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南充浩 オフィシャルブログ

35年間進み続けた衣料品価格のデフレ

2026年7月29日 製造加工業 0

先日、2025年の国産衣料品比率が数量ベースで1・1%まで低下したことが発表された。

案の定、SNS上では「国産ガー」の人たちが怪気炎を上げていたらしいが、当方はSNSに興味が無いのでほとんど見ることも無くスルーした。

その1・1%について、自身でも佐渡に工場を所有された山本晴邦さんがAIを使って過去データをまとめた大作ブログをアップしておられたので、ご紹介したい。

AIの使い方が優れていて、そこら辺のイキリコンサルや日経新聞記者よりもよほどファクトベースに立脚している。

1.1%。 | ulcloworks

 

まあ、いつものように全くPV数稼ぎをする気の無い見出しで好感が持てる。

だからじゃないけど、一旦落ち着いて、数字を比べてみることにした。

以下は(出典元※印)を参考にGeminiでグラフにまとめてもらったものだ。

 

とある。六種類以上の力作グラフがある。ぜひとも本文を確認してもらいたいのだが、個人的には山本さんがブログで語られているのと同様に「国内アパレル市場規模と供給量の関係」のグラフに最も興味を持った。

僭越ながら、グラフ画像をお借りしてここに貼り付けさせていただく。

 

上が、国内生産衣料品比率の数量ベースと金額ベース、下が市場規模と供給総量のグラフである。

 

まず上から見てみると、国内生産衣料品比率は数量ベースで1・1%にまで低下しているが、金額ベースだと25%を維持している。これは今に始まったことではなく、数量ベースが激減する中でも金額ベースはそこそこ維持し続けてきた経緯がある。

要するに数量は減っているが、1点当たりの単価が高いから金額ベースは高くなるということである。

すべての国内縫製工場が必ずしも同様とは言わないが、概して多くの国内縫製工場は少ない数量ながら高単価品を生産しており、コスパ廚・タイパ廚の奴らが大好きな「生産効率の良い仕事」をしているということになる。

余談ながら数量ベースと金額ベースの乖離は、食料自給率でも同様であり、日本の食料自給率は金額ベースだと65%くらいある。20%と言われ続けている食料自給率はカロリーベースで、このカロリーベース食料自給率を使っているのは世界で日本と韓国くらいしかない。他の国はすべて「金額ベース食料自給率」を使用しているので、他国との食料自給率の比較は、基準が全く異なるので意味が無いのである。

 

 

閑話休題。

 

 

次に見てもらいたいのが、衣料品の国内総供給量と国内市場規模の推移である。

90年から2025年までの35年間をまとめた大作である。ちなみに90年は当方でもまだ大学生で働いていない。そんな昔の話である。

90年の国内総供給量は国内生産も輸入も合わせて20億点である。そして国内市場規模は15兆円となっている。一方、直近の25年は総供給量が37億3300万点で、国内市場規模は8・5兆円となっている。

35年かけて総供給量は1・5倍以上に増えたものの、市場規模は約半分に低下している。

山本さんの言葉を借りれば「供給量に対して市場規模のシュリンクが半端ない。マジ繊維デフレ」である。

 

 

大雑把に計算してみると、90年の衣料品平均単価は7500円になる。この当時、すでにジャスコやダイエーが低価格衣料品を大々的に販売していたので、そういう低価格衣料品も合わせた平均が7500円なのだから、いかに高い服が売れていたかということである。

ちなみに、大学を卒業するまで母親がジャスコとイズミヤで買って来た服を着て過ごしていた当方の記憶を照らし合わせると、90年当時のジャスコ、イズミヤの服の価格はだいたい1900~3900円である。防寒アウターはもう少し高いし、靴下は3足1000円くらいである。

それでも平均単価が7500円まで引き上げられているということは、何万円もする服が大量に買われていたということである。我が家以外で。

 

 

 

一方、25年の衣料品の平均単価はざっくりと2300円弱になる。

35年前と比べると半額以下に値下がりしているということがわかる。マジ繊維デフレである。

もちろん、当方もそのデフレの一員である。

市場規模が大きくて総供給量が少なかった時代の終焉はこのグラフをみると90年代後半であることがわかる。だいたい97年・98年頃に、繊維デフレは一気に加速している。

97年に北海道拓殖銀行と山一証券が倒産して、一気に不景気ムードが高まった。それを反映してか、ユニクロの1900円フリースが空前のブームを引き起こした。

これ以降、国内市場規模は下がり続け、2010年代後半は9兆円台で横ばいを続けていたが、コロナ禍で一気に落ち込み、23年のコロナ自粛明けから増加に転じたが、いまだに9兆円台には回復していない。これが現実である。

 

 

 

90年代後半から2000年代後半にかけて、2~3年おきに高価格の衣料品ブームが次々と生まれたが、国内市場規模を押し上げるほどの効果は無かったということがこのグラフから読み取れる。90年代後半以降、国内市場規模は2015年の微増を除いて増加していない。

そして、2010年代半ば以降は、そういう高価格衣料品ブームが起きていない。起きているとしても特定のファッション分野の中だけであり市場全体に波及していない。それがこの10年間といえる。

 

 

繰り返し書いているが、衣料品への興味より飲食、エンタメ、ホビーへの関心が高まり続けており、今後も大きなファッションブームが起きることは無いだろう。

また国内衣料品比率も数量ベースでは上昇することは無いだろうし、本文中にある国内繊維製造事業者数が増加に転じることも無いだろう。

今、活動を続けている業者がそのまま活動を続けられるような状況・環境を維持することが最も現実的な施策だろう。そして、今、活動を続けている繊維製造加工業者は20年後くらいに経営者層一斉に引退を迎えるので、一層減少するということになるだろう。その時に「続けたい」という事業者が何とか続けられるような環境が最低限整っていることを願うばかりである。

ちなみに20年後には当方も完全に引退している。まあ、もっと前に死んでるかもしれんし。(笑)

 

 

 

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