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南充浩 オフィシャルブログ

レナウンが解体されてブランドごとに売却される可能性は低くないと思う

2020年7月1日 経営破綻 3

経営破綻したレナウンだが、6月末をメドにしてスポンサーを探していた。

恐らくそのうちに発表があるのだろうと思うが、個人的にはレナウンという会社を丸ごと支援したいというスポンサーは現れないだろうと思う。

6月19日にこんな記事が掲載された。

 

レナウン、解体の可能性も スポンサー決定へ正念場

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020061801217&g=eco

 

同社は月末までに決定したい考えだが、会社全体の引き受けを前提とするスポンサーの選定作業は難航している。100年超の歴史を持つレナウンは、ブランドごとの売却により、解体を迫られる可能性もある。

 

とのことだが、当方はレナウンがブランドごとに切り売りされる可能性は極めて高いと見ている。

理由は、さまざまあるが、思いつくままに挙げてみよう。

1つには強力なブランドがほとんどない、数少ないことが挙げられるだろう。

当方からすると、レナウンが現在所有するブランドでそれなりに強力だと思うのは

・アクアスキュータム

・ダーバン

・アーノルドパーマー

くらいである。

あとのブランドは多分、どうでもいい。

 

ヒロココシノのメンズもあるが、ヒロココシノは大御所デザイナーであるコシノヒロコさん自身のイメージ性が強いため、別にレナウンでなくてもどうにでもできるだろう。

シンプルライフ、インターメッツォ、エンスウィートあたりはブランド力が弱すぎるし、改めて自社に加えたいというアパレル企業はほとんどないだろう。

今更、百貨店のオッサンカジュアル平場とオバチャンカジュアル平場に参入したい、シェアを伸ばしたいと思っているアパレル企業はないだろうし、あったとしてもごく少数だろう。

 

次に思い浮かぶのは新型コロナショックによる各社の減収減益である。

これが昨年末までならどこぞの大手商社とか超大手異業種なんかが名乗り出る可能性もあったのではないかと思うが、3月~5月の新型コロナショックによって衣料品業界はもとより、異業種も軒並み減収減益となり企業体力が弱っている。そんな状況下でレナウンのようなそこそこの規模がある企業を丸ごと支援したいという企業が現れる可能性は極めて低い。

 

支援する側との交渉をスムーズに進めるため、レナウンは18日、三井住友銀行から20億円の融資枠の設定を受けたと発表した。手元の運転資金は確保できたとみられる。

 

とあるが20億円程度ではレナウンの規模を考えると焼け石に水でしかないため、早期に身の振り方を決める必要がある。

 

解体されないためのウルトラCがあるとするなら、先に挙げた「まだマシな3ブランド」を売る条件として、レナウン丸ごとを無理やり押し込むというやり方である。

まあ、成功する可能性はかなり低いが、そういう交渉の仕方はある。

 

そういえば某大手総合商社が傘下の中規模アパレルを、ファンドに売却するときにこの手法を使ったといわれる。本当は3つくらいのブランドだけを引き取りたかったが、全部引き取ってくれないと売らないという交渉をしたといわれている。結果的にファンドがその中規模アパレルをすべて買い取って今に至っているが、買い取られてからの声はほとんど聞こえてこない。最近の様子はどうなのだろうか。

 

それにしてもレナウンの破綻以降、繊維・衣料品業界から聞こえてくる「あのレナウンが」という嘆きはイマイチ、イラっとする。

だいたいにして嘆いている業界人の多くは中高年層である。いや、中年ですらない。高齢層である。

もちろん、感慨を持つことは自由だし、己が若かったころに思いをはせるのも自由だ。そんなもんは勝手にやっていればいい。

だが、レナウンの今後を予想するのはまた別の話である。

そんな何十年も前の感慨を引きずって、甘めに予想してみたところで、現実的には何の役にも立たない。

 

以前にも書いた通り、レナウンは50歳の当方のようなジジイからしてもまったく馴染みのないアパレルブランドである。その商品を買ったことさえほとんどないレベルである。

また、これも以前に書いたが、63歳の業界の先輩ですら、ここ10年くらいはレナウンの服を買っていないそうである。「ダントン」の服は買っておられたが。(笑)

となると、現在、レナウンの服を買っている層というのは、最低でも65歳以上、下手をすると70代・80代に限られるということになる。

10代~60代前半にとってレナウンは無くても困らない会社ということになる。

 

これはどういうことかというと現在の70代・80代が全員死んでしまえばレナウンの顧客はほぼいなくなるということである。そして、どんなに元気でも、どんなに丈夫でも、どんなに立派でも人はみんな等しく死ぬ。今の70代・80代も20年後にはほとんど死んでしまっている。

そして、今の50代が20年後「ワシも70代になったからそろそろレナウンのブランドを着ようか」ということには絶対にならない。

これは他のシニアブランド、シルバーブランドにも同様のことがいえる。

下の世代のファンを作っておかないと、今の世代が死に絶えたらブランドは終焉を迎える。

 

20年後には顧客が激減するだろうレナウンを、このコロナショックのご時世で、丸ごと支援しようという企業はなかなか現れないだろう。

 

あと、レナウンという会社が奇妙なのは、展開しているブランド名より企業名の方が知られているところである。いかに製品が注目されていないかということではないだろうか。

レナウンの服を買ったこともない若者でさえ、レナウンという企業名は「聞いたことがある」という。しかし「ブランドは全く知らない」という。知っていてもせいぜいが、アクアスキュータム、アーノルドパーマーくらいで、そこにスーツ好きな層がダーバンを付け加えるくらいである。

 

まあ、そんなわけで発表を待ちたいと思う。

当方としては、いくつかの有力ブランドが切り売りされてあとは廃止という未来が待っていると見ているが、果たしてどうなることやら。

 

 

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 comment
  • gonwoo kim より: 2020/07/01(水) 10:28 AM

    シンプルライフ、インターメッツォ、エンスウィートあたりは
    美濃屋さん 関心ないのかしら?

  • とおりすがりのオッサン より: 2020/07/01(水) 11:31 AM

    この前、完全に潰れちゃったラブリークイーンさんトコは最初にRVH社に買収される時は逆に、同族企業の感動倉庫って物流会社と一緒じゃないと買い取らないと言われて、感動倉庫は弟さんが社長をやってて業績悪くなかったのに買収されちゃったそうっす。で、その後は弟さん含めた親族が役員をやってたけど、数年で追い出されたとのこと。今は、経営コンサルタントやってる元社長の弟さんがブログで、そう書いてましたw
    ラブリークイーンは潰れる前にRVHが手放してますが、感動倉庫の方はもしかしたらRVHの傘下に残ってるのかも?

  • ふいみか より: 2020/07/02(木) 12:10 AM

    いち消費者なのでセール価格を期待して、レナウンのオンラインショップを見てみましたが、思い切った値引きもありません。商品の詳細もわかりにくいサイトでした。それで結局買いませんでした。
    素人ですが、昔ながらの手入れが大変そうで、流行が過ぎて袖を通す機会がなくなってもくたびれない素材のものが売られている感じでした。結果、値段が中途半端に高い印象です。30年前なら買っていたかもしれないです。

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