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南充浩 オフィシャルブログ

定番品こそ販売期間を定めて期間内に値下げしてでも売り切ることが重要

2020年3月31日 お買い得品 2

早いもので、今日で3月が終わり、2020年も4分の1が終わったことになる。

残り4分の3もコロナの影響が甚大でなかなか難しい状況になりそうな気配がある。

 

洋服の大量廃棄問題や、気候の不順などの問題から、アパレル業界ではトレンドを追うことは非効率的なので、定番を長く売ろうという風潮が強くなり始めた。

特にメディアやコンサルタントはそれを推している。

ただ、メディアは現場の仕事を知らない人がほとんどだし、コンサルタントと言ってもピンキリで、戦略コンサルタントはいくら現場に入っていると言っても店頭業務にはタッチしない。また現場向けコンサルタントもピンキリで、昨今はMD論をぶち上げるのが人気だが、もっとマクロな部分を得意とする戦略コンサルや経営コンサルまでが、カネのニオイを嗅ぎつけてか、MD(マーチャンダイジング)を手掛けようとするケースが増えたが、実際のところはほとんど効果がない。

某「在庫最適化」を標榜するコンサルタントが3年間手掛けた会社が「この5年間で在庫過剰に陥ってしまった」と専門業界紙で語っているほどである。

 

アパレルに携わる人は、当方も含めて「物」が好きである。

だから「物」を投入することで戦局を一変させられると考えてしまう。基本的にそれは正しいのだが「物」だけでは戦局は変えられないことの方が多い。

 

いくら「コト消費」とか「ライフスタイル」とか言ったところで、アパレルは基本的に「物」を売ってナンボである。

だから「物」が最も重要だが、「物」を揃えただけでは売れないし、売上高は伸びない。

運用方法も同じくらい重要になる。

 

個人的には最近の「定番を長く売れば苦境から脱出できるカモ」という風潮にはそういうニオイを感じてしまう。

 

どんな気候でも売れる“シーズンレス商品”って結局何なの? 大事なのは「同じアイテムをいかに売りつなぐか」の視点

 

「どんな気象条件下でも売り続けられる定番品をいかに持つか」という考え方が、ファッション関連各社の間で急速に広がっています。最近では、“ステイプル(STAPLE=季節や流行に関係ない基本的で主要なアイテム、などの意)”とも呼ばれるようになってきたこうした定番品

 

「店頭の鮮度アップを常に考えねばならない実店舗のビジネスとは違って、EC専業ブランドはECのサムネイル画像さえ変えれば、投入から時間が経ったアイテムでも再度新鮮に見せることができる。それゆえ、半年間で商品を売り切る必要がなく、年間通して販売ができる。逆にいえば、同じアイテムをいかに売りつなぐかという視点が重要になる」

 

というような論調がこの業界の現在の潮流だと思うが、果たしてこの発想は正しいのか。

定番を揃えただけでは絶対に売れない。過去の歴史も、現在の店頭もそれを証明している。

 

例えばライトオンやマックハウスである。

この2社はジーンズカジュアル専門店チェーンで、基本的にはナショナルブランドのジーンズとそれに合ったトップス類という組み合わせで成り立っている。

ナショナルブランドのジーンズは、トレンド追随品番もあるが、ほとんどはいわゆる「定番」である。リーバイスなら501、エドウインなら503といった具合である。

定番を長くたくさん売ってきた。しかし、ではどうして、何年も前から苦戦に陥り、在庫過多に苦しんでいるのか?

それは売り方、見せ方、運用方法がまずかったからだろう。

定番だけ揃えたところで無意味だということがわかる。

 

また、「長年売り続けられる」と簡単にメディアやコンサルタントは言うが、決算時に在庫を過剰に抱えていたら、それは資産計上され資金繰りを圧迫することになり、新商品の仕入れ金額や製造費を削るはめになる。

だからいくら、定番と言えども、どこかで区切りを入れて不良在庫を吐き出す必要がある。延々と何の措置も講じないまま店頭に並べておくわけにはいかない。

それが許されるのであるなら、ユニクロや無印良品はどうして毎年、定番品でも値下げして売り切ろうとするのか?

