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南充浩 オフィシャルブログ

岐阜のメンズカジュアルメーカーを軽く・浅く紹介してみる

2020年11月12日 未分類 7

前回も書いたように、繊維・ファッション業界というのは、全分野を網羅して知っている人はほとんどいない。恐らく皆無ではないかと思う。

原料(川上)→メーカー(川中)→小売店(川下)という縦方向の知識の断層はもちろんのこと、横方向でも販路が異なればまったくと言っていいほど、他分野のことは知られていない。

・肌着の人は一般アパレルのことはほとんど知らない

・百貨店向けアパレルの人は量販店のことをほとんど知らない

・量販店の人は百貨店や欧米インポートブランドのことをほとんど知らない

 

と言った具合である。

 

レナウンがライセンス生産していた「アーノルドパーマー」が水甚というアパレルメーカーへライセンスが移管された。

レナウンの破産が確定

米国本社が岐阜を拠点とするアパレルメーカー水甚とライセンス契約を結んだ。

これで、レナウンが所有していた「そこそこ価値ある」ブランドはすべて移管先が決まった。これによってレナウンは倒産し、消滅することになる。

 

このニュースが報道される2週間ほど前に、個人的には製造業系ルートから、「アーノルドパーマーは水甚に行くらしい」という情報を得ていた。

これを聞いた時にはちょっと意外な気もしたが、業界内のブランド需給バランスからいえば、納得できる部分もあった。

意外だった理由は、

1、水甚は大手総合スーパーや量販店チェーン、低価格専門店チェーンを中心とした販路であるため

2、水甚という地味な会社が手を挙げたこと

の2点である。

納得した理由は

1、水甚も恐らく現在の主力販路以外の新販路開拓を模索しているのではないかという点

2、ブランドのライセンス生産は水甚を含め岐阜のカジュアルメーカーの得意とするところ

という2点である。

 

しかし、タイムライン上では「水甚?何それ?美味しいの?」という反応も、高額アパレル関係者やファッションビルアパレル関係者、ネット通販関係者にもけっこう見られた。

なので、今回は水甚を含めた岐阜のアパレルを軽く・浅く紹介してみたい。

詳しい方は読む必要はない。いつも通り時間の無駄である。またもっとお詳しい方はご教授いただきたい。

 

まず、大前提として、メンズ・レディースを問わず、基本的に岐阜のアパレルというのは低価格品を昔から手掛けてきた。例外があるとするとレディースブラックフォーマルくらいではないかと思う。

現在のところ、レディースだとサンラリーグループがそれなりに著名だが、サンラリーグループも基本的には低価格品で大手総合スーパー、量販店チェーン、低価格専門店チェーンを主力販路としている。

基本的に、岐阜のアパレルメーカーの主力販路は、大手総合スーパー、量販店チェーン、低価格専門店チェーンであり、百貨店向け・ファッションビル向けは少ない。知っている範囲だと百貨店向けは皆無と言ってもいいんじゃないかとすら思う。

水甚の同業他社というと、美濃屋・岐阜武・佐藤正の3社が代表だろう。

4社とも名前の古めかしさから分かる通り相当に老舗のメンズカジュアルメーカーである。

4社とも売上高は非公開なので正確には分からないが、現在はだいたい100億~200億円くらいではないかとされている。

 

まず、水甚である。

水甚の主力はやはり「ファーストダウン」というブランドで、これの防寒アウター類が有名だろう。昔から大手総合スーパーのメンズカジュアル平場やジーンズチェーン店でよく見かけた。5900円くらいで販売されていた中綿アウターブランドである。競合にはペンフィールドがあったが、ペンフィールドはヤマトインターナショナルに移管され、高額ブランドとしてリブランディングへの取り組みがあったが、今も効果は出ないままである。

これに刺激を受けたのかどうかは分からないが、水甚もファーストダウンの高額ブランド化に3年ほど前から挑戦しているが、今も効果はまったく出ていないように感じる。

あとはヘンリー・コットン、リバティベルというブランドもある。

リバティベルもダウンジャケットがバブル期に流行ったブランドだがこちらも現在は上手くリブランディングできているとは言い難い。多分、これを懐かしいと思うのは今の50代後半から60代である。

 

次に美濃屋

美濃屋は何と言ってもコンバースのTシャツ、スエット、ブルゾンが最も有名で、美濃屋の名前は知らなくても、イトーヨーカドーやイオンのカジュアル平場で1900円のコンバースプリントTシャツや2900円のスエット、5900円の中綿ブルゾンやダウンジャケットなどを目にしていた人は多いと思う。

サイトではコンバースが表示されなくなっているが、いまだにコンバースのカジュアル向けTシャツ、スエット、ブルゾンは美濃屋が製造している。

ピーク時には年商600億円もあったが今はその3分の1くらいにまで売上高が低下している。

昔、15年くらい前は「パッゾデニムスタジオ」という「パッゾ」ブランドのセカンドラインのライセンスを持っていて、これは主にジーンズメイト用に作られていた。

当方も15年くらい前に綿厚手織物のライダースっぽいジャケットをジーンズメイトで買っており、未だに捨てずに残している。定価は5900円くらいで当方は4900円か3900円くらいで買った記憶がある。

15年くらい前にジーンズメイトで買った「パッゾデニムストア」の綿ライダースジャケット

 

 

 

 

 

ユニクロはOEMを使わないことで現在では知られているが、美濃屋は2000年代後半までユニクロのメンズカジュアルトップスのOEMを一部手掛けていた。

レディースのボトムスメーカーとして最後まで残ったOEMは大阪のコイズミクロージングである。

 

 

