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南充浩 オフィシャルブログ

ライトオンは相当な危機に直面しているのではないか?

2019年10月11日 企業研究 1

ライトオンの2019年8月期連結と、9月の月次売上速報がほぼ同時に先日発表されたが、今後、相当厳しい状況に追い込まれるのではないかと思う。

まず、2019年8月期連結から見てみると、

売上高 739億6000万円

営業損失 21億7500万円

経常損失 21億9600万円

当期損失 61億4400万円

だった。今期から決算期を10日ほど変更しており、これまでは8月21日締めだったのを8月31日締めとしたため、12か月11日の変則決算となるため、前年増減は発表されていないが、2018年8月期は黒字だったため大幅な赤字転落であることは間違いない。

また営業日数が11日伸びているにもかかわらず、売上高は30億円ほど減っているから、減収ペースであることも否定しようがない。

 

ちなみに2018年8月期連結は

売上高 767億9800万円

営業利益 12億200万円

経常利益 10億3600万円

当期利益 4億5700万円

だった。

 

今回の巨額の赤字転落の原因について、ライトオンでは

 

 

売上が不振だったことに加え、他社と同質化した商品群や前年からの持ち越し商品群など販売が不振な商品に ついて、夏のバーゲンで消化促進に努めたことで、当連結会計年度末の在庫は前年に比べ削減を図ることができ ましたが、販売が不振な商品に関する値下げの実施により売上総利益率が悪化し、販売管理費は削減に努めたも のの、利益面につきましては、営業損失は2,175百万円、経常損失は2,196百万円となりました。

 

 最終損益は、店舗改装に伴う固定資産除却損に加え、退店店舗及び収益性の厳しい店舗について減損損失を計 上するなど特別損失を3,619百万円計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は6,144百万円となり ました。

 

と発表しているが、要約すると、不振商品と前年からの持ち越し商品の値下げによって利益率が悪化したということになる。

ライトオンはこれまで、基本的には1年~3年くらいの好決算と、1年~3年くらいの悪決算というバイオリズムを繰り返してきた。

2018年8月期は黒字だったが、2017年8月期は赤字転落している。しかし、2016年8月期は大幅な黒字である。

 

これはどういうことかというと、2016年度は不振商品の値引きをほとんどせずに在庫として抱えた。これを2017年度に大幅値引きをして売りさばいた。そして2018年度は2016年度と同じように値引きをあまりせずに売れ残り商品を在庫として抱えたが、2019年度はそれを値引きして売りさばいた、ということになる。

 

まず、ライトオンが改善しなくてはならないのはこの悪しきバイオリズムを断ち切ることではないかと思う。

どうやればバイオリズムを断ち切れるかというと、商品の仕入れ量・製造量をもう少し絞る必要があるだろう。

これは個人的な体感だが、仕入れ量・製造量が多すぎるし、首脳陣はいまだに「売上高を増やすためには在庫を積め」と考えているのではないかと推測される。

たしかに、仕入れ量・製造量が増えれば、バイイングパワーも増すし、数量を多く作ることで製造コストを下げることもできる。

しかし、過去からの業績推移を見ていると、必ず在庫を売りさばいて巨額の赤字を計上する年度がある。

ということは、仕入れ量・製造量が多すぎるのではないかと考えられる。

 

店舗数がどんどん増えている時期ならそれでもよいが、ライトオンは店舗数を徐々に減らしており、2019年8月度は出店が8、退店が33となっていて、25店舗の純減となっている。そのため、かつては500店舗以上あったのが、473店舗まで減っている。2020年8月期はさらに減り454店舗と見通している。

店舗数が減っている分、恐らく商品数量も減らしているのだろうとは思うが、その減らし方が足りないのではないかと思える。

たしかに製造コストが高まったり、仕入れ金額が上がったりするだろうが、最終的に値引きして赤字になるよりはマシではないかと思う。

ライトオン自体も店舗数の減少に比例する形で売上高を減らしている。2020年8月期の売上高は660億円にまで低下する見通しとなっており、商品供給量はまだまだ下げなくてはならない。

