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南充浩 オフィシャルブログ

アパレル製品OEM屋にとっては新規受注先を獲得しにくい厳しい状況

2026年7月3日 倒産 2

国内の衣料品需要は23年のコロナ自粛解禁以降、緩やかに回復の傾向が続いているものの、大きく再成長する気配は無い。

むしろ、22年以降の物価上昇率に比べて総売上高の増加率が届かないところを見ると、販売枚数はむしろ減少し続けているのではないかと思われる。

矢野経済研究所が発表した「アパレル小売市場規模」では、24年は8兆5010億円で前年比1・7%増にとどまった。ちなみに2025年の確定データの発表はまだだが、推測では8兆5440億円前後とされており、前年比0・5%増しかない。物価上昇率は2%とか3%が続いているにもかかわらず、アパレル小売市場は1・7%増とか0・5%増しかないということは販売枚数は相当減っていると考えられる。

 

 

 

じゃあ、今後、劇的に衣料品需要が再拡大するかというとそれは難しいのではないか。以前から書いているように、マス層の興味の最優先はファッションではなくなって久しいからだ。

エンタメ、飲食、サブスク、スポーツ、スマホなどの趣味が優先されている。実際に当方とて、定価で服は買わないが、ガンプラは定価で並んでまで買う。

徴収される社会保障費の増大に伴って可処分所得が伸び悩む中、支出先の優先順位を明確化するのは極めて当たり前の行動である。優先支出先に洋服を選ばなくなった消費者は20年前と比べると大幅に増えているのではないかと考えられる。

市場規模は大幅に拡大しにくくなっているということは、衣料品への支出優先順位は下がっていると考えるのが適切だろう。

 

 

 

その一方で、実店舗、ネット販売ともに大手ブランドによる寡占化がより鮮明になっている。

商業施設への出店ブランドの顔ぶれはほぼ決まっており、同質化が激しい。例えばイオンモールとアピタとアリオで出店しているアパレルブランドの顔ぶれはほぼ同じである。ファッションビルしかり、百貨店しかりである。

ネット通販でも似たような状況になっており、大手ECモールへの流入は増え、ブランド個別の自社直営サイトの流入は伸び悩んでいる場合が多い。

市場のほとんどが、大手何十社かで占有化されている一方で、日々、有象無象の零細ブランドが無数にデビューし続けているという業界構造が固定化しつつあると感じる。

 

 

 

 

こういう情勢下では厳しさが一層増すのではないかと思われるのが、衣料品のOEM屋/ODM屋(ここではOEM屋として総称する)といえる。

大手商社の繊維製品事業部のような大資本から、一人親方の零細企業までそれこそ国内に無数に存在しているが、どのOEM屋も事業規模の拡大が極端に難しくなっている。

当方の知っている一人親方事務所も2010年代半ば以降続々と倒産、廃業が続いている。大手商社でさえ繊維製品事業部を大手アパレルに売却するという事例が珍しくなくなっている。

 

 

 

愛知県のOEM屋であるカフカの倒産もその事例の一つなのではないかと考えられる。

カフカ株式会社|倒産速報|株式会社 帝国データバンク[TDB]

当社は、2005年(平成17年)5月に設立された。20歳代~50歳代の幅広い層をターゲット層として、ジャケット、コートなど、レディースウェアおよび子供服やメンズウェア等をアパレルメーカーなどから受注を獲得し、外注製造を行っていた。OEM(委託者のブランドで製品を生産)、ODM(委託者のブランドで製品を設計・生産)を手がけ、中国やフィリピンおよび国内の外注業者に生地を無償支給して、縫製・製造業務を委託し、2025年4月期に年売上高約66億4600万円を計上し、近年の業績は利益計上で推移していた。

しかし、財務内容では在庫保有の負担が重く、資金面を圧迫していた。今期に入っても十分な改善は進まず、先行きの見通しが立たなくなった。

負債は2025年4月期末時点で約29億9900万円だが、その後変動している可能性がある。

 

とのことである。

ここで注目が必要なのは、25年4月期には66億円もの売上高があったという点である。これはOEM屋としてはそこそこの規模感がある。さらにいえば、利益計上で推移していたという点にも注目である。赤字ではなく採算は取れていたということで、ビジネスとしては堅調だったと見るべきだろう。

ではなぜ倒産したのか。ここでは「在庫保有の負担が重く」とある。要は在庫が増えすぎて苦しくなったということだが、通常のOEM屋では過剰な在庫を抱えることは考えられない。

なぜなら、相手先のブランド商品を製造している(ODMの場合は企画・製造)だけなので、出来上がった商品は相手先のものであり、OEM屋はそれを納入してお終いである。手元に在庫が残るはずがない。原則的には。

