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南充浩 オフィシャルブログ

スモールサイズの服もキングサイズの服も需要総数はそんなに多くない

2020年10月27日 未分類 2

以前にも書いたが、ビッグサイズ・ルーズサイズの場合、袖丈の長さは別として、身幅や肩幅はあまりサイズによって差が出にくい。

例えば、Mサイズを着てもダボっと見えるようなビッグサイズの場合、これをLサイズに変えたところで見え方は「同じようにダボっとしている」である。

実際にネット通販でサイズ表を見ると、MサイズとLサイズでは身幅で3~5センチ、肩幅で1・5~2センチくらい変わっている場合が多い。

しかし、実際に着用してみると、MサイズだろうがLサイズだろうが「同じようにダボっとしている」ように見える。

袖丈が長くなることが気にならない方はMサイズが無ければLサイズを買えばそれで済むだろう。

 

小さすぎるサイズの服が少ないとか、大きすぎるサイズの服が少ないとお困りの方もおられることは存じ上げている。

しかし、その人数は一体どれほどなのか、そのあたりを見極めないと、マルチサイズ対応という施策は在庫の山を作ってしまうことになる。

当方が以前から、サイズ対応に疑問を持っていた。

 

最早、国民服と呼べるユニクロのワゴンセールを当方は定期的に漁るわけだが、590円・790円・990円くらいにまで値下がりすると、サイズが欠けている。

特に欠けるのは、Mサイズ、Lサイズである。

やはりこのどちらかに合う人がマス層なのだろう。もしくは、このサイズで気にならない人が多いのだろう。

Sサイズはその次くらいに無くなりやすい。が、Sサイズまで欠けるようになるとほぼ完売に近い。

最も残っているのがXSサイズとXLサイズである。

 

590円や390円にまで値下がりした商品はワゴンに大量に残っていてもXSサイズとXLサイズばかりになっている。

 

このことから考えると、ユニクロほどの大量の顧客を持っているブランドでもXSとXLは大量に余るということである。もちろん、ユニクロもXS、XLの生産数量は抑えているのだろうが、それでもほとんどの場合余る。

ということは、ユニクロの抱えている大量の顧客でさえ、ユニクロの想定よりもXSサイズ、XLサイズは少ないのだと考えることができる。

 

マルチサイズがアパレルを救う?そんなわけねえだろ!

上記のようなレディースブランドは、販売期間を短くとり、店の鮮度を意識して、多くの商品アイテム数を店舗に投入するのが、その特徴です。ということは?サイズ展開を増やせば、1アイテムあたりの平均数量が減り、更に1サイズ当たりの数量平均が少なくなります。(サイズ別の発注数量にメリハリがなくなる。)

すると、売れるであろうサイズの商品数量が足りなくなる確率が高まることで機会損失を起こし、売上が低下します。また、不必要なサイズが売れずに残る可能性が大なので、冒頭私が述べた。。。

”端々のサイズが売れ残ると、セールしても中々売れない!”

と同じようなことが起こります。しかも、多サイズでそのようなことが発生するでしょう。

 

とのことで、ユニクロでさえXSとXLばかりが最終的に残ってしまっている。

ユニクロがネットのみでXXSや3Lや4Lに対応しているというのは、実に理にかなっており、売り場で展開すると今まで以上に売れ残りが大量に発生することになるだろう。

 

ここではZOZOのマルチサイズが採りあげられているが、参加企業の中でベーシック品を長く売るというのは、リーバイ・ストラウスくらいである。

リーバイスが主力で扱うジーンズというのはサイズピッチが2・5センチ~3センチくらいと実に細かくて、通常の店でも28インチ、29インチ、30インチ、31、32、33、34インチと7サイズも展開している。

場合によっては27インチも入荷している店があり、その場合だと8サイズ、36インチも入荷していれば9サイズである。

 

リーバイスに限らず、ジーンズメーカーというのは昔からある意味でマルチサイズ対応をしていたということである。

 

しかし、そんなジーンズメーカーでもだいたいが36インチを上限としていて、38インチからは自社では企画製造していない場合が多い。

今のリーバイスはどうだか知らないが、2010年頃まではリーバイスでさえ、38インチ以上のキングサイズは、キングサイズ専門メーカーにライセンス生産させていた。その一つが岐阜のメンズのキングサイズメーカーのマンチェスである。

