MENU

南充浩 オフィシャルブログ

クラウドファンディングは無策では絶対に成功しない

2020年6月5日 トレンド 2

アパレルブランドの販路の一つとしてすっかり定着したのがクラウドファンディングである。数年前ならまだ物珍しさがあったが、今ではすっかりありふれた売り方の一つとなっているといえる。

 

当然、毎日毎日、衣料品やファッションだけですさまじい数のクラウドファンディングが立ち上がっており、成功するのは一握り、失敗するものは数知れずという状態にある。キャンプファイヤーやマクアケが著名だが、その中でもざっとみただけで一体どれほどの衣料品・ファッションのクラウドファンディングがあることか。このほかにもクラウドファンディングを手掛けるサイトはたくさんある。

 

そういえば、繊維業界では著名なはずの某社がクラファンを立ち上げたことがあったが、なかなか支援が集まらなかったので期間を延長したがそれでも3~4人くらいしか支援を得られずに失敗に終わったことがある。たしか1年ほど前のことだ。

 

昔なら、クラファンを立ち上げたらほぼ成功していたが、これだけクラファンが溢れてしまえば、単に立ち上げただけでは絶対に成功しない。それなりの工夫が必要になる。

 

ちょっと汚い話をすると、草創期のクラファンなら単に立ち上げただけで成功する可能性が高かった。しかし、現在では単に立ち上げただけでは埋没してしまい、人の目に触れることさえ難しい。そうなると、工夫を凝らす必要があるが、工夫を凝らしていろいろと仕掛ければ費用がかかる。ブランドや企業、個人が資金集めのために立ち上げるクラファンがいつの間にか、クラファンで成功するために資金投入が必要になるという皮肉な状態となっている。

だから、よほど著名なブランドや企業、個人が超画期的な商品やサービスを立ち上げたのなら、資金投入なしでクラファンを達成することが可能だろうが、無名ブランドや企業、個人がクラファンを立ち上げた場合、無策・無投資では到底達成にはこぎつけられない。これが現実である。知っている範囲でいうと、成功したブランドや企業は、必ず相応の先行投資をしている。例えば、使用する画像、動画づくり、コピーライティング、有名人に紹介文を書いてもらうなどなど、そういう仕込みをやっており、実際にその仕込みには相応の費用が発生している。

 

 

今年の初めに某商社から「当社初のオリジナル衣料のクラファンを立ち上げたい」と相談を受けたことがある。実は当方が相談を受けた際、ほとんど組み立てが終わっており、もうあと何週間かで公開されるというタイミングだった。しかし、残念ながら当方の目から見れば、画像のセンスはイマイチだし、動画はない、見出しのコピーライティングも素人にはわかりにくいなどなどという状態だったので、成功するのはちょっと厳しいだろうと思った。

 

見出しがダメだったのはどういう点かというと、いわゆる「機能加工」が施された機能性衣料だったわけだが、見出しが「〇〇加工による〇〇機能」みたいな感じだった。

そりゃ、繊維の製造系の人なら何となくその加工の凄さが分かるだろうが、一般人がナンタラ加工に反応するはずがない。「おお、あの〇〇加工か。すごいな。これはぜひともクラファンで予約せねば」なんていう一般消費者はいない。それは繊維業界人か元業界人かである。

まあ、この手の失敗を繊維の製造加工系の人はよくやらかしてしまう。

 

さて、先日、5月末ごろ、

 

コール&レスポンス

https://callandresponse2006.com/

 

という福岡拠点の衣料品ショップの創業者という方から「うちの若い衆たちがクラファンを立ち上げたんですが、ちょっとまずい感じなので見てみてダメ出ししてくださいよ」という謎の依頼をいただいた。

サイトを覗いてみると、九州に2店舗、大阪のなんばパークスに1店舗ある。大阪にあるのに知らんかった。まだまだ世の中には知らないことがたくさんある。

 

 

 

で、クラファンを覗いてみた。ここである。

https://camp-fire.jp/profile/callandresponse/projects

最初にページを開いて見て驚いた。その数の多さである。現在進行中の案件がなんと10個もある。
ハッキリ言って、数が多すぎる。これが最大にダメな点である。

それでも「残り16日」の案件は2つしかない。問題は「残り21日」の案件が8つもあることである。

クラファンの案件は1つ、多くても2つにとどめるべきである。世の中には「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」という考え方もあるが、クラファンの場合、数を撃っても絶対に当たらない。

なぜなら、クラファンで支援してくれる人というのは、多くの場合、その企業やブランドの「強い顧客」で、そういう「強い顧客」というのは、何千人も何万人もいない。そうすると、8つも案件があった場合、数少ない「強い顧客」の支援がバラけてしまう。強い顧客の全員に無限の収入があるなら話は別だが、そんな金持ちは数多く存在しない。強い顧客もほぼ全員が普通の平均的な収入だと考えるべきである。となると、8つのクラファンを同時に買い支えることは収入的に不可能である。

 

クラファンの成功で一躍有名になったオールユアーズでさえ、クラファンはその都度1個ずつしか立ち上げていない。なぜなら、その理屈が分かっているからだろうと当方は思う。

 

あと、今回のクラファンに出されている開発商品も微妙である。決して物が悪いとは思わない。めちゃつまらない物だとも思わない。しかし、クラファンにしたとき、そこまで一般消費者が欲しがるような商材だろうかという疑問がある。

