2:24 PM

    この手のサイトではしょっちゅう「30代は何を着ればいいの?」「どこで服買ったらええんや?」なんて事を話題にしているようであります。
            ↓
    https://blog.livedoor.com/category/523/

    「何を着ればって,普通の服着りゃいいだろうに」と思うけど,その「普通の服」が分からないらしい。まあ背広ですらはやり物しか着た事がないのでは無理もないですが。
    トラッド時代のファッション誌ならブルゾンやチノパン,ジーンズ,BDシャツ等の ”リアル・クローズ” の知識が結構身についた。最近のファッション誌はどうもその辺心許ない。基礎も出来てないのに《LEON》とか見てイタリア的な,それも業界人がイキって崩した服装なんて真似してもしょうがないですし。さもなきゃ高価な割にダサい服ばかり載っている《OCEANS》とか,ハイブランドの服のカタログ化している購読層高めの雑誌とか,なぜか”セレブ” のダサい私服を有難がっている雑誌とかばかりである。
    いっそMBクンみたいに「30代はからはこれさえ着てればおしゃれ」みたいな本・・・は探せば既にあるな。『ユニクロだけでオシャレ』なんて類の本も多い。でもダメージジーンズとか白パンツとか,高そうなツイードジャケットとか,ステンカラーコートをジャケット代わりに着るとか,業界人の自己満足みたいな服装をオススメしてたりして今ひとつ実用性がない。と言って,オシャレじゃない男も変なコダワリは一人前にあるから,僕なんぞが何を言っても聞き入れない。まことに困ったもんです。

  • とおりすがりのオッサン より: 2020/12/09(水) 2:33 PM

    私、昔はガンマニアで軍用銃を撃つためだけのために自衛隊入ったようなアホなんですが、やっぱり昔は銃の知識も雑誌からしか得られなかったですね。エキストラクター、ショートリコイル、デコッキングレバー、バレル、ロッキングラグ等々、専門用語ばかりで最初はさっぱり分かりませんでしたが、3~4年毎月読んでると用語の意味が推測できたりしました。「ガン用語辞典」みたいのも数年に一回出たりしてましたが、それもやっぱり文章だけだと良く分からなかったしましたね。今はネットで調べれば何でも分かるし動画も色々あるからか雑誌の需要も減ったようで、一番専門的だったガン雑誌は10年くらい前に出版社ごと消滅してましたw

    服飾はぜんぜん分かりませんが、スーツとかだとジャケットのボタン全部閉めちゃう人をたまに見かけますね。「NHKから国民を守る党」の立花センセと、その弁護士センセはそろってジャケットのボタン全部閉めてましたw
    弁護士センセのスーツなんかは、胸ポケが両玉縁でチェンジポケット付き(おっ、私もいつの間にか服飾専門用語覚えてる!w)なんで、吊るしのスーツじゃなさそうなのに、アンボタンマナー知らないっぽかったです。

    男子は結構オタク傾向強い人が多いから、オサレさんを相手にするより、スーツマニアとか服マニアを相手にして着こなしとか、素材とかウンチク語れる内容の雑誌とか作ったら商売になるんじゃないかも?

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