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南充浩 オフィシャルブログ

洋服のネット通販が売上高を拡大しにくい理由

2020年6月12日 ネット通販 2

インターネット通販は使い慣れると便利である。

当方はガンプラの大幅値引き品を主にネット通販で買う。コロナショックが始まる前まで、Amazonの割引率は近所のジョーシンよりも大きかった。

例えば、ガンダムでもザクでもイフリートでもケンプファーでも何でも構わないのだが、物自体についてははっきりくっきり理解している。おまけにプラモデルだから完成品はどこにも売っていないからジョーシンで買おうがAmazonで買おうが同じである。

一昨年、洗濯機が急に壊れたが、その日仕事に行かねばならなかったので、ネット通販で買った。

メーカー名とスペックが分かればそれで十分である。

実物と画像が多少違っていても全然気にならない。画像のボタンは丸いのに、実物のボタンは四角であっても別にまったく気にもならない。

 

しかし、洋服はそういうわけにはいかない。

洋服が好きな人は特にそうではないかと思う。

洋服も「ガンプラ並みにネットで買おうが店で買おうが同じ」と思っているのはIT系の人らだけだろう。

だからIT業界出身者によるアパレル事業はなかなか成功しないのではないかと思う。

 

とはいえ、当方も最近はネット通販で服を買うようになった。アダストリアのドットエスティは毎月買っているかもしれない。

ユニクロやジーユーもネット通販を使うこともあるが、長らくサイトを見ていると、ユニクロもジーユーもどちらかというとネット通販の方が在庫が無くなりやすい。多分、ネット通販用の在庫の方が量が少ないのだろう。必然的に店舗の在庫検索をしてみると、店舗には残っている場合が多いため、店舗で購入するケースが増える。

なぜドットエスティの使用頻度が高くなるかというと、まず、実店舗を探すのがめんどくさい。ユニクロほどの店舗数がない。

そして、買い物をすればだいたい200ポイント前後貯まるので、次回はそれを使って200円引きで買うことができる。おまけにちょくちょくと500円割引クーポンも配布される。このシステムはユニクロ通販にはない。

おまけにユニクロは、実店舗で1000円以上買うと訳の分からないサイコロを振るスマホゲームができる。100円引き・500円引きの通販専用割引クーポンが当たることがあるが、当たる確率は低い。さらにいえば、ネットで何千円買おうがこのサイコロゲームができなくて、実店舗購入に限られている。

なんとも不親切な設計である。だから、ユニクロのネット通販を使うのはよほどの場合しかない。

 

 

そんなドットエスティで先日、ドライタッチシャツカーデという商品を買った。定価4290円が1881円に値下がりしていてそこからさらに引かれて1700円台か1600円台で購入した。

画像を見るとノーカラーの布帛カーデなので、ミリタリージャケットのような厚手生地を想像した。素材組成はナイロン63%・綿37%だからガッシリした厚手か中肉の布帛生地ではないかと想像したわけだが、送られてきた実物は違った。

 

 

 

 

めちゃくちゃ薄い生地だった。ちょっと驚いたが、ディスりたいわけではない。

実はこの商品めちゃくちゃ使い勝手がよかった。

ドライタッチと謳われているように、汗ばんでも肌触りがサラリとしていて、濡れてもすぐに乾く。

生地が薄いから通気性も良い。ちょうど5月の暑くなる時期には非常に使いやすかった。

予想を裏切られたが、機能性と着心地には満足している。

しかし、ネット通販で服を買うとこういうことが多い。生地が思っていたより薄い・分厚い・硬い・柔らかい、というギャップである。

いくらネット技術が進もうと、触感や風合いまでを確かめるすべは今のところ存在しない。だから実店舗で一度商品を見て生地を触ってから買いたいという欲求は服に対しては強い。ガンプラや洗濯機にはそれはない。

IT系やウェブ大好き派、イシキタカイ系などが期待するほどには洋服のネット通販が成長できない理由はこの部分にあるのではないかと思う。

 

さて、前置きが長くなったが先日こんなアンケート結果が掲載された。

アパレルの消費者行動/20代「EC購入前店舗で確認したい」7割

ネットネイティブ世代だのZ世代だのと言われている20代ですら、ECで服を購入する前には実店舗で実物を確認したいと考えている人が7割にも上るというアンケート調査結果だ。

どうでもよい話だが、当方はこの〇〇世代というセグメントは嫌いである。なんやねん?Zって、ドラゴンボールZか。

 