ラインナップを見てみよう。

「サマーニット」「お父さん向けジャケット」「軽量・速乾・ストレッチパーカ」「軽量速乾パンツ」「涼しい素材でできた美シルエットのストレッチジーンズ」などなどである。

 

それぞれにそれなりに工夫が凝らされた商品なのだろうとは思う。しかし、例えば、サマーニットってそんなに需要があるだろうか?日本の夏、とくに真夏だと、いくら素材を工夫しようが機能加工を施そうが、暑くて着づらい。メンズアパレル業界のイタリアーンかぶれは概してサマーニットが好きだが、はっきり言って日本の真夏には暑すぎる。当方も以前にイキってサマーニットを買ってみたが、真夏は暑すぎて着用不能である。

一昨年・昨年と王者ユニクロも発売していたが、売れ行きは悪かったようで、早い時期から990円に値下げされて投げ売られていた。要するにそれほど需要は少ないということである。

 

 

 

また、お父さん向けジャケットも、ユニクロの感動ジャケットでええやんけと言われてしまうのではないかと思う。

 

軽量・速乾・ストレッチパーカも暑くなる時期に必要だろうかと言われそうだし、軽量速乾パンツもオールユアーズの軽量速乾パンツがあるし・・・。

 

という具合である。

画像を見ると決して粗悪な商品だとは思わないが、クラファンで注目を集めるためには、斬新さとか驚きとかが足りないような気がしてならない。

しかし、どうして、「ダメ出しをする」なんていう依頼を受けたかと言うと、このショップのスタッフたちがクラファンを乱立させたのは、4月・5月のコロナ休業が理由だという。コロナ休業で「我々も何とか店に貢献したい」という思いで、考えを整理せずに開始したそうなのである。

仕事は仕事として割り切り、余暇には仕事を持ち込まない、しかも労働時間はできるだけ短くしたいという人が多いご時世になかなか珍しい熱心なスタッフさんたちだとちょっと感心したからである。

まあ、そんなわけで次回からの参考になればと思い、いろいろと指摘してみたがどうだろうか。

 

 

Amazonも6月6日から夏先取りセール開始するってよ

この記事をSNSでシェア
 comment
  • 細野 より: 2020/06/05(金) 9:48 AM

    HP見て私が一番惹かれたのは、汚れない高撥水の白ズボンです。私も白ズボンを持っているけど、汚れて後でお手入れをする事を考えると面倒くさくて履くのをためらってしまいます。上に挙げられた商材よりも、高撥水で汚れない服のシリーズの方が個人的には欲しいと思いました。

  • とおりすがりのオッサン より: 2020/06/05(金) 1:10 PM

    私も、コール&レスポンスさんとこのクラファンで惹かれたのは白いズボンっすね。まぁ、自分では白ズボンは履かないから買わないですけどね。でも、汚れないズボンは気になります。食べ物こぼしやすいドジっ子なのでw

    で、服飾ド素人だけどカメラ好きのおじさんが、コール&レスポンスさんのクラファンの写真について、偉そうにダメ出ししてみると

    ・室内で撮った写真は色温度の違う照明が何種類かあるようで(白熱電球と蛍光灯など)、服や背景の色が場所によって変わっていて見苦しい

    ・カメラを構えている位置が恐らく突っ立ったままで、ズボン等は上から見下ろして撮影しているため歪みが大きく短足に見えて見苦しい

    ・背景をシンプルにしたかったのだろうが、2枚の布を合わせて背景を作っているため、合わせ目が商品の後に来ていて見苦しい。また、背景にシワが寄っているのも見苦しい。

    1番目については、照明を一種類だけにすれば解決しますが、お店でも商品撮影とかするなら、写真用の演色性の高い照明を用意しちゃったほうが良いでしょう。LED照明とかでも今は安くて良いのがあります。それだけで、色が綺麗に写ります。

    二番目については、人とかを撮るときはカメラとレンズの軸は地面と水平垂直が基本です。ボーっと撮ると上から見下ろした感じになってブサイクに写ります。全身を撮るなら相手のヘソあたりまでカメラを下げて、地面と平行かちょっと上を向くくらいにカメラを構えましょう。上半身だけを撮るときも、カメラのレンズが地面と水平になる感じで撮ったほうが商品写真としては良くなるはずです。ズボンだけを撮るなら、ズボンの膝とか真ん中辺りまでカメラを下げましょう。すべて、基本は相手に対してカメラ、レンズが水平垂直です。

    三番目については、布で背景を作るのは簡単ですが、きれいに写したいなら大きな紙の背景のほうが素人には撮影しやすいです。ま、汚れたり破れたら使い捨てになっちゃいますが。Amazonとかでも売ってるので、そういうの使ったほうが良いと思います。あとは、無理に無背景にせず、ショップ内で撮って商品だけフォトショップ等で切り抜くとか、もしくは晴れた野外で撮っちゃったほうが簡単かもしれません。

    ちなみに、太陽光が一番モノの色が正確に写ります。

    と、潰れかけの金属加工工場勤務のダメおやじが上から目線ですみませんw
    オイラは買わないですけど、クラファン頑張ってください。

細野 へ返信する コメントをキャンセル

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