2017年11月にマンチェスとその子会社のミッド・インターナショナルは、はるやまに買収された。

 

「はるやまHD、「大きいサイズ」強化 2社を買収」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23510010V11C17A1000000/

 

創業が昭和23年(1948年)という老舗である。これほどの老舗で、固定客が多いと考えられるメンズのキングサイズメーカーのマンチェスだが、はるやまに買収された2017年時点で、記事によると、2社合わせた売上高は19億円しかない。

 

ということは、どれほどキングサイズの需要が少ないかということを物語っている。

女性向けだともう少し売上高は伸びるのだろうが、業界の中堅クラスの売上高にまではならないのではないかと感じる。

ウェブ上にはインフルエンサーみたいな声の大きな人がいて、「もっと大きいサイズヲ~」とか「もっと小さいサイズヲ~」という要望が注目されてしまうが、実際のところ、ユニクロの投げ売りワゴンにしろ、老舗のメンズキングサイズメーカーにしろ、その需要の少なさが際立つ。

もちろん、サイズ対応することは重要だが、これらの事象から導き出される結論は、何百億円という規模感にはなりにくい商品だということになる。それを分かった上で、それに見合った数量を供給すれば良いのであって、数量を作り込みすぎると確実に不良在庫になり、それはサイズ感ゆえにアウトレットでもオフプライスでもバッタ屋でも完売させにくいということである。そこを理解して参加しないとマルチサイズは在庫の山を築くことになる。

 

 

 

特大3Lサイズのマスクをどうぞ~

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 comment
  • BOCONON より: 2020/10/27(火) 10:29 PM

    お話聞いていると「何十年も昔から出来もしなかった事をなぜ今さらやろうと思うのだろう?」と思いますね。
    僕は若い頃ひどく痩せていて,体重が50kgくらいしかなかった。それでスーツのサイズがなくて困っていました。Y体って痩せた人向けな規格はあっても,商品としては存在しないも同然で。
    「何故こんな差別受けるのだ?」と思いつつ,あちこち見て歩いたり販売員に聞くと,どうやら「服は小さすぎては着られないが,大きすぎる分には着られなくはないから」らしい。つまり小柄痩せ型だからと言って小さすぎるサイズや細すぎるサイズを探してまで買う客はあまりいないので商品として成立しない,という事。
    なるほど「大きいサイズ」の店はサカゼンとかあるし,うちの近所のしまむらにも「大きいサイズ」コーナーはある。でも紳士服で「小さいサイズ」専門店なんてものは聞いたことがない。つまりは仰言る通りで(大きいサイズはまだしも)小さいサイズなんてものはユニクロでもなきゃ在庫を抱えきれないのは分かり切った話ですね。

  • BOCONON より: 2020/10/27(火) 11:18 PM

    も一つ思い出した。
    僕は足が小さすぎる(靴のサイズ24cm)のであまりサイズがない。靴はしかし,さすがに「大きすぎる靴を履いてバタバタ歩くわけにもいかない」って人が多いらしく,その点服よりはましで,リーガルとかならサイズはある。結局僕はそういうある程度以上高価な靴を売っているところでしか買い物が出来なくなった。安い靴でもたま~に24cmはあるし,安物の靴は造りが小さいので24.5cmでもイケたりするけど,そんなものを探して歩くのは馬鹿らしいので。
    スーパーなどで売っている「裾上げ不要」のチノやジーンズも一見重宝なようで,そうでもない。自分のサイズが売り切れていたらそれまでだから。しかもしばしば売り切れていて補充されない。だからあまり売れている様子もない。
    ・・・何が言いたいかと言うと「あそこへ行けばほぼ確実に自分のサイズが手に入る」と客が思わないなら大きいサイズも小さいサイズも事実上あってもなくても同じ,ということであります。やるのなら「これからもずっとXSもXLも作り続けます」って宣言でもしなきゃ。
    セレクトショップや百貨店ブランドにそう宣言されても僕はあまり信用する気にはなれないけどw

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