岐阜武

決して、ギフタケシという人名ではない。ギフタケと読む。

現在のところブランドは2つしか持っていない。比較的著名なのは、ウサギのマークのプレイボーイと契約したプレイボーイVIPだろうか。

個人的にはこの会社はブランドのライセンス生産よりも各小売店のOEM生産・ODM生産が主力だと思っている。ジーンズメイトやライトオン、その他ジーンズチェーン店の平場に並んでいるようなメンズトップス、一部カジュアルアウターなどを手掛けている。

 

最後に佐藤正

これなんか人名としか思えない社名である。

こちらはライセンスブランドはあまり聞いたことがなく、自社ブランドが中心だが、これも自社ブランドとして大々的に卸売りしているのではなく、量販店や低価格チェーン店のOEM・ODM生産を請け負うという取り組みがメインである。

最近ではEC向けのOEM・ODMも手掛けている。

何気にYouTubeチャンネルも開設しているが果たしてそれに気付いている人は業界内に何人くらいいるのだろうか?(笑)

 

まあ、予告した通りに軽く・浅く紹介したが、当方がこれらに馴染みがあったのは、大手総合スーパーよりもジーンズカジュアルチェーン店向けの低価格トップスの供給メーカーとしてである。ライトオン、ジーンズメイト、マックハウスの常連メーカーだった。

ジーンズカジュアル売り場育ちの当方としてはいずれも30年くらい前から親しんだ社名ばかりである。

衣料品に興味のある人は、岐阜メーカーもあれこれ調べてみてもらいたいと思う。

 

 

リブランディング中のファーストダウンの防寒アウターをどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/11/13(金) 9:19 AM

    ほとんど関係無いんですが、こないだ潰れた岐阜のラブリークイーン社(レディースブラックフォーマルがメイン)のコンサルタントやってた株式会社武蔵野とその社長の小山昇から、名誉毀損とかで損害賠償請求の民事訴訟おこされました。私が長年Amazonのカスタマーレビューで、小山昇のビジネス本を酷評してたのにブチ切れたみたいっす。ホント、コンサルタントってロクな奴が居ません。わたしもまぁまぁ「無敵の人」なので気楽に社会経験として楽しんでますが、民事裁判って流れ作業でいろんな訴訟を次々に処理していくのが意外でしたw

    • BOCONON より: 2020/11/14(土) 1:33 PM

      それは意外ですね。たとえば小谷野敦が「自分と自分の本に対する Amazon のレビュアーの誹謗中傷があまりにひどすぎる」と Amazon にいろいろ申し入れたけど事実上門前払いだった,なんて話を聞いたりしていたので。その小山某氏は,単に酷評されたってだけでどうやって訴訟にまで持ち込んだのやら。
      と言っても,たぶん勝っても別に得しない裁判起こすというのは明らかに嫌がらせでやってるのだからご苦労な事ですなw

      • とおりすがりのオッサン より: 2020/11/16(月) 9:58 AM

        うちの会社で小山昇にコンサルタントを頼んでいて、私は本名で小山昇の批判をしていたので、セミナー参加者名簿で名前を調べて会社を特定して、うちの社長にクレームを入れてきてたんです。でも私は「言論の自由だ!」と、延々と批判してたら小山は弁護士雇って「誹謗中傷辞めないと訴えるぞ!」と脅してきました。それでも辞めなかったので本当に訴えられました。
        小山はAmazonには個人情報の開示請求をしていましたが、そちらは私も開示拒否をAmazonに伝え、Amazon側も突っぱねていました。なので、私の住所は知られていないんですが、訴訟は所属会社宛てに訴状を送ることでも成立するようで、会社の住所で訴状が特別送達されてきたという経緯です。まさに嫌がらせなんですが、付き合わないと原告の請求がそのまま認められてしまうので仕方ありません。ま、裁判を経験出来て良かったと思うことにしてますw
        ちなみに、裁判用にスーツを初めてオーダーしてみました。イージーオーダーですけど。

        • BOCONON より: 2020/11/16(月) 8:49 PM

          会社ぐるみじゃ,ひろゆきみたいに判決で賠償命令が出ても無視,ともいかないでしょうから少々難儀な話ですな。遠くの裁判所迄行かなきゃならないとしたらますます,ね。
          今後はこういうスラップ訴訟のたぐいが日本でも多くなってきそうな気がする。僕もペラ男だから用心しないとなあ。くわばらくわばら。

  • Kimgonwo より: 2020/11/16(月) 12:46 PM

    とおりすがりのオッサン様
    お疲れ様です 貧すれば鈍する
    今のアパレルのようですね
    あほらしやの鐘がなりますね
    ボーンボーン

    • とおりすがりのオッサン より: 2020/11/17(火) 5:02 PM

      訴えてきたコンサル氏の会社もコロナの影響で、会員を1ヶ所の会場に集めた50万円、100万円の高額セミナーセミナーが数ヶ月出来なくなって売上1割減になっただけで、2020年4月期決算は営業赤字に転落して、全従業員がボーナスゼロになったそうです。赤字になってムカついたから訴えてきたのかもしれませんw

  • ビギナー より: 2020/11/21(土) 2:48 PM

    美濃屋の説明にある「ユニクロはOEMを使わないことで現在では知られているが」は本当ですか?

    OEMを使わないということは、生産を外注せず、すべて内製化しているということになります。
    しかし、ユニクロは自社工場は持っていないはず。ユニクロが取引しているマツオカコーポレーションはOEM会社なのでは?

    ユニクロのビジネスモデルは企画(自社)→製造(OEM会社に外注)→販売(自社店)というのが当方の理解なのですが、合ってます?

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