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南充浩 オフィシャルブログ

自社のビジネスモデルを見誤ると必ず失敗する

2019年11月28日 企業研究 1

当方は家具、インテリアにはほとんど興味がない。

もともと興味がないことに加えて、客が家に来ることもないから余計に興味を持てない。来るとすると、法事の際の親戚くらいで、あと最近は、過度の飲酒で老衰した老父への福祉関係の人くらいである。

それにしても過度の飲酒はつくづく老化を加速させると感じる。50歳とか60歳くらいまでは平気でも、ある一定年齢を越えると、突然に今までたまっていたツケが何倍にもなって返ってくる。

暇にあかせて朝から晩まで何年も飲み続けるとそうなる。酒浸りだった老父はこの1年で急激に老衰している。

 

まあ、それはさておき。

相変わらず大塚家具は赤字続きで回復の兆しすら見えない。

 

「大塚家具」赤字30億円でも業績予想を下方修正せず

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191121-00593830-shincho-bus_all

 

第1四半期の売上は68億3000万円、8億2800万円の赤字に。第2四半期も同様で、この度発表された第3四半期では、売上210億300万円、30億6200万円の赤字となった。

 

とのことである。

高級家具を販売していた大塚家具は、創業者である父と娘の経営方針の違いでお家騒動になり、今に至っている。娘が打ち出した中途半端な低価格志向が消費者に受け入れられなかったことが原因だが、かと言って父親の高級志向を続けていれば安泰だったわけでもない。すでに高級志向による拡大にもほころびが見え始めていたから娘が改革路線を打ち出したという背景もある。

恐らく、父親の高級路線を続けていたとしても今ほどの巨額赤字になったかどうかはわからないが、少なくとも減収減益に転落していただろうと思う。

どちらにせよ成長を継続できるという未来は待っていなかった。

 

原因は住宅着工数が減ったからとか結婚する人が減ったからとかいろいろと言われているが、個人的にはそうではなくて、そもそも高級家具の販売というのはスモールビジネスに過ぎず、それをビッグビジネスにできると父娘ともに勘違いしたことから今の苦境にあるのではないかと思う。

娘の脳裏には恐らくニトリの成功が映し出されていただろう。しかし、ニトリと同様の成功をおさめるためには、最低でもニトリと同等の価格にする必要がある上に多店舗展開が必須となる。

多店舗展開するから、ロットがまとまり個々の商品価格が安く抑えられる。多店舗展開するから全国で毎日売上高が稼げる。

しかし、それをやるためには莫大な資本が必要になる。もちろんニトリとて最初から巨大企業だったわけではないから、それを実現することは不可能ではないが、相当の年数が必要になる。ニトリは2~3年間で今の規模になったわけではない。

大塚家具程度の小さい規模で中途半端な低価格路線を打ち出すことは、特定少数だった従来顧客の離反を招く危険性があるばかりか、新規客が獲得できないという危険性もあり、実際にそうなった。

 

かと言って、従来の高級路線でさらなる成長ができたかというとそれは無理で、だからこそ父がまだトップにいたときにも苦戦に陥り始めていた。

 

要するに、大塚家具はスモールビジネスとして成長を目指さず、着実に黒字を叩き出すというのが正しい姿勢だったのではないかと当方は見ている。

 

しかし、スモールビジネスをビッグビジネスの種と見誤るのは大塚家具だけではない。繊維・アパレル業界には掃いて捨てるほどある。業界人もそうだしメディアもそうだ。見誤るケースが少なくない。

しまむらやユニクロのような低価格ブランドは何千億円規模のビッグビジネスになりやすい。ただし、この両社は商品調達の方法がまるで違っていて、しまむらは今のままでは5600億円規模を突破することは極めて難しいだろう。

だが、1着何万円もするような国内ブランドが何千億円規模のマスに成長することは難しい。そもそも、そんな「高い服」を購入できる人の数は少ない。少ない相手に売るのだから、売上総額は少なくて当たり前である。

例えば、「ステュディオス」「ユナイテッドトウキョウ」などを展開しているトウキョウベースは何千億円規模になることは難しいだろう。

企業全体で1000億円に成長することは不可能ではないだろうが、ステュディオスだけで500億円とか1000億円に成長することはほぼ不可能である。

それにもかかわらず、アホなマスコミは「第二のユニクロ」と持て囃しながら比較をする。土台、商品価格帯も客層も客数も売り上げ規模も違うのに比較をしてもまったく意味がない。ユニクロとは似ても似つかない。その尻馬に乗ってアホなコンサルもユニクロと比較をして論評している。

ステュディオスに限らずこの手の「高いセレクトショップ」は単体ブランドとして何百億円、何千億円という巨大ブランドにはなり得ない。だからユナイテッドアローズも複数の業態を作っている。

 

スモールビジネスなのか、ビッグビジネスになり得るのか、そこを見極めずに市場で言われる成長戦略を考えもなしに取り入れたところで資本力がついてこずビジネスモデルが違えば、大塚家具のように失敗してしまう。繊維・アパレル業界でも同様だし、飲食業界でも同様だろう。

 

 

今となっては黒歴史にしたいだろうと思われる大塚家具社長のこんな本をどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2019/11/28(木) 12:26 PM

    大塚家具も昔は問屋を省いた低価格販売で大きくなったんですよね。80年代に実家のそばにあった大塚家具の板橋の本店は、潰れたボーリング場を買い取って展示販売してましたが、当然会員制でもなく高級でもなかったです。建物の屋上には巨大なボーリングピンが立ったままでしたしw
    会員制になったのも有楽町かどこかのビルに店舗が入ることになった時、商業ビルじゃなかったので仕方なく会員制にしたそうです。棚からぼた餅的にそれが成功して高級路線に移行したようですが、ビジネスモデルはお家騒動時点で破綻してたようですね。

    結局、儲けたのは持ち株を全部高値で現金化できたお父さんだけのようですが、そのお父さんの匠大塚の業績も芳しくないそうで、商売は難しいっすね。

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