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南充浩 オフィシャルブログ

アパレルの地方店は消えゆく運命か?

2019年12月20日 ネット通販 2

地方の百貨店の閉店が続いていて、百貨店は大都市都心店くらいしか残らないのではないかと思われている。当方はそう考えている。

地方にはイオンモールを始めとする大型ショッピングセンターがあり、百貨店が無くなっても地域住民の生活にはさしたる支障はきたさないのではないかと思われている。

しかし、こと洋服店に関していえば、百貨店だけではなくショッピングセンターやその他商業施設内も地方店はどんどんと減っていきそうだ。

 

先日、某大手アパレル企業の販売員と話す機会があった。

何でも最近、給与規定の改定があったらしく、これまで東京23区内は手当てがついていたが、今度は大阪・京都・神戸などの手当てが増えたのだという。これだけなら喜ばしいことだが、逆に地方の手当ては減らされることになったのだという。

会社としては原資に限りがあるから、どこかを増やせばどこかを減らさなくてはならない。そのための措置だということは理解できる。

だが、その結果、地方店での販売員が集まらなくなったばかりか、地方店へ赴任したがる正社員も激減してしまい、とりあえず店長しか固定メンバーがいない地方店が増えたという。

ある店舗は固定メンバーが店長だけ。あとは近隣地域のいくつかの店舗から毎日スタッフが一人か二人応援に派遣されてくる状態なのだという。

 

都心店は地域手当が増えてスタッフとしては士気が上がっているのだろうが、地方店は逆に士気が下がり、スタッフも確保できなくなっている。

この給与体系は今後しばらくは変わらないと考えられるため、この大手アパレルの店舗は今後、地方のショッピングセンター内からどんどん姿を消していくのではないかと考えられる。

店長しか固定スタッフがいない店なんていつまでも支え続けられるものではない。

もしくは、地域の小売店にフランチャイズ運営してもらうか、しか手がない。

それができないなら、販路を実店舗ではなくネット通販に置き換えてもらうかである。

 

 

ネット通販が成長産業だという人がいるが、洋服に関しては成長産業とは思えない。

たしかにネット通販の比率は上がっているが、その分、実店舗売上比率が下がっている。このアパレル企業も今後は地方店が減ってその分、ネット通販比率が上がらざるを得ない。

しかし、アパレル小売市場規模はここ数年はほぼ横ばいである。

 

国内アパレル総小売市場/2018年は0.1%増の9兆2239億円

 

2018年の国内アパレル総小売市場規模は前年比0.1%の9兆2239億円となり、2年連続の横這い推移となった。

 

2016年、2017年、2018年とずっと9兆2000億円台が続いている。その前も9兆2000億~9兆3000億円台をうろうろとしている。

市場規模はほとんど変わっておらず、ただ単に売れている場所が実店舗からネットに変わっているだけのことでしかない。

 

そして多くの消費者が一部のイシキタカイ系のようにネット通販で買うことがすごく好きなのかというとそれもまた疑問で、これまでの相次ぐ閉店や今後予想される地方店の消滅の結果、仕方なしにネット通販へ移行しているという人も少なくないと考えられる。

アパレルのネット通販が本当に成長産業なら、アパレル小売市場規模は大幅に増え続けるはずである。9兆2000億円台をうろうろすることなく、9兆4000億円、9兆5000億円へと成長しているはずである。洋服そのものの需要量は変わっていない。どこで買うか、買う場所が変わっているだけでしかない。

 

余談だが、ネット通販こそ老人に向いているのではないかと思う。なぜなら、当方の老父も老衰が進み、足腰が弱って来てなかなか外出も危なっかしくなってきた。洋服はさておき、例えば洗剤だとか飲料だとか、そういう物はネット通販で買えば身体が楽である。足弱な年寄りが事故に合う可能性もなくなる。ただ、なかなか新しいことを覚えようとしない老人も多いからその部分がネックになる。当方の父親なんかその典型で携帯メールすら打てない有様なのだが、覚える気が全くない。まったくもって無気力なジジイである。

 

閑話休題

 

それにしても地方店が、店長以下スタッフを集めること自体が苦しくなっているというのは、現場の人の話を聞かないと思い至らなかった。そしてその傾向は、恐らくこの大手アパレルだけでなく、他の大手アパレルも同様なのではないかと考えられる。近年、大規模リストラを繰り返しているあれらは、従業員問題で地方店を維持できなくなってきているのではないだろうか。少なくとも当方が話を聞いたのはあれらの中の1社である。

 

今は異業種のM&Aだとか、ネット通販の強化だとか、そんな小手先のもので決算自体は好転しているが、その実、足元の自社販売店網は崩れかかっている。販売員が確保できなくて地方店が相次いで閉鎖というのは、近い将来起こり得る可能性が高いと感じる。

 

洋服の実店舗は、ユニクロやしまむらを除けば、大都市都心店か地方の有力一番店くらいしか残らなくなるのかもしれない。中途半端な規模の地方店はスタッフが集められずに消えていくことになりそうである。

それにしても、こういう部分でもアパレル業界は危機的状況にあるといえる。

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 comment
  • ぱんだ より: 2019/12/21(土) 10:52 AM

    地方民ですが、パルコのお店の人から、販売員不足で系列店を次々閉めているときいたので、間違いないと思います。
    求人募集してもまったく集まらないそうです。

  • しがない小売り屋のオジサン より より: 2019/12/25(水) 4:12 PM

    同意見です。募集しても全くスタッフが集まらないですね。ウチのケースですが、地域によっては2~3年募集を続けても一人も採用できないのはザラです。理由はS/Sの営業時間の長さと思います。残されたスタッフはもっと可哀そうで、11時帰宅の遅番から翌日9時勤務開始の早番なんてもう普通にあります。これじゃあスタッフが続くわけないですね。結局皆から退職希望を出され、店は閉店せざるを得ませんね。

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