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南充浩 オフィシャルブログ

老舗大手アパレルと大手広告代理店

2020年4月1日 ネット通販 1

いまだに複数の老舗大手アパレルメーカーと付き合いがある。

付き合いがあると言っても、おえらい先生方のように高額な仕事を受けているわけではない。せいぜい、幹部と雑談するか、取材させてもらう程度である。報酬はサンプル製品を1つか2ついただく程度である(笑)。

 

ほとんどの大手メーカーとは業界新聞時代から断続的に付き合っていただいているのだが、ほとんどの会社は広告がド下手クソであり、今も変わっていないと感じる。

営業職や販売職の方々には縁遠く、製造加工業の方にはもっと縁遠いかもしれないが、今回はアパレルメーカーの広告ド下手クソについて考えてみたい。

 

広告というのは、「広く告げる」という意味があるので、自社製品や自社そのもの、自ブランドについて、多くの人に「告げる」わけである。

インターネットの普及以前だと、この「告げる」方法は限られていた。自社で発信するという手段はほとんど取れなかったと考えて差し支えない。

新聞・雑誌への広告掲載にしろ、テレビコマーシャルにしろ、新聞の折り込みチラシにしろ、マスコミに頼らざるを得なかった。

で、広報やPRなどの部門以外でアパレル企業に勤務されている方にとって、マスコミというのはなかなか縁遠い存在だということは、体感的にご理解いただけるのではないかと思う。(もちろんアパレル以外の企業の方も縁遠いと感じておられるだろう)

 

で、そうなると、どうやってマスコミに広告出稿を依頼すれば良いのかわからないということになる。

その昔なら「電話帳で調べたらええやんけ」という話だが、縁遠いところに電話をするのはなかなか気が引けて億劫なものである。

当方なんて、老父の手続きで役所や病院関係に電話するのは、めんどくさくて仕方がなかった。

いきなりマスコミに連絡することは、やってやれないことはないが、できたら誰かがサポートしてほしい。

 

まあ、そんな気持ちになる。

 

そういう人たちのためにマスコミとの仲立ちをする広告代理店というものが生まれた。(かなり簡単にいうと)

いわゆる広告の仲介業者である。

 

そのうちに仲介だけするのではなく、コピーライトしたり、広告物そのものの製作まで手掛けたりするようになって、80年代にはスター職種になった。

基本的にはテレビも雑誌も新聞も、その広告を見たかどうかまでは実際のところ測定できない。

新聞で発行何百万部ありますといったところで、何百万人がその日の紙面を隅々まで読んでいるとは限らないし、掲載されている広告をすべて念入りに見ているとも限らない。

雑誌とて同じである。

テレビには視聴率というものがあるが、家事をやりながらテレビをつけっぱなしという場合も珍しくないからテレビコマーシャルが本当に観られているとは限らない。

 

すべて「発行部数が〇〇万部ある」「視聴率が〇〇%ある」から「これだけの人が見ている(はずだ)」という効果測定でしかない。

 

当方もアパレルメーカーの広報として勤務したこともあるし、某専門学校の広報として勤務したこともあり、広告代理店は何社も業務として日常的に接触したが、ほとんどの代理店は「〇〇雑誌の広告を〇〇万円で出しませんか?発行部数は〇〇万部です」という営業に終始していた。多分、その体質は今でも根本的に変わっていないのだろうと推察される。

「〇〇雑誌」のところが「〇〇新聞」の場合もあるし、「〇〇テレビの〇〇番組」の場合もある。テレビ番組の場合は「視聴率〇〇%」になるが。

勤務したアパレルも専門学校も零細業者でカネがなかったので、付き合いは中小規模の代理店が多かったが、大手の代理店とも何社かは付き合いがあったが、基本的なスタンスは同じだった。

はっきりというと、経験的にこれらの広告が成功したことは一度もなかった。

以前にも書いたことがあるが、担当者としてテレビコマーシャルの製作にまで立ち会ったこともあったが、総額3500万円の無駄遣いに終わってしまった。

基本的には、広告代理店には広告枠を抑える力と、値段折衝をしてくれる能力、細々した調整をしてくれる力はあるが、「反応を得られる広告を提案する」という機能は一部を除いてはほとんどない。稀に成功事例も世の中的にはあるが、恐らく大多数の案件は効果が得られずに終わっていると体験的に考えられる。

