MENU

南充浩 オフィシャルブログ

そのやり方は昔からあったよね?

2020年12月1日 トレンド 2

最近、川下の人たちや川下に参入したド素人の人たちがP2Cという売り方を提唱している。

D2Cの派生らしいが、派生するほどメジャーな手段なのかと疑問しか持てないし、そもそも派生できるほど確固とした定義があるわけでもない。

D2Cはdirect to consumerの略である。じゃあP2Cは何かというとperson to consumerの略だそうだ。

個人的には、そもそもD2CとSPAの違いがよく分からない。

実店舗で売ったらSPAで、ネットで売ったらD2C?んじゃあ、ネット通販型製造小売りでいいんじゃねえの?

としか思わない。

 

本来のD2Cは販路(ネットか実店舗かは置いておいて)は別として、自社なり自分自身がデザイン・企画を手掛け、それをネットか実店舗を通じて直販する形態だと理解している。製造は工場に依頼しても構わないが、本来はファクトリーブランドが直販するのが究極的なD2Cだと考えている。

それが今では、韓国の東大門市場や中国の広州市場で仕入れてきた物をネットで売って「D2C」と名乗っている業者が掃いて捨てるほどいる。いやいや、ぜんぜんdirectじゃないし、自分らが中間業者じゃねえか。

また、大手ブランドでもネット通販専用商品ならD2Cだとも言われ出しており、じゃあ、一番成功しているD2Cはユニクロのオンライン専用商品じゃないかということになる。

そういえば、当方も4年くらい前にユニクロのオンライン専用(実店舗店頭での販売無し)商品のM65ジャケットを買った。正確には2016年秋物である。たしか5990円だったので送料無料だった。「おお、俺はすでに4年前にD2C商品を買っていたのか。時代の超最先端やん」ということになる。

 

 

 

で、今度はP2Cだという。個人が直接消費者に売ることを指すらしい。

は?

例えば、今、D2Cブランドとして押しも押されぬ地位を確立したかのように見えるfoufouも元は個人のスタートである。徐々に売上高が伸び、組織化して行ったというわけである。

古いところだと、ジュンという大手アパレル企業のバックアップがあったとはいえ、梨花さんの「メゾン・ド・リーファー」もスタート当初は梨花さんという個人が前面に立っていた。徐々に店舗数を増やしていった。

その当時のタレントブランド、少し前の読モブランド、さらにその前のカリスマ販売員ブランド、なんかはスタート当初はすべて個人を前面に押し出したP2Cだった。

 

そのビジネス、以前からありましたよね?

 

過去から既にあるものを、まるで新しいビジネスのように流布する事にどんなメリットがあるのかはよくわからない。もしかしたら単純にそれを知らなかっただけなのかもしれない。

 

とあるが、まさにこの通りである。

 

例えば、トウキョウベースの店頭販売接客力がすごいと10年くらい前から言われている。

販売員が積極的に声をかけ、お客とLine交換をして店に呼び寄せるをすることを「素晴らしい」「新しい」などと某ベテラン評論家までが褒めていた。

だがちょっと待ってほしい(朝日新聞話法)。

1980年代のブティックはハウスマヌカンと呼ばれる販売員たちがよく言えば積極的、悪く言えば強引な声かけ販売を行っていた。90年代には呼び名がカリスマ販売員に変わったがやっていることは同じだ。

お客とLine交換するのは、すでにキャバクラやスナックの常套手段でもある。Lineが登場するまでは携帯メールだった。

また全然新しくないが、今でも変わらずレリアンというミセスブランドの販売員は総じて押しが強いと業界内でも評判である。

トウキョウベースの販売法の一体何が素晴らしいのか、新しいのかわからない。

 

例えば、今盛んに言われているオムニチャネルだって、古くはクリックアンドコレクトとかクリックアンドモルタルとか呼ばれていた。

要するにクリック(ネット)とコレクトORモルタル(実店舗)両方で境目なく買えるようにしましょうということである。

今まで誰も思いつかなかった全く新しい概念などではなく、古くからあったものの呼び名を変えただけでしかない。

 

もちろん、使えるツールは時代とともに進化するし変化する。

携帯メールがLineになったり、ノートパソコンがスマホやタブレットになったりするが「本質」は変化していない。ことさらに「新しい〇〇」と声高に叫ぶ人は、その本質に気付いていないのか、それとも自分が優位に立ちたいがために本質をあえてボカしているのか。

そして、その「本質」を理解していない管理職や経営陣は外部からの「新しい」情報に踊らされやすい。今年もそういう老舗メーカーや大手アパレルメーカーを腐るほど見た。

そういう管理職や経営陣は「新しい」言葉に踊らされ、本質を外した指示をする。

コロナ休業下でネット通販の重要性が再認識され、「デジタル接客」という手法に改めて注目が集まっているが、本質を理解していないと以下のような指示を出すことになる。

 

 

まるで古典落語のオチのようである。(笑)

まあ、結局は「新しい用語」に踊らされるエライさんがいて、それを提唱した人(グループ)が金銭的メリットを受けるからこの構図は今後もなくならないのだろうなと思う。

 

この記事をSNSでシェア
 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/12/01(火) 1:28 PM

    どこの業界でもエセコンサルタントのさばってるので、どうにか抹殺したいですねぇ~w
    ちなみに私を訴えてる某コンサルタントの代理人弁護士は第二回口頭弁論期日で裁判長から「もう少し論点を整理してください」と怒られてました。ダメコンサルにダメ弁護士という、類は友を呼ぶという現象w

  • BOCONON より: 2020/12/02(水) 7:34 PM

    アメ横などではいまだに黒人男たちが黒人ファッション風な服売っている店の呼び込みやっています。最近はしかし,若い人たちのファッションはむしろ韓国人風になってますね。髪型も韓流アイドルみたいなキノコ頭だらけだし。
    それこそインチキコンサルなどは「これからは韓流ファッション輸入して若い男女に売れば絶対儲かる。早いもん勝ち!」と言い出しそうな気もする。「体形ほぼ同じだから輸入してそのまんま売れる!」「韓国人イケメンを呼び込み or 販売員に使えば女子も取り込める!」とか。
    うーん,これは案外イケるかもしれないw
    (やりたい人はどうぞ自己責任で)。

とおりすがりのオッサン へ返信する コメントをキャンセル

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