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南充浩 オフィシャルブログ

大量生産を否定しながら途上国の経済を潤わせることはできない

2020年7月15日 製造加工業 1

前回、辛気臭いブログを書いたところ、もうそろそろ危ないと言われていた父が今朝亡くなった。

明日が通夜、明後日告別式をする予定で、こじんまりと親戚だけで行う。

そんなわけで明日からしばらくブログはお休みさせていただく。親が亡くなった種々の手続きを行うのがなにぶん初めてなもので、どれくらいの期間かかるのか見当もつかないので、再開時期は未定ということになる。

 

さて、新型コロナショックによって、全世界的に3月~6月の商業が止まってしまったわけだが、春物の洋服の消費もかなり低調になってしまった。

我が国の洋服の売れ行きは、上場会社の6月月次速報を見ていると、比較的好調なところが多いがそれでも4月・5月にストップした春物の在庫を各社がたんまりと持っている。

そのため、秋冬物の仕入れや製造をだいぶと減らそうという動きになっている。

 

これによって過剰在庫問題がクローズアップされてきたアパレル業界の在庫が適正化するのではないかという期待も持たれているが、その一方で、衣料品の縫製を主力産業としてきた発展途上国の経済が破綻するという懸念も生まれている。

韓中の衣類企業がコロナ廃業…「東南アジアの工場で数十万人が解雇」

https://news.yahoo.co.jp/articles/8b20e6b332aba82dce795fe5345588a2086df6dc

 

代表的な国がバングラデシュ、カンボジア、ミャンマーなどだ。ウォールストリートジャーナル(WSJ)によると、中国・韓国企業はこれらの国に工場を置いてグローバル衣類企業に服を供給する。衣類工場が集まっているのは何よりも人件費が安いからだ。

 

とある。

すでに4月ごろにはバングラデシュの縫製工場の多くが危機的状況にあると報じられていたが、カンボジアやミャンマーなどの東南アジア諸国も同様の状況にある。

この記事で特徴的なのは、それらの国の縫製工場は中国・韓国企業が経営していることが多いと明記されている点である。

もちろん、地場の資本による工場もあるが、人件費が高騰した韓国や中国から、大量生産向け工場はどんどんと離脱しており、東南アジアに拠点を移してきた。そして、その多くは中国・韓国資本が経営している。このことは衣料品業界ではこれまで広く知られてきた。

他方で、中国や韓国の縫製工員たちは商売替えをしているわけだが、それはだれの責任でもなく、自国の資本家が自国を捨てて東南アジアに進出した結果である。

 

発展途上国は通常、重化学工業や情報産業がなく、繊維や食品などの軽工業によって経済が成り立っている。

 

このため衣類産業はこれらの国の主軸産業になった。WSJは「アジアの開発途上国は衣類産業で数百万人を雇用し、貧困からの脱出を助けた」と報じた。 バングラデシュの場合、輸出による利益の85%が衣類産業で生じる。衣類会社で働く人は400万人にのぼる。カンボジアは5世帯のうち1世帯が衣類産業に従事している。カンボジアの輸出の75%は履き物や旅行用かばんなどだ。ミャンマーでは昨年だけでも衣類工場120カ所が新しく建設された。これら工場で年67億ドル規模の衣類・履き物・かばんを生産して輸出する。

 

という状況である。

しかし、新型コロナによって、我が国だけではなく世界中で商業がストップしてしまったため、生産地もダメージを受けるのは当たり前である。

 

これは生産地に影響を及ぼした。カンボジアだけで衣類工場250カ所の稼働が停止した。WSJは「数十万人の衣類労働者が停職または解雇となり、大半が女性だった」と伝えた。

 

この状況に対して、我が国のSNSでも「発展途上国の経済を守れ」とか「〇〇国の雇用を守れ」というような意見を目にする機会が増えたが、この主張をする人の多くは、一方で「大量生産・大量販売反対」「グローバルSPA反対」という立場をとる。

しかし、この両方の主張は矛盾しかない。

グローバルSPAの大量生産システムの発達によって、これらの国の繊維産業は成り立っている。そして、コロナでもエシカルでも理由は何でも構わないが、その大量生産システムが止まれば、生産地もダメージを受けるのは極めて当然であり何の不思議もない。

 

そして大量生産廃止と、発展途上国の工場を潤わせることは両立できない。逆にその両方の主張を声高に叫ぶ人は一体どのような思考方法をしているのか不思議でならない。

 

数少ない友人の一人であるマサ佐藤氏も先日このようなブログを書いている。

 

大量生産と過剰供給は別物

 

この問題は、欧米のファストファッション企業による、代金未払い問題や生産縮小で、工員への賃金が支払われないことが問題の発端です。ですが、こういった工員の生活を支えているのは、紛れもなく大量生産を実践できる組織です。

しかしながら、大量生産を批判する一方で、同時にバングラデシュの雇用を守れ!!と同じメディアが語ることに、私は違和感を感じてなりませんし、寧ろ軽蔑しています。

 

とあり、当方も「一体どないしたいねん?」と疑問しか感じない。

 

もちろん理想を目指すことは重要だが、その理想を全部一挙に実現することは不可能である。

じゃあ、どっちを取るんだという話で、ガンダムの主人公みたいに「それでも、ぼくは・・・・」なんていう主張は現実世界ではまったく役に立たない。

どちらを優先してまず解決するのか、順序立てて考えて実行するほかない。一石二鳥みたいなことは現実的ではない。

 

 

そんなわけで、しばらくブログをお休みします。ごきげんよう。

 

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 comment
  • BOCONON より: 2020/07/20(月) 6:15 AM

    御尊父の冥福をお祈りいたします。

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