 

 

 

しかし、それにもかかわらずカフカが過剰在庫を抱えていたということは、発注先が在庫を引き取らなかった、もしくはカフカを物流倉庫代わりに使っていたということが考えられる。さらに、売れ残った不振商品をカフカに不当返品していたということも考えられる。

90年代半ば以降、アパレルから独立した人は「OEM屋」を開業することが多かった。新ブランドを立ち上げて軌道に乗せることの難しさもさることながら、最大の理由は「在庫を持たなくても済むビジネスモデルだから」というものだった。

だが、カフカは過剰在庫を抱えて倒産してしまっているわけだから、OEM屋の原則的にはあり得ないことが起きたわけである。

 

 

 

ではなぜ、カフカが本来あるはずの無い過剰在庫を抱えて倒産したのかである。

90年代後半とか2000年代前半なら、OEM屋の軒数自体も今よりは少なかったし、好調な大手アパレル企業も多かった。ユニクロのような成長企業もあった。

当然、各OEM屋は新規営業先を獲得しやすかった。

 

だが、2010年代以降は、大手の占有化がほぼ固定化してしまった上に、OEM屋の軒数も爆発的に増えた。

OEM屋は有望な大手ブランドを新規獲得することが難しくなった。狙った大手ブランドがあったとしても、すでにその大手には何社ものOEM屋が引っ付いている。これらを押しのけて自社を選んでもらおうとすると、破格のサービスを申し出るほかない。めちゃくちゃ安く作るとか、めちゃくちゃ速く作るとか、そういう「破格の美味しい条件」を提示する必要がある。提示できなければ受注してもらえない。

そういう「破格の美味しい条件」の一つとして、カフカは「在庫をこちらが持ちますよ」ということを提案し続けて業績を伸ばしてきたのではないだろうか。何なら「売れ残り品の返品OK」という条件まで提示したかもしれない。

 

 

現在、OEM屋は業績拡大・維持のためには「破格の美味しい条件」を提示せざるを得ない状況にある。

大きくは伸びないアパレル市場規模、大手何十社かに寡占化されたマス需要、そして軒数が増えすぎたOEM屋、これら3つの要素を鑑みると、今後、この手のOEM屋の倒産・廃業はますます加速し、増加するだろうと考えられる。

小売業もアパレルも厳しいし、ブランドビジネスも厳しいが、OEM屋にとっても極めて厳しい状況だといえる。

 

 

 

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minamimitsuhiro0423@gmail.com

 

 

 

 

 

 

 

 

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 comment
  • 細野 より: 2026/07/04(土) 6:32 AM

    この話を聞いて、昔の山一證券のことを思い出しました。

    山一は、営業特金などで生じた損失を、長年にわたって「飛ばし」で先送りしていました。損失を確定させないことで、秘密爆弾というか、不発弾のようなものをずっと隠していたのだと思います。それが最終的には簿外債務として表面化し、破綻につながりました。

    カフカの場合は、もちろん金融の飛ばしとは違います。ただ、服の在庫という形で、取引構造の中にリスクが溜まっていたようにも見えます。本来なら発注側や販売側も負うべき売れ残りリスクが、OEM側の在庫や資金繰りに寄っていたとすれば、ある意味では「在庫版の飛ばし」に近い面もあったのではないかと思いました。

    山一の破綻とカフカの破綻は、業種も仕組みも違いますが、「損失をすぐに確定させず、どこかに溜め込んでしまった結果、最後に一気に噴き出した」という点では、似た構造があるように感じます。

    また、金融には金融庁や証券取引等監視委員会がありますが、アパレルを含めた製造業の下請け取引にはそういう分かりやすい監視機関がないように見えます。そこも、こうした問題が見えにくくなる一因なのではないでしょうか。

  • ミナミミツヒロファン より: 2026/07/04(土) 7:10 PM

    あ~うわさに聞いたムリ業態、とうとう飛んだか・・・

    記事中に「外注業者に生地を無償支給して」と
    ありますでしょ?

    キーはそこです

    つまり口利き屋と材料問屋を兼ねた業態だった

    00年以降、ロットあたりが極小になるいっぽうで
    服地は相変わらず一巻き単位でしか織れません

    バッタ市場に出回る残反の用尺が恐ろしい長さに
    なり始めたのもこの頃からです

    そこの目をつけたのがこの会社

    しかし、ちゅーもんが細くなれば
    売上は減少します。バカでも解るリクツです

    同業他社に無い強みを作ろうとするのは良い

    けれど「総需要が恐ろしく減る」ことに対する
    備えがないと、早晩つぶれます

    そうなると、需要が集中するトップ数社ではなく
    ベスト3ぐらいしか生き残れませんわな・・・

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