しかし、そんな調子でも、こちらから発信する手段がほとんどなかったので、広告代理店からの提案は選別はするものの、何回かに1回は受け入れざるを得なかった。

 

だが、インターネットの普及、SNSの普及によって、ほとんど大多数を占める従来型の広告代理店は役に立たなくなってきているといえる。

どの経路から流入したか

どのキーワードで流入したか

どこのクリック率が高いか

どこのページの訪問者が多いか

などがサイト管理者は自分で見ることができる。

グーグルアナリティクスとサーチコンソールを使えば。

 

また、いくら訪問者数、閲覧数が多くても、ネット通販の場合、購入に至らなければ失敗である。そしてちゃんとした分析者なら、どうして購入に至らなかったのかということは、いくつかの仮説を立てることができ、それをまた実験検証することができる。

従来型広告代理店による「〇〇人訪問者がありました」「〇〇人に閲覧されました」というような従来型マスコミ的なレポートはクソの役にも立たない。

 

高いシェアがありながら一般的に知られていない老舗大手アパレル、堅実な経営だが知名度の低い老舗アパレル、一般的には古臭いイメージを持たれている老舗アパレル、などなどは、WEBも含めた広告を出していないわけではなく、むしろ、この手の従来型広告代理店にほとんど丸投げしてカモにされているというのが実態である。

しかも、大手の代理店でさえ、一部の例外を除くと「〇〇人見てるから」という手法以外持ち合わせていない。

老舗アパレルの多くは、DだとかHだとかADナンチャラだとかの大手を何年単位の長期間にわたって使っている場合がほとんどだから、外部の方からすれば驚きだろうと思う。

最近、まったく注目されなくなった協会関係主催の某ファッションイベントだって、ずっとDの関連が代理店を務めている。

大手広告代理店を使って効果があるのは、有名タレントをブッキングする時くらいだというのが個人的な意見である。

 

某ジーンズメーカーなんて、大手代理店Dの支局を10年間、推測総額で10億円内外の広告費用を使い続けたあげくが、売上高はピーク時の10分の1以下にまで縮小してしまった。

そして、SNS広告やWEB広告ですら、いまだに大手代理店からのアホみたいな「〇〇人訪問」とか「〇〇人閲覧」とか「フォロワー〇〇人増加」なんていうプランを鵜呑みにして結果が出ない老舗大手がアパレルが多いのだから、呆れ果てるほかない。

フォロワーを増やすことは重要だが、ファンになり得る人・顧客になる人を増やす必要があり、無関係のフォロワーを増やしてもまったく意味はない。フォロワーなんて最悪、買って増やすことさえできてしまう。

 

ではどうして、何かにつけて「費用対効果ガー」とうるさい大手アパレルの経営者は、大手広告代理店を結果が出なくても使い続けるのか?

これは今でも正直なところ疑問でしかないのだが、その昔、お世話になった業界誌の経営者の説明が最もしっくりくる。その説明とはこうだ。

 

大手アパレルの経営者の多くはマスコミとか広告についてさっぱり知識がない。だから、零細や中小の代理店を使って失敗した場合、広報やPRの担当者を「あんな弱小を使うからだ」と責める。しかし、DとかHとかADナンチャラとかの大手代理店を使えば、効果が出ないことの方が多くても「大手を使って失敗したのだから仕方がない」と諦められるからだ。

 

とのことで、当時は「経営者はアホがそろっとるんか」と疑問しか抱かなかったが、50歳手前になると「アホだ」と思う部分は変わらないが、実態はそうなのだろうなと腹落ちしている。

 

まあ、そんなわけで広告出稿でさっぱり効果が出ていないアパレルの経営者はそろそろ考え直すべきではないかと思う。

 

 

 

 

そんな電通についての本をどうぞ~

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 comment
  • BOCONON より: 2020/04/02(木) 10:26 PM

    山陽商会も “マッキントッシュ ロンドン” をバーバリーの後継ブランドにしたがっていた・・・ようにも見えるけれど,見ていてもまるで印象に残らないTVCM流した程度じゃ全然駄目ですわな。かつての長嶋クラスの有名人でも使わなきゃ。
    これに限らず百貨店では売り場だけ見ても誰にどう着てもらいたいのか分からないようなブランドのショップをよく見る。リニューアルしたマグレガーとか。
    カタログなんぞ置いてても一目は惹かないし,マネキン買いの需要はあるようだから,もっと活用すればいいのに。

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