数量を抑えるというマーチャンダイジングのノウハウが、これまでの経緯を見ていると、ライトオンには無いのではないかと考えられる。

商品の数量を抑え、値引きをせずともほぼ売り切れることを狙うべきで、売上高の回復よりも確実な利益を稼ぐという考え方がライトオンには必要ではないかと思う。

また、個人的には今後、ライトオンが今の体制のままで飛躍的に1000億円とか2000億円の売り上げ規模に拡大できるとはまったく思えない。

となると、売上高は現状維持から減少しても確実に黒字化できるという運営体制を構築すべきだといえる。

 

それに加えて徹底的な不採算店舗の閉鎖も必要だろう。

ライトオンの1店舗当たりの平均的な年間売上高は1・5億円ほどである。しかし、関係者によると年間売上高10億円という上位店舗もあるという。ということは、年間売上高が1億円未満という下位店舗もあるということである。

売上高が悪くても黒字店もあるだろうから、赤字店をすべて閉店するくらいの取り組みが必要ではないかと思う。その結果、店舗数が大幅に減り、売上高が減っても仕方がないのではないかと思う。

極端にいえば、例えば300店くらいにまで減らして、その代わりに収益性を高めることを模索すべきではないかと思う。

 

さらに、ライトオンの今後が多難だと思うのは、新年度となる2020年8月期がスタートした9月の月次売上高が壊滅的に悪かったためである。

今年9月の月次速報によると、

既存店売上高 21・4%減

既存店客数 31・9%減

既存店客単価 15・4%増

となっている。

ちなみに全店ベースでもほぼ同様で

全店売上高 24・4%減

全店客数 36・5%減

全店客単価 19・2%増

となっている。

 

何度もここで書いているが、小売店で客数が大幅に減少するのは危険な兆候であり、減少幅だけでいえば、30%減ということはほぼ固定客に見放されているといえるし、話題のしまむらよりも酷い状況にある。

ここまでの減少幅は過去にもあまりない。

 

新年度のスタートがこれでは、10月以降にリカバリーするのも大変な努力や大幅な値引きセールが必要となってしまう。

もちろん月次速報は増減幅しか発表されないから、実額ベースではわからないが、客数35%減というのは単月とはいえ大変な減り方である。

 

こうなると、気温や気候の問題ではなく、ライトオンの商品政策や店作り、販売政策などに大きな問題が生じたとしか思えない。

 

これまで赤字を計上しても、翌年度の滑り出しはここまで悪くはなかった。だからほぼ前年並みの着地点は予想できたが、この大幅な客数減が続くと2020年8月期の見通しが達成できるかどうかも怪しくなる。

ライトオンはこれまでにない危機に直面していると外野からは見えるのだが、内部の人たちはどう感じているのだろうか。

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 comment
  • 空飛ぶクジラ より: 2019/10/11(金) 6:38 PM

    関東地方のアパレル店舗の経営者です。

    ライトオンさんも増税前の駆け込み月に、売上が8掛けを切るとは尋常ではないですね。同月の無印良品やニトリの前年比120%に比べると、カジュアル衣料は増税前でも見向きもされませんね…。また10月に入っても、夏のような暑さで売上は一向に回復しません…。おまけに特大台風の直撃で明日は土曜日なのに当社は全店臨時休業。弱り目に祟り目です。いつかアパレル業界にも春(秋?)が来るのでしょうか?

    当社も某SSに複数店舗がありますので、ライトオンさんのお立場も少し理解できます。既存の売上が減少してもデベロッパーへの固定費が下がる事がないので(家賃の最低保証がありますしね)結局原、原価率を下げ上代設定を上げざるを得ない。そのうえでユニクロと価格や品質を比較されてしまって顧客が移動されてしまう…。仕方ない事ですかね。

    僕も昔はライトオンのファンでよく利用しました。今でも時々は購入しています。ユニクロにはないレアな商品も時々見かけます。
    ライトオンさん、復活を期待しています。

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