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南充浩 オフィシャルブログ

通販サイトは実店舗売上高にも影響を及ぼす

2020年2月25日 ネット通販 1

ネットで服を買わないという人はファッション業界人やIT界隈が思うよりも多いが、じゃあ通販サイトが全く無意味かというとそうでもない。

ネットで買っていない人もそのブランドのサイトはカタログ代わりに見ているのではないかと思う。

その根拠となった事例がこれである。

 

ユナイテッドアローズが20年3月期業績予想を下方修正 自社ECの開発遅延が響く

 

 竹田光広社長執行役員は苦戦要因について、「消費増税後の慎重な購買動向」「高気温による冬物衣料の低迷」「自社ECサイト停止による実店舗へのマイナス影響」の3つを挙げ、それぞれの対策について説明した。

 

消費税と暖冬については省略する。

 

 また、「自社ECサイト停止による実店舗へのマイナス影響」については、サイト再開により回復傾向にあるとはしたものの「実店舗への影響は想像以上だった」と述べた。

 

とある。

 

昨年、自社通販サイトのリニューアルに大手3社が失敗し、閉鎖が長らく続いた。

このユナイテッドアローズに加えて無印良品、アダストリアである。いずれも1ヶ月くらい通販サイトは閉鎖状態だった。

 

商品展開や品ぞろえについていえば、無印良品を除いて、ユナイテッドアローズとアダストリアは極端に言うと「今週は何が並んでいるのかわからない」という形態の服屋である。

無印良品はユニクロとほぼ同様で、「フレンチリネンシャツ」とか「厚地天竺Tシャツ」とか、少品番でクローズアップされた商品を長い期間(6か月間くらい)売り続ける。

ユニクロも「エアリズム」「ヒートテック」「ウルトラライトダウン」というような特定の目玉品番を長く売る。無印よりもより機能性に寄せた商品が多いと感じる。

今、話題のワークマンもこちらの部類の属する。防水透湿ジャケット「イージス」とか「撥水ジーンズ」とかそういう目玉品番を長く売る。

 

一方、ユナイテッドアローズやアダストリアなどは「ファッション性」という切り口で特定の目玉品番や定番品を作らない。短いサイクルで新しい品番を次々に投入する(現実は伴ってないがあくまでも理想形は)。

こうなると、毎週売り場にどんな商品が投入されているのか、消費者からするとまったく想像もできない。以前なら定期的に店頭を見に行ってその目で確認していたのだろうが、そんなに毎週毎週売り場に通えるほど多くの人は暇ではない。別に服屋に通うことが生活の第一義ではない。

そこで利用できるのがECサイトではないかと思う。

買わなくても例えば週に1度チェックすればどんな新商品が入荷しているのかわかる。あと、値下げ品番もわかる。

 

990円とか1000円くらいの低価格品ならネットで買って失敗してもまあ許容できる。「まあ、しゃあないな」と思える。

しかし、5000円を越えるような商品だと精神的ダメージが大きい。5000円あれば松屋の牛めし(320円)が何杯食べられたのかと思う。5000円もあれば結構なボリュームのあるマスターグレードのガンプラも買える。

だから通販サイトで商品を確認しないことには、購買意欲に結び付きにくい。

ユナイテッドアローズの通販サイトが停止して実店舗に予想以上の悪影響があったというのはそういうことなのではないかと考えられる。

要は通販サイトは、サイトで買うか買わないかは別として「商品カタログ代わり」にされているということだろう。

 

多品種少量を販売するブランドは、例えネットで売れなくても「カタログ代わり」に通販サイトは整備しておく必要があるといえる。

現に多品種少量の極致ともいえるZARAだって通販サイトを重視しているではないか。

 

この多品種少量という販売スタイルでありながら、通販サイト、ECサイトがまったく充実していないのが、しまむらだといえる。

しまむらの近年の停滞・苦戦は、様々な理由があるのだろうし、すぐさま解決できるようなそんな便利な処方箋は存在しないが、通販サイトの整備は早急に行うべきだろう。

しまむらは、ユニクロと違って目玉になる商品がない。多くの人は「これがしまむらだ」と言えるような代表的な商品を思い浮かべることができない。

どちらの売り方が正しいかという話ではない。どちらの売り方があっても構わない。しかし、多品種少量という売り方を選んだのなら、それに合う体制にする必要がある。

通販サイトが整備されず、ネット販売で大きく出遅れたしまむらは戦略を誤ったといえる。

ネット通販が浸透していない時代は定期的にしまむらの店頭を見て回る「しまパト」が盛んだったが、多くの人は毎週しまパトを継続できるほど暇人ばかりではないし、しまむらに対してそこまでの情熱もない。

新聞の折り込みチラシはあるとしても、若い世代になれば新聞を読んでいない、購読していないというケースも増える。

そうなると、ますます「しまパト」をするほか手立てがないが、そんなめんどくさいことを長年継続することは不可能だし、時間の無駄でもある。

結果として、今までほど、しまむらは注目されなくなる。

SNSやWEBメディアがすべてだとは思わないが、そこで流れてくるニュースで「しまむらのこの商品がすごい」とか「この商品がカッコいい」とかいう内容を最近見たことがない。

SNSも含めてネットで流れてくるしまむら関連のニュースは、「客数減少」とか「業績下方修正」とか「売上苦戦」とかマイナスの内容ばかりだ。

まったくの逆効果である。

最も即効性があると考えられる対策は、一刻も早く自社通販サイトを強化することだろう。

 

同じファーストリテイリングでも「ユニクロ的定番品」を持たないジーユーは通販サイトに力を入れて成功しており、自分もジーユーで買い物をする前には必ずサイトをチェックしてから新商品と値下がり品を把握するようにしている。

 

まあ、そんなわけで、これはしまむらのみならず、零細~中規模のブランドにも当てはまることで、インターネットではあまり売れなくても、やっぱり「カタログ代わり」としてサイトは必要だということである。ただし、サイトを作ったからには定期的な更新は必要で、更新をしなければ作っただけで何の意味もないことは言うまでもない。

 

 

10何年経過して、随分と差が開いたと感じる懐かしい本をどうぞ~

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 comment
  • たんたん より: 2020/03/01(日) 8:49 AM

    初めてこのブログ?見ました~面白い~!
    しまぱとは今インスタに移行して、皆インスタでチェックしてますね。あとネットチラシを見てる方も多いと思います。
    しまコレっていうアプリから取り寄せもできますよ~私は欲しいものないけど笑

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