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南充浩 オフィシャルブログ

消費行動が多様化して、洋服に集中的にお金を使う消費者が減っている

2020年9月3日 売り場探訪 2

当方は毎月、3~5枚くらいの服を買っている。

もちろん、ユニクロをはじめとする低価格ブランドの値下げ品ばかりである。その代わりに以前のように夏と冬のバーゲンで買い込むということはなくなった。

平日でも待っていれば値下がりするし、夏と冬のバーゲン開始時期よりも終わりかけの方がもう一段安くなっているからである。

自分が50歳になり、ジジイ化したからなのかもしれないが、昔ほど「服が欲しい」とは思わなくなった。

昔、若い頃は試してみたいデザインやブランドがたくさんあったが10年くらい前からそういう意欲が減退した。

 

アパレル業界は洋服の消費不振に長らく悩んでいるが、以前はその理由として「携帯電話の登場で可処分所得がそちらに取られた」ことを理由として挙げていた。まあ、当たっている部分もあるだろう。そのうちに「スマホ」に変わったが、実質的には同じである。

しかし、当方はスマホだけの問題ではないような気がしている。

 

例えば、おしゃれに見せたいと思った場合、洋服だけでは効果が薄い。髪型、スキンケア、体型、すべてが揃わないとあまり意味がない。

女性だとメイクやネイルも入るだろう。

そうなると、カネの使い道は圧倒的に分散せざるを得ない。

これに関連してか、最近ではスポーツジムに通っている業界人も多い。スポーツジムが近隣になければランニングやウォーキングしている人も多い。

そうなると、ジムの会費やランニング用品への出費などが発生する。洋服だけに費やすカネはさらに減る。

 

これに加えて、個々の趣味もある。当方ならガンダムのプラモだが、これが釣りの人もいるし、フットサルの人もいる。映画に費やす人もいるだろう。

だから、スマホが無くなったとしても、カネの使い道が多様化しているのは変わらなくて、洋服に一点集中する人は増えないだろうと思う。

上場企業の月次速報を見ていてもそう思う。特に新型コロナの非常事態宣言明けからはそういう消費行動が顕著に強まっていると感じる。

特に今年8月度月次速報のまとめ記事にはそれが端的に表れているのではないか。

 

ユニクロの8月度売上高は29.8%増 ニューノーマルの好不調企業が定着?

まとめ記事というのは調べる手間が省けて非常に助かるので読者からもまとめ記事への需要は高い。

 

ユニクロは、店舗とECの合計売上高が前年同月比29.8%増という大幅な伸び。一方で、ユナイテッドアローズの店舗とECの合計売上高は同14.7%減、アダストリアの売上高は同12.7%減だった。

 

とある。これに加えて

 ワークマンも同10.9%増と好調だったが、20%増以上が続いてきたこの間に比べるとやや抑えめ。ただし、昨年8月は猛暑の影響で一昨年同月比54.7%増だったうえでの数字だ。気温の高さを受けて、今年も空調ファン付きウエアや冷感素材のアイテムなどが売れた。客数は同15.5%増。

「無印良品」も直営店、卸、ECの合計売上高は10.5%増と2ケタ増。特にレトルトカレーがけん引する食品カテゴリーは同65.9%増という伸びだった。客数も同18.4%増となっており、来店頻度増が狙える食品がフックとなり、集客につながっている。また、掃除用具、キッチン用品などが好調な生活雑貨も同23.3%増。一方で衣服・雑貨は同9.4%減だった。

「ファッションセンターしまむら」の売上高は同4.5%減(7月21日~8月20日)と、6月の休業明け以来の昇り調子にややブレーキがかかった。客数も同4.7%減。水着や浴衣、お出かけ着の売り上げ減が要因。機能性素材の肌着や寝具などは好調だった。

 

とのことで、6月・7月と好調に転じたしまむらは、ブレーキがかかった。

 

今回の8月度の傾向は、アダストリアとユナイテッドアローズの苦戦以外は、コロナ前とそう変わらない推移だといえる。

「洋服だけしか売っていない」店は売れにくく、それ以外の商材が多い店は好調・堅調で、この記事では触れられていない西松屋がコロナショックでも売上高が減少しないことはそれを表していると思う。

無印良品の好調の要因は、記事中で触れられているように食品や掃除用具、キッチン用品で洋服の売上高は9・4%減である。

西松屋は明らかに子供服だけではなく、子供用品や衛生用品で売上高が伸びている。

 

しまむらは地方路面店・郊外路面店の多さが非常事態宣言明けの時期には集客要素になったが、基本的には「洋服しか売っていない」店だから、コロナ以前は苦戦していたし、今秋以降も今8月をきっかけにその当時の水準に戻るのではないかと個人的には見ている。

 

「じゃあ洋服は要らないのか?」と問われると、そんなことはない。どうせ全裸では人間は暮らせないのだから、洋服は着用せざるを得ない。

じゃあ洋服をどこで買っているのかというと、圧倒的にユニクロである。ここにジーユーを加えても良いだろう。

ユニクロの国内売上高とジーユーの売上高を合計すると1兆1000億円強になる。多くの人は「洋服はユニクロとジーユーで十分」と考えているのではないかと思う。

ファッション好きの業界人は認めたくないかもしれないが、8月の月次速報を見ると、「洋服だけしか売っていない」店は軒並み前年実績を下回っているのに対して、「洋服しか売っていない」ユニクロだけが伸びている。ということは、多くの人が「洋服はユニクロで十分」「洋服はユニクロで我慢できる」と考えているのではないだろうか。

 

洋服はユニクロ・ジーユーで十分、それ以外の生活雑貨や生活用品や趣味品にもある程度のお金を使う

 

というのが今のマスの消費行動ではないかと思う。ある意味でバランスのとれた消費者が増えているといえる。

もちろん、人間は飽きる動物だから、ユニクロとジーユーだけでは飽きてしまう。たまには他のブランドも買うだろうが、それは文字通りに「たまに」で十分なのだろうと思う。

当方のように感度低い・イシキヒクイ系の人は特にそうだろうと自分を顧みても思う。

 

となると、他のアパレル企業やブランドはどうするべきかというのが見えやすくなるのではないか。

例えば、年商規模数億円とか10億円くらいで食えるような収益体制にするとか、洋服以外の生活用品や食品、コスメを強化するとか、いろいろな切り口が考えられる。

ただし、何をやるにしてもそれなりに集客や販促の努力は必要になり、ガチャマン時代や高度経済成長期のように、作ったら売れる・並べたら売れるというような社会はもう二度と戻ってこないということを強く認識する必要がある。

 

 

Amazonへの出品を開始した無印良品のタオルをどうぞ~

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 comment
  • 嫌いじゃない より: 2020/09/05(土) 10:11 AM

    感度低い・イシキヒクイ系の人のブログ

  • 3人兄弟ママ より: 2020/09/05(土) 10:06 PM

    ユニクロもヘビーユーザーで毎日金曜日の広告チェックしてます。子ども服はほぼユニクロですが、なんせカブるんですよね〜。とくに子ども服なんてかぶりまくりです。最近はそれが嫌であえてユニクロでかわなくなりました。少し高くてもかぶらず、デザインがかわいいほうがいいです〜

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