で、もう一つ面白いのがSNSに対する消費者と、アパレルのSNS担当者との意識の差である。

「SNS」施策に注力する企業に対し、消費者の過半数は「リアル店舗」が認知経路としている。

SNS担当者は自分の仕事なので、それなりに誇りを持っているし、自分がやっていることに効果があると必ず思っている。また世間は完全にSNSを一つの有力なツールとみなしている。にもかかわらず、消費者の半数以上は認知は実店舗で得ているのである。

企業のマーケティング担当者の過半数は、「既存顧客の消費者認知に効果的な施策」について、「SNSへの露出」52.6%)を第一に挙げている。

一方、消費者が「商品を認知するきっかけ」の第1位は「店頭・店内の展示」(53.8%)だった。

 

SNSでの炎上がニュースになるくらいだから、それなりの効果があると思ってしまいがちだが、SNSをやっていない人なんて身の周りにたくさんいる。また炎上にしたって新聞やテレビ、週刊誌が報道しなければそういう騒動があったことすら知られない場合が多い。SNSなんて所詮はその程度のツールに過ぎない。

今、炎上しているような話題も半年もすればほとんど忘れ去られる。ちなみに半年前に炎上していた事象を覚えている人がどれほど今いるだろうか。

担当者がうぬぼれるほどSNSを消費者は見ていないということである。

 

一方、アパレル業界のアナログ派は過剰に実店舗、リアルを信奉しすぎるきらいがいまだにある。衣料品は実物を見たり触ったり試着したりすることが重視されやすい商品ではあるが、アンケート調査結果が示すように消費者の半数弱はネットを見て情報を受け取っているのである。そちらでの情報発信を軽視している場合ではない。

まあ、足して2で割るくらいの心情がちょうど良いのではないかと思う。

 

そして、先ほど書いたように、洋服を構成する生地の触感や厚みはウェブの画像や動画では伝えられない。文章で説明するという方法もあるが、文章を作る方にも相当の知識と技術が必要だし、読む方にもそれなりの知識が要求されるから、それも難しい。

だから

EC購入前の消費者行動では、「店頭の商品を必ず確認」「店頭の商品を確認しないと不安」という消費者が全体の約7割を占めた。

 

そして、20代ですら

 

世代別では、20代消費者の34%は、「店頭の商品を必ず確認」し、40%は「店頭で確認しないと不安」と考えていた。

 

という結果になった。

 

そして、生地の風合いだけでなく、服にはそれを着たときに「似合っているかどうか」という最大の問題点がある。当方も買ってみたのは良いけれど、試着してみると全然似合っていなかったという服がいくつもある。実店舗で試着してみてやっぱり似合っているかどうかは確かめたい。似合ってない服なんて買う意味もないし、自宅に保管しておく意味もない。

だから、洋服においてはすべてがネット通販に変わるというのは今のところ考えられない。ネット通販比率が極大まで高まってもせいぜい50%までだろう。

そして、SNS担当者と消費者の認識の差はまだまだ続く。このアンケート記事の後半もアップされているのでそちらもどうぞ。

https://www.dnp.co.jp/biz/st/digital-marketing/download/detail/document005b.html

 

このアンケート結果をもとにアパレルのウェブ担当者、SNS担当者、はてはそれを管轄する役員は考え直してみてはどうか。

ウェブやSNSを過信しすぎても軽視しすぎてもロクなことにはならない。

 

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/06/12(金) 8:51 AM

    ユニクロとかの商品写真ってシワひとつ無いCGみたいに綺麗に撮った写真だから、あんま質感分からなかったりしますね。かえって素人がメルカリに出してる写真の方が、質感分かったりするくらいでw
    ユニクロとかは無理だろうけど、大手セレクトショップなら、主要な生地は見本をブックにして無料で配布とかできないもんですかね?質感もそうですが、色も写真と違うとか良くあることだし分かりやすくて良いと思うんですが、コストで無理かな?あと、顧客情報収集にも良いんじゃないかなぁ?

  • BOCONON より: 2020/06/12(金) 4:25 PM

    僕はネット通販やらないので「着てみなきゃサイズ感なんてわからないだろうに」「実物見なきゃ色も質感も本当のところはわかるまい」などと思ってしまいます。
    「まして自分の持っている服に合うか否かなんて合わせてもみずにどうやって…」などと。
    某掲示板にそう書いたら「ダメなら返せばいい」なんて言われてしまった。
    皆さんそんな面倒くさい事を普通にやってんのかね・・・とこれは感想と言うよりも質問したい気がする。

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