 

例えば、先日、無印良品で久しぶりに靴を買った。しかもレザーシューズである。

どれだけ履く頻度があるのかは疑問だが、レザーのコインローファーである。

定価9990円が、半額になって長らく放置されていたが、それがさらに3990円に値下がりしていた。

 

 

 

 

まあ、このくらいの金額なら買ってみても良いかと思った。2019秋冬の商品の値引きである。

 

で、「定番を長く値下げせずに売る」論者に尋ねてみたいが、この茶色のコインローファーはトレンド品だろうか?どう見ても当方には「定番品」にしか見えない。

トレンド品というのは、最近でいえば例えばゴツめのフォルムのダッドスニーカーだろう。

ジーユーがダッドスニーカーを990円にまで値下げして売るのは、それがトレンドアイテムで来期以降売れるかどうかわからないから、値下げ処分して売り切ってしまう。

しかし、このレザーのコインローファーは何十年間とあまり形を変えずに業界全体で売られ続けてきた「定番品」である。

無印良品はそれでさえ、半額以下に値下げして売り切る。

 

ユニクロもシーズン遅れの定番品は値下げ処分して売り切ろうとする。

定番のスエットフルジップパーカだが、昨年秋物は1290円に値下げされて処分されている。今春物は2990円で並んでいるが、これとても恐らくは今年秋には値下げ処分されるだろう。

 

 

このように定番品だから「長く値下げせずに売れる」という論法はおかしく、物を並べただけでは実現は不可能である。逆に勝ち組とされるユニクロや無印良品は定番品でも1年後には値下げしてでも処分しようとしている。

アパレルの人は「物」が好きだから、どうしても「物ありき」で考えるが、定番品を漫然と並べても売り切れることはなく、それならどうしてリーバイスやエドウインは不良在庫を抱えてアウトレット店を多店舗展開する必要があるのかということになる。

 

要は「定番を値下げせずに長く売りたい」というのであれば、それに見合った運用方法や見せ方、伝え方を工夫すべきである。その部分の提案なくして「定番を長く売れ」というのはミスリードを引き起こさせるだけだろう。

 

アパレル業界の人は、特定のコト・モノさえやっていれば、自動的に売れると思いがちである。それは2005年くらいまでは「ブームの商品」を並べたり「ブームの売り方」をすればさして工夫せずとも売れたという成功体験が忘れられないからだろう。

だから、未だに「EC(ネット通販)さえやれば簡単に売れる」とか「定番さえ並べれば値下げせずに売れる」とかアホなことを考えてしまう。

いかに運用するのかということが考えられないままでは、ブームに乗っかったところで売れないということを強く認識すべきである。

 

 

 

そんな定番、リーバイス501をどうぞ~

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 comment
  • 細野 より: 2020/03/31(火) 2:32 PM

    ここ10年でワンピースやスカートの素材や色に季節感が何で無くなったのかと疑問に思っていたのですが、ステイプル品だったのかと納得しました。うちの近所にRight-onがありますが、すぐ近くにUNIQLOがあるせいか、Right-onの買い物袋を下げている人は見かけません。暇人なので、Right-onの商品を物色してみたこともあるのですが、どことなくシルエットが古いものと、ごく最近のものが入り混じっているように感じました。10年くらい前までは、お値段以上の掘り出し物を探すのが楽しかったのですが…。Right-onには頑張って欲しいです。

  • BOCONON より: 2020/04/02(木) 10:09 PM

    そもそも「 “定番商品≒古くならないデザインの服” なんてものが好きな客がそんなに沢山おるもんかいな?」という話ですね。「服好きだけれど,流行り物には全くと言っていいほど関心がなく,個性的な格好もしたがらない人間」なんてものは,僕は自分以外あんまり見た事がありませぬ。
    と言って,僕みたいに紺ブレザーやドレスチノにコインローファーなんて何年も着用可能なものを最小限買うだけの客相手にしたんじゃ商売にはならないだろうしw

    ところで,無印良品の上記ローファー僕も欲しいけれど,サイズが25.5cm~では足の小さい僕には無理。シャツも細身短丈のものばかりだし,無印良品はどうやらオジサン客は切り捨てたと見える。やれやれ。

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