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南充浩 オフィシャルブログ

続・無印良品の衣料品が売れなくなった理由を考えてみた

2020年10月22日 企業研究 5

最近は、サステナブルとかエシカルとかの観点から、ベーシック品を長く売るべきだという論調があって、それはそれなりに理解できる部分もあるが、それなら往年のジーンズメーカーの手法が一番サステナだったんじゃないのか?という疑問が湧いてしまう。

501とか503とかを延々と卸し続けていたわけである。そしてジーンズカジュアルチェーン店はそれを主力の一つとし続けてきたわけだが、ビジネス的には両方ともに苦境に陥って今に至る。

まあ、時代が変われば、消費者の見え方も変わることもあるので、この手法が見直されることもあるのかもしれないが(笑)。

 

しかし、消費者の立場として洋服売り場を見た際、50年も生きてきて、年間に100枚くらい服を買っている当方からすると、ベーシック品ばかりの売り場では、買う意欲は刺激されない。もっと言うと、買いたいとは思わなくなる。

誤解のないようにいうと、年間100枚くらい買っても使用合計金額は10数万円程度である。当方はブルジョワではない。

手持ちと同じデザイン、同じ色柄ばかりが毎年並んでいるなら、1枚くらいは買い足すだろうが、次に買うときは手持ちの服が破損したり洗濯不能なほど汚れた場合だけである。

いわば「買い替え需要」しかない。洋服の傷み方は着用頻度と洗濯頻度によるので、一概には言えないが、ユニクロやジーユーの商品は当方だとだいたい3年は着用できる。下手をすると10年くらい着ているユニクロ商品もある。

その買い替え需要で購入するのは、何年かに1度、1枚か2枚程度である。

 

今回も無印良品の話で恐縮だが、前回、文字数が増えたので省略したことを今回補足したいと思う。

無印良品のメンズの服を見ていると、毎年変わり映えがしない。特にこの2~3年は形はもちろんのこと、色・柄も変わらない。

無印良品の衣料品がコロナ休業明けも絶不調である。無印良品の売上高が前年維持できているのは、

・食品の大幅増収

・生活用品の堅調

が理由であることは前々回にまとめてみた。以下を参照願いたい。

衣料品の不振を食品の大幅な伸びでカバーしている無印良品

 

 

 

 

 

無印良品の衣料品が、コロナ休業明けの不調はもちろんのこと、昨年10月から客単価が10%以上低下している原因については、メンズを見た限りにおいては、

・ルーズシルエット全盛期にもかかわらずシルエットがタイトでピチピチであること

・ピチピチを好む層は無印良品のナチュラルベーシックテイストを好まないこと

を前回まとめてみた。以下を参照願いたい。

無印良品の衣料品が売れなくなった理由を考えてみた

 

 

 

で、今回は前回の中に盛り込めなかったことをまとめてみたい。

先述したように、メンズ衣料品を見ている限りにおいて、今秋冬に買い足さねばならない物、新たに買いたい物がほぼ見当たらない。

理由はシルエットがタイトでピチピチしていることばかりではない。

色・柄が毎シーズンほとんど変わり映えしないからである。

ブランドの性質上、黒・紺・グレー・白に偏重するのは仕方がない。アクセントカラーもせいぜいがベージュ類、オリーブグリーン、マスタードくらいになる。

しかし、手持ちの服が多い当方にとっては、黒・紺・グレーは腐るほど持っている。何ならオリーブグリーン、マスタードあたりもかなり持っている。白は汚れが目立ちやすいのであまり買いたくない。(笑)

となると、服が破損していなければ、買い足す理由がない。

 

これで、色・柄は同じでも目新しいデザインの商品が入っていれば、「他人から見たらほとんどわからないかもしれないが買ってみようかな」ということになるが、今秋の店頭を見た感じでは、それもほとんどない。昨秋からの継続品番的な物がほとんどである。

色・柄も同じ、デザインも同じ、なら買い足す必要がない。

無印良品の衣料品の不振はこれも原因の一つではないかと思う。

 

もちろん、定番ビジネスを否定するつもりはないし、あの定番品を買い替えたいという需要があることも否定しない。

だが、定番ばかりになると、やはり購買意欲は鈍るし、買いたいという人も増えはしないだろう。

 

