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南充浩 オフィシャルブログ

老舗の経営破綻が相次ぐ2019年の秋

2019年10月4日 経営破綻 1

9月末から10月頭にかけて、規模の大小は別としてけっこうな老舗がバタバタと経営破綻している。

このブログで採りあげたメックス、サンモトヤマがそうで、このほかにもネクタイメーカーのフェアファクスコレクティブが民事再生法を申請した。

メックス、サンモトヤマは倒産だが、フェアファクスは民事再生なので、スポンサーが見つかれば継続できる。ただし、スポンサーが見つからなければ破産ということになる。

 

繊維業界紙なんて、毎年「岐路に立つ業界」という文言を掲載していて、「岐路に立ちっぱなしやんか」と思わず突っ込みたくなるが、老舗がバタバタと破綻している今秋は、本当に岐路の一つではないかと思ってしまう。

ちなみに、某J社というカジュアル系メーカーも倒れたとカジュアル筋から情報が入ったが、そろそろ信用交換所や帝国データバンクあたりから発表されるのではないかと思う。

 

さて、フェアファクスだが、創業は76年なので43年前ということになる。当方が6歳の時に創業されている。

今回の経営破綻は帝国データバンクによると、

 

しかし、2017年7月期中に主力ブランド「サイコ バニー」のライセンス契約が満了となり、売り上げが減少。新ブランドとしてカジュアルビジネスウェア「BROOKLYN TAILORS」や「SUN68」をスタートしたものの販売が伸び悩んでいた。

 

とある。

今回はネクタイについてちょっといろいろと振り返ってみたいと思う。

 

2019年の現在は多少は業界情勢は変わっているのではないかと思うが、90年代後半に2年間くらいネクタイの担当記者だったことを思い出してみると、ネクタイというのは当時、基本的にライセンスブランドばかりの企画生産だった。

今でこそ、オリジナルブランドというのも珍しくはなくなりつつあるが、当時はほとんどが有名ブランドとの契約を結んだライセンス生産だった。とくに百貨店向けの商品は企画内容よりもライセンス先のブランド名で売れ行きが決まるという感じだった。

当時、ネクタイの展示会に取材で行っても、あまり面白い話は聞けなかった。

だいたい、「有名な〇〇ブランドのライセンスを始めます」とか「トレンドの〇色を取り入れた柄を提案します」とかそういう内容ばかりで、駆け出しの記者だった当方は、どうやって記事にすればよいのか見当もつかなかった。

結局はありきたりの「新ライセンスブランド〇〇」とか「トレンドの〇色で柄を提案」とかそういう記事でお茶を濁すほかなかったが、はっきり言って、取材が面白いとか興味深いと感じたことはなかった。

当時は今ほど、ニットタイが流行っていたわけでもないから、そういうやり方しかなかったのだろう。

 

それにしてもネクタイの老舗はかなり潰れた。

今年春には西陣ネクタイが倒産した。ここはそれほど大きい会社ではなかったが創業は昭和13年なので古い。

記者当時に取材に伺ったことがあったが、ここもあまり目新しい企画はなく「淡々と粛々とやってます」みたいなコメントで記事化するのに苦労した記憶がある。

 

90年代後半、当方が記者になる前に、すでに菱屋という大手が倒産していた。

これは当時すごいニュースだったらしく、年配の業界人はいまだに菱屋の倒産を話題にする人がいる。

 

当方がリアルタイムで経験したのが朝倉商事の倒産である。

2001年のことだった。

ネクタイでは超大手だったが、そごうの経営破綻の影響を受けたとされている。ミッシェルクランのネクタイをライセンスで展開していた。

安藤やアルプスカワムラなんていう会社も倒産で消滅してしまった。

 

90年代後半、安藤はタケオキクチのネクタイを展開していた。アルプスカワムラの倒産は2008年のことである。

 

 

ネクタイ業界の危機についてはクールビズが最大の原因だと言われているが、それはその通りなのだろうが、実は朝倉商事や菱屋のようにクールビズ開始以前に破綻した大手も多い。

バブル崩壊やそれに付随した百貨店や大手総合スーパーの倒産がその原因だといえる。

 

WWDによると

 

日本のネクタイの流通量(国産品と輸入品の合計)は05年に4160万本だったが、15年には2205万本とほぼ半減した(日本ネクタイ組合連合会調べ)。

 

とあるが、2005年以前にも大手の破綻は相次いでいた。

 

で、話をクールビズに戻すと、ネクタイ関係者からは「クールビズを廃止しろ」という意見を聞くが、今廃止したところで多分まったく意味はない。ネクタイ着用には戻らない。

また、クールビズがなかったとしても、ビジネスシーンのカジュアル化は世界的な流れだから結局のところ、日本でもカジュアル化・簡素化は進んだのではないかと思う。

 

冷房温度を28度に設定することがCO2削減に何の役に立つのかははっきり言ってわからない。それが基準として正しいのかどうかもわからない。

欧米だと冷房の温度設定はもっと低い。アメリカだと華氏70度くらいが標準設定だと聞いたことがある。アジアでも冷房をキンキンに冷やしている。28度という根拠の薄い設定に固執しているのは日本だけしかない。

それでも電力消費を抑えるために、冷房温度を少し高めにしましょうというのであれば、真夏の洋服は薄着化せざるを得ない。

昔の映画を見ると、夏のビジネススタイルは半袖開襟シャツである。冷房が普及していなかったから当然で、そんな中で上着にネクタイ着用なんていうのは、我慢大会でしかない。

 

クールビズ廃止論者には「男のファッションは痩せ我慢だ」という人がいまだにいるが、気温35度を越える中で上着とネクタイのフル装備するくらいならフリーターになった方がマシである。やりたい人は勝手に痩せ我慢をすればいいと思うが、そんなくだらない個人の意見を他人に押し付けるなよ。

 

上着ネクタイ着用なら冷房の温度設定を25度以下にする、冷房の温度設定を上げたいなら薄着化する、二者択一でしかない。

 

ネクタイは今後もなくならないと思うが、これまでのようにライセンス企画だけに頼っていれば、破綻するのは目に見えている。アパレルの他の分野でも同様だが、ネクタイこそ売り方・伝え方を最も工夫しなくてはならない分野なのではないかと思う。

 

 

 

 

フェアファクスコレクティブのブルックリンテイラーズのネクタイをどうぞ~

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 comment
  • 山田 哲生 より: 2019/10/07(月) 5:55 PM

    確かにネクタイは売上げを減らしています。手描友禅で着物生地を使って制作、別注も受けて可成り割安にしていますが。店頭で売れる枚数が年々減少気味。不況も深刻なので仕方ないと諦めていますが。

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