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南充浩 オフィシャルブログ

タレントを起用するよりも

2013年9月5日 未分類 0

 繊維・アパレル・衣料品業界において、「良い物を作っているけどあまり知られていない」という企業やブランドは多い。「それなりに知名度は高いのだけど最近はすっかり存在感を感じさせない」という企業やブランドも多い。

「そういえば、10年前までは連日紙面を賑わせていたのに、最近はあまり紙面にも出てこない」
「紙面では報道されるが、その後、あまり印象に残らない」

というようなかつての名門企業・ブランドもちょっと思い返すだけで何社かある。

企業名やブランド名は知られないより知られた方が良いと思うし、存在感はないよりはあった方が良いとも思う。
しかし、なまじ知名度が高まったばかりに批判や批評の対象にもなりやすいので、それを嫌がる気持ちがあるのも理解できる。

そんな中で、最近の取材の中で立て続けに、改めて「発信力強化」に取り組む何社かに遭遇した。

よくあるのは、女優やタレントと契約して、企業やブランドのイメージキャラクターになってもらうという手法である。
スポーツウェアメーカーなら有名アスリートと契約するのは一般的にも良く知られている。
この手法は以前はそれなりの効果があったし、スポーツウェアメーカーには欠かせない手法でもある。
ただ、女優・俳優・タレントとの契約という手法は、個人的には、以前よりも効力が落ちているのではないかと感じる。
テレビCMや雑誌広告に芸能人やそれに類した人がそのブランドの服を着たり、雑貨を持って登場するのだが、今の消費者はそれに反応しないケースが増えたように感じる。

芸能人・タレントを前面に押し出すよりも、会社の経営者やスタッフを打ち出した方が有効的ではないかと、最近思い始めている。

好き嫌いはあるが、ユニクロといえば過去にCMに登場したタレントよりも柳井正会長の方が思い浮かびやすい。常に賛否両論あるが柳井会長の言動には良くも悪くも注目が集まる。

最近懇意にさせていただいている2社もそうで、「フラムクリップ」などのレディースブランドを展開するピーアイは、「短パン社長」こと奥ノ谷圭祐社長が全面に出ている。
ちょっと出過ぎではないかと感じられなくもないのだが、その露出度や発信力はかなり高い。
個性が出過ぎていて、本業が何屋なのかわからない場合もしばしばあるのだが。(笑)

ファンシーヤーンの販売会社の丸安毛糸は、岡崎博之社長が全面に出ておられる。
短パン社長ほどの強烈なインパクトはないが、地道に発信や顔出しを続けておられ、原料関係の販売会社としては近年、急速に知名度を高めていると感じる。

いわゆる「カリスマ」を社内に作ってしまうと、良くも悪くも発信力は格段に上がるし、世間に対する存在感も増す。
だから、タレント・芸能人と契約するよりも会長や社長をタレント化してしまう方が良いのではないか。

けれども「カリスマ」方式にも欠点がある。
物理的にその「カリスマ」がいなくなってしまった場合である。
定年退職、引退、急死、病死などなど様々な理由が考えられる。

そうなると、次のカリスマを作るというのはかなり難しい。なまじ前任者の個性が強烈なのでその次代の個性はなかなか浸透しづらい。
強烈なカリスマが引退した後、停滞した企業は衣料品業界に限らず何社もある。

そんなことを考えていると、先日掲載された無印良品の考え方は参考になる。

遠藤功の「超」現場力対談
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130627/250301/?P=1

遠藤さんと良品計画の金井政明社長の対談の中にこんな一節がある。

遠藤:人間がカリスマになっちゃダメなんでしょうね。そうじゃなくて、思想がカリスマになる。そうすると、人が代わっても思想は生き延びていくし、その思想を引き継いでいる人がリーダーなる。誰かがカリスマリーダーになっちゃうと、その人がいなくなった途端に組織がダメになる。

金井:私は、無印良品は特にそうだと思います。本当にそう思います。だから、私が良品計画の社長として戦略だとか目標だとか、そういったことに答えるのはいいけれど、個人の印を見せてしまうことは大変よくないなと。

 無印良品を作った田中一光さんは、それを徹底していました。本当にそこは大尊敬です。田中色に一切ならないように、いつも陰にいた。自分でできるクリエーションも、若手を集めてやらせていた。自分でやった方がはるかに早いし、パーフェクトだろうけど、やらせていた。すごいなと思った。

遠藤:なるほど。そこはすごく重要な、日本的かもしれないけど、1つのリーダーシップのあり方ですよね。個人が突出して、「俺がMUJIの体現者だ」みたいになると、具合が悪い。

金井:そう思いますね。

とのことである。

結構、この一節は深い内容だと思う。

個人的な結論だが、

タレントと契約する < 社長やスタッフの個性をカリスマ化する < 思想をカリスマとして打ち出す

優劣の順番で行くとこうなるのではないかと思う。

もちろん、右に行くほど施策が優れているという意味である。

とりあえず、最近遭遇した何社かは、二番目の「社長やスタッフの個性をカリスマ化する」ところから始められてはどうだろうか?

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