ここからはマーチャンダイジングの話になるので、これもマサ佐藤氏にODM的丸投げをしたいところである。

定番品と新柄・新色、新デザインの比率をどのように設計するのか、ということが極めて重要なのではないかと感じる。

それは自社の客層や固定客数、彼らの嗜好を分析したうえで弾き出されるものだから、どのブランドに対しても絶対的に通用する公式があるわけではない。

アホみたいに新柄・新色を投入しすぎても売れ残りが増えるだけだろう。

しかし、逆に新色・新柄・新デザインを投入しなさすぎると、今の無印良品の衣料品部門のような有様となる。欲しい物は昨年秋冬に買ったから今年は要らないということになる。

 

あと、無印良品はベーシック品でユニクロと競合していることにもう少し危機感を持った方がよいのではないかと思う。もちろん危機感はあるのだろうが、それほど切実ではなさそうに感じる。

ユニクロと競合する商品がいくつもあって、その価格の多くがユニクロよりも少し高い。そしてピチピチしている。(笑)

となると、「よほどの無印良品ファン」以外はユニクロで買うことになる。ここにも無印良品の衣料品が苦戦に転じた理由の一つがあるのではないかと思う。

 

まあ、エライコンサルの人たちがワンサカと無印良品にもいらっしゃるだろうから、当然、お気付きのことだろうが。

 

 

そんな無印良品の化粧水をどうぞ~

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 comment
  • BOCONON より: 2020/10/22(木) 8:34 PM

    最近百貨店などではシャツを見ていると「どうぞ試着なさってみて下さい」と言われる事が多くなった。たぶん着てみないと分からないシャツが多くなったせいだと思う。分からないと言うのは4種類が混在していてどれか分からないということ。

    ・細身短丈で完全に裾を出して着る用
    ・それよりはいくらか緩め着丈長めで裾出しも裾入れもOKなもの
    ・昔通りの着丈長い裾入れて着るタイプ
    ・ビッグシルエットのもの

  • BOCONON より: 2020/10/22(木) 8:50 PM

    ユニクロやツープラだと「細身」「スリム」と表示があったりるのだが,
    それは例外だし,ユニクロでもビッグシルエットのものはたいてい表示がないか曖昧だ。成程これでは試着しないと選びようがない。
    無印良品について言えば,そんな表示は全くしていないし,試着をすすめられる事もない。それで僕は何度かMUJIのバンドカラーのシャツ買って,やっと「これはオレの着るようなものじゃないな…」と気づいたのだった。

    どうやら今の無印良品の営業方針は「飽くまでも誰が着ても似合う,エイジレスなフツーの服を揃えているように見せかけつつ実は若い人しか相手にない」といったものだ。「そんな事はない」と言っても実際南さんの仰言る通りなのだから仕方がない。
    こんな因循姑息なショウバイやってるようじゃ,そりゃ客も離れますわな。

    • とおりすがりのオッサン より: 2020/10/23(金) 1:55 PM

      「飽くまでも誰が着ても似合う,エイジレスなフツーの服を揃えているように見せかけつつ実は若い人しか相手にない」

      ああ、コレは正解かも?w
      私も、値下がりした無印のコートを通販で買ったら、袖丈とかは合ってるけど、肩周りとか窮屈で微妙でした。そして、その後さらに値下がりしてて微妙でしたw

  • 細野 より: 2020/10/23(金) 10:28 AM

    ファッション門外漢の私からすると、無印の服はユニクロと違って、看板商品がよくわからなくて、なにを買うべきなのかが分かりづらいですね。オーガニックなんとかが売りなのかなというのは分かるのですが。品質が良いかと言われるとユニクロとそんなに変わらない気がするのに、値段が高い。ユニクロだとベーシックだけでなくて、ちょっと変わったデザインも少しあって、それをベーシックと合わせる楽しみがあるけど、無印はベーシックだけしかないから見ていてもあまり面白くない。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/10/06(木) 3:10 PM

    上記コメを読むと「こらもう駄目だ」と思わざるえません

    「わけあって安い」「安い理由を説明する」

    これが無印の特徴でした

    しかし、今では「無印=割高」というイメージを持たれている
    それがコメントからはっきりしています

    ネーム代・ブランド代がないから安かったのが特徴だったのにね・・・

    んで割増価格分のブランド代は家作ったりイナバの物置みたいな
    掘ったて小屋を得るのに溶けていったんでしょうな・・・

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