リーガルは展開ブランドの整理が急務ではないか?という話
2026年7月16日 企業研究 0
低価格ボリュームゾーン以外、要は中・高価格に分類される企業やブランドが傾いた際、「高価格帯へ特化しろ」というアドバイスをよく見かける。
高価格帯は基本的には利益率が高いから儲けが多くなりやすい。だからそのアドバイスは間違いではないが、企業規模やブランド規模、取扱い商品によっては当てはまらない。杓子定規にすべての企業やブランド、商材に当てはまるものではない。
その一例として、リーガルが挙げられるだろう。
メンズビジネス革靴の老舗大手メーカーである。
ここの経営が悪化して、リストラを発表したことは以前にも触れた。
現役世代の人口減少、ビジネススタイルのカジュアル化、などによって従来型のビジネス・フォーマル革靴は売れにくくなっている。
そのため経営が悪化して、リストラに至った。
では立て直す方策はどうすればよいのか?様々な可能性が考えられる中、メディアやSNS上で最も多く見られたのがアホの一つ覚え的な「高価格帯に特化せよ」というものだった。
その多くが、他社ブランドである高価格ビジネス革靴ブランド「スコッチグレイン」が比較対象の根拠となっている。
一見すると正しい施策のように見えるが、スコッチグレインを展開するヒロカワ製靴とリーガルコーポレーションでは企業規模が10倍くらい違う。
ヒロカワ製靴の25年8月期の売上高は自社サイトで19億円強と発表されている。
一方、リーガルコーポレーションの26年3月期の売上高は対前年比3・0%減とはいえ228億4100万円もある。企業規模は10倍以上の差がある。
スコッチグレインと同等の高価格帯に特化した場合、企業規模も最終的には同等の20億円内外にまで低下してしまう可能性が極めて高い。
いくら高利益率が期待できるとはいえ、ビジネス・フォーマル革靴は数量の売れ行きが期待できる商材ではない。数量が売れないということは商品単価が高くても売上高は伸びにくい。
現在、228億円の企業がそこまで大幅減収を覚悟して、高価格帯に特化するのは愚策といえる。そんなハードランディングより、従業員や工場のことを考えると売上規模は維持しながらジワジワと縮小させるソフトランディングを選ぶべきだろう。
リーガルコーポレーションも無策ではない。決算短信ではいくつかの対応策を発表している。
ただ、当方から見ると、どれも効果が薄いと感じられてならない。
特に疑問を感じるのが、決算短信にある
今年度の中期経営計画における主な重点施策は、「女性・Z世代・アクティブシニアの獲得と関係性強化」、「リーガルのリブランディングによる顧客創出と事業変革」、「新たな女性客獲得を目的とした新規ブランドの展開」、「新REGAL 店舗、新業態店舗の出店促進」、「アジア圏を中心とした海外販売の拡大」を軸に取り組んでまいりました
という部分から特に「女性・Z世代・アクティブシニアの獲得と関係性強化」という一節である。
たしかに現役世代のサラリーマン男性の人口は年々減少しているから、その補填として女性、Z世代(要は若者)、アクティブシニアの獲得を目指すというのは、理論的には正しい。あくまでも理論的には。
だが、リーガルコーポレーションはメンズビジネス革靴・フォーマル革靴のイメージが強固であるため、女性客獲得はかなりの中長期的な取り組みが必要になる。その方策の一環が「卑弥呼」の取り扱いだが、正直なところ、今の女性消費者にとって「卑弥呼」ブランドのヒールやパンプスが強い訴求力を持っているとは到底思えない。
次に、個人的に最大の落とし穴だと見ているのが「アクティブシニア」である。年代では65~75歳の前期高齢者を指す。
たしかに、後期高齢者になり始めた団塊世代の次に、前期高齢者は人口が多い。これは事実である。
しかし、延長雇用で働いている人も少なからずいるとはいえ、前期高齢者が今更、リーガルのビジネス革靴・フォーマル革靴を履くだろうか?当方はほとんど履かないと見ている。
理由は簡単で、自宅周辺で働いている前期高齢者はほぼもれなくスニーカーを履いているからだ。業種もだいたいがスーパーのレジ係・品出し係・誘導員などが多いし、シルバー人材センターで働いている人は、草刈、樹木の剪定などが多い。どれもスニーカー履きである。逆にこれらの人がリーガルの革靴を履いていたらびっくりしてしまう。
さらにいえば、自宅周辺の自治会活動で普段見かける前期高齢者はもれなくスニーカー履きである。彼らはアルバイトでもデイリーカジュアルでもスニーカーしか履かない生活になっていて、ビジネス革靴・フォーマル革靴の需要は無いに等しい。あるとすれば冠婚葬祭の時くらいだろう。
さらにいえば、Z世代の若者にとってもリーガルというブランドは馴染みが薄く、選択肢にすら入っていないのではないかと推測される。
そんな中、かなりまともな再建策提案をしていたのがこのYouTube動画である。
最初は、「また、よくある革靴命みたいな変態マニアの主張かな」と思って観始めたが、かなりバランスの取れた主張なので感心した次第である。
まず、動画主が主張するのは、リーガルは展開ブランド数が多く分かりづらいから、セイコーとグランドセイコーを例に出しつつ、同じくらい分かりやすくブランド数を整理すべきという点である。
たしかにリーガルは展開ブランド数が多い。公式通販サイトを見るとメンズビジネスだけでも10ブランドもある。
シェットランドフォックス、ケンフォード、リーガル、リーガルウォーカー、リーガルブーツマークなどなどである。
これを例えば、高級ブランドとデイリーユースの機能性革靴に大きく2分類してみてはどうか?というのが動画主の主張であり、これは当方も賛成である。
この動画主は「革靴命層」に見られがちな、機能性革靴否定派ではない。現状、外回り営業マンなどがテクシーリュクスに代表される機能性革靴を選ぶ傾向が強いという事実を踏まえ、それならテクシーリュクスなどに競合できるように同価格帯で機能性革靴をアピールしつつ、高価格革靴と分かりやすく分類してみてはどうか?という提案である。
200億円規模を維持しつつ、経営を立て直すのであればこの動画主の提案が最も現実的ではないかと思える。
凡百で机上の空論的な高価格帯への特化とかアクティブシニアの獲得とかに血道をあげるか、現実的な施策を行ってソフトランディングを目指すのか、あとはリーガルコーポレーションの経営陣の決断である。当方は外野からそれを眺めるに過ぎない。
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