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南充浩 オフィシャルブログ

料金を安く抑えようとするのは当たり前のこと

2020年1月21日 製造加工業 1

インターネットの普及によって、最も変わった事柄といえば、誰でも発信ができるようになったことで、SNSの普及がさらにそれに拍車をかけた。

 

例えば小規模独立系のデザイナーズブランドだが、インターネット普及前には選択肢が2つくらいしかなかった。

1、小売店に卸売りする

2、直営店で売る

この2つだった。

 

インターネットが普及してインターネット通販で売るという3つ目の選択肢ができたばかりでなく、これまでマスコミに頼っていた広報・PR活動も自分の手でできるようになった。

その一つが最近交流してもらえるようになったマール・コウサカ氏のブランド「foufou」だろう。

自身がSNSを駆使して強い固定客をつかんでいる。もちろん、年商規模数十億円とか100億円ではない。しかし、自身とスタッフが食べていくには十分な億円単位の売上高を稼げるようにまで成長した。

昨年12月、同ブランドの神戸での(正確には芦屋)試着受注会を覗かせてもらった。

なんと280組(560人)もの来訪者があるとのこと。関西以外では拠点の東京、名古屋、広島、九州などでも試着受注会を行うため、来場者合計は全国では何千人単位になる。

凄まじいファン作りである。

生産数量も順調に拡大していて、生産担当から聞くと、現在では1型500枚くらいの生産数量に達しているというから、かなりのボリュームに成長しているといえる。

 

 

同じことは、小規模デザイナーズブランド以外にもいえ、繊維・衣料品の製造加工業者の自己発信も格段に増えた。

これ自体は喜ばしいことだが、見ていると、繊維・衣料品の製造に関しては、ちょっと自己中心的な願望丸出しで賛同できないことが多い。

もっとも多いのが、工賃が低すぎるという嘆きで、凡百な業者は「だから、低価格ブランドは悪だ」という視野狭窄な論調になりがちでうんざりとする。

単なる非現実的な願望とポジショントークにしか見えないからだ。

 

工賃や様々な商品の価格を安く抑えようとするのは衣料品に限らず普通のことである。

それは個人の消費でも企業間取引でも同じである。

 

例えば、アパレルブランドでも工場でも、商品の送料はできるだけ安く抑えようとする。

過去何度も、配送業者と送料の値下げ交渉を行っている工場やブランドの姿を見てきた。5円・10円でも安く送料を抑えようとする。

企業活動としては当たり前のことだが、日ごろ、あんたらが書き散らしている「工賃を安く抑えるのは怪しからん」というのとどう違うのか疑問でしかない。

あんたらが自分達の言い値で工賃を受け取りたいなら、配送業者の言い値で送料を支払ったらどうか。

 

広告やWEBに関しても同様である。

広告やWEBとなると、一般の業種とは異なるノウハウが必要となり、専門色が濃くなる。そのため、どうしても業者の言いなりになってしまうケースが多い。また、確固とした物質としての商品が存在するわけではないから、価格設定が見極めにくい。

それが高すぎるのか安すぎるのか適正なのかもわかりづらい。

究極的には合い見積もりをいくつか取り寄せて検討するしかない。

 

とはいえ、普段「服」「繊維」という確固とした物理的商品を扱っている業者からすると、曖昧模糊とした形のない「広告」や「WEB」への支払いは何となく「もったいない」と感じさせ、「安ければ安いほどありがたい」という気持ちにさせてしまう。

そのため、「値切り」が発生してしまうのも当然だといえるが、横から見ていると「自分らが普段やられてることやん」としか思えない。

 

「服は人間が縫っているからそれなりの工賃が発生するのは当たり前」と常に主張していた人が、先日、「広告の予算が折り合わずに折衝したら無料にしてもらえた」と喜んでいるのを見たときには、呆れ果てた。

 

「できるだけ安い工賃で縫って欲しい」と過去に言ってきたブランドやアパレルも同じ気持ちだったろうな

 

としか思えなかった。

 

この手の主張をする製造加工業者は、例えば、安くて美味い居酒屋があれば称賛し、買い替える時にパソコンが安くなれば嬉しがり、出張時のホテルの料金がいつもより安ければ上機嫌になる。

しかし、そのどれも、安い工賃を提示してくるブランドやアパレル企業と同じ行動でしかないことに気が付いていない。

 

他人がやると不倫だが、自分がやるとロマンス

 

という言葉があるが、まるでそれと同じである。

 

製造加工業が安い工賃に苦しんでいるのは事実である。それを脱却するための方策は、わけのわからないポジショントークをしたり、自分に甘く他人に厳しくすることではない。

数量と手間に基づく価格帯を決め、例えば「●●枚以上なら●円~●円、●●枚以下なら●円~●円」、と明確に決めて表示し、自分たちが納得できない価格や数量のものは断るという姿勢が必要になる。(断るには勇気が要るが)

そのうえで、少々高値でも選ばれる「何か」を作り出し、それをWEBやSNSで広く発信し、自工場のポジションを確立する必要がある。

そうではなくて非現実的な願望や明らかなポジショントークを百万回繰り返したところで、カルト的な賛同者が集まるのみで局所的な効果にとどまることになる。

がんばって自工場のプレゼンスを高めてもらいたいと思う。

 

 

縫製工場実践ガイドをどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/01/21(火) 3:53 PM

    小島健輔が警鐘「ユニクロがここへきて『失速』している本当のワケ」https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200121-00069898-gendaibiz-bus_all

    ブログ記事と関係ないですが、またぞろ「ユニクロ失速」記事がでてましたw

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