国産衣料品比率が上昇に転じることは二度とない
2026年6月30日 産地 0
当方も56歳になってしまって、還暦が目に見えている。
還暦手前になって「ワシ、アタシはまだまだ若い」とか豪語している人は男女問わず正気とは思えないし、「人生百年時代だからまだまだ」とか言ってる人は、健康平均寿命がほとんど伸びていないことを知らない脳みそハッピーセットな人でしかない。
当然、引退も視野に入っている。ゴミのような零細事業なので後継者なんて考えたこともないし、後継させる必要すらない。後継者を作りたいとも思ったことが無い。
事業の終わりを年代的に意識し始めた当方にとっては、国内の繊維製造加工業者が老齢引退の際に、廃業や清算を選ぶことは極めて当たり前の心理だと感じられるようになった。
今から20~30年後に、国内の繊維製造加工場は再び廃業ラッシュを迎えることになるだろう。今の工場社長はだいたいが若くて40代、年配だと60代である。
そうなると、60代社長だと20年後は80代だからほとんどの人が引退をしているだろう。今、40代の社長も30年後には70代である。その時の国の経済状況がどうなっているのかは不明だが、順当にいけば70代で引退を決めてもおかしくない。
引退する際、後継経営者がいる工場もあるだろう。しかし後継経営者がいない工場の方が多いだろうと推測される。
それゆえに、20~30年後には国内の繊維製造加工場の廃業ラッシュが再び起きると考えられる。もちろんゼロにはならないが、今の工場数よりも大幅に減るだろうと思われる。
さて、先日、2025年の衣料品供給量が発表された。
アパレルの国産比率「1.1%」に 四半世紀で生産量10分の1 – WWDJAPAN ‐ 最新ファッション&ビューティニュース情報
2025年に日本国内で供給された衣料品のうち国産が占める割合は、数量ベースで1.1%だった。24年と比べて0.3ポイント下がって過去最低を更新した。生産量は前年比11.0%減の5341万点。10年前(15年)の1億876万点に比べて約半分、四半世紀前(00年)の5億5159万点に比べて約10分の1に減ったことになる。
日本繊維輸入組合が、25日に発表した「日本のアパレル市場と輸入品概況2026年版」で明らかにした。
同資料によると、25年の衣料品の国内供給量は37億3311万点だった。そのうち輸入品は36億9046万点で、そのうち20億627万点を中国製品が占めている。
とのことで、国内製造された衣料品の数量は、このままのペースで減少すると、2026年には5000万点を割り込みそうである。多分、5000万点を割り込むだろうと考えられる。
この原因については、何度も様々なメディアで語られているが、改めて引用する。
国内の縫製工場の多くは中小・零細企業である。長年続く収益の悪化に加えて、近年の物価高や最低賃金アップが打撃になり、さらには経営の後継者不足、働き手の不足にも見舞われ、廃業に追い込まれるケースが相次いでいる。
とあり、その通りである。
この記事で評価したいのが、「経営の後継者不足」に言及している点で、これまで様々な記事で言及されることがなかった。過去の記事はいずれも「工員の後継者不足」ばかりに焦点を当てていた。
しかし、それは片手落ちもよいところで、いくら従業員がいても経営者がいなければ会社も工場も存続できない。工員の確保と同時に経営者の確保も必要不可欠なのである。
で、話を戻すと経営の後継者不足が20~30年後に一気に噴出して、多くの縫製工場が廃業・清算されると考えられる。それゆえに衣料品の国産比率はゼロにはならないもののさらに低下することになる。将来的には0・5%とか0・3%という感じではないだろうか。
今、国産を守ろうとする業者や工場が啓蒙活動も含めて様々に活動をしている。
当方の顔見知りも何人かそのような活動に参加しておられるのだが、いずれも中心が40代から50代で、20~30年後に引退を余儀なくされる世代である。今、熱心に活動をしておられる関係者の工場もその時には何割かが確実に廃業することになるだろう。
とはいえ、他の欧米諸国でも経済成長を果たしたのちに、縫製や生地製造などの繊維製造加工場が多く残っている国はほとんど無い。アメリカしかり、イギリスしかり。イタリアが比較的健闘しているくらいだろうか。あとはスペインあたりか。
そういう状況を鑑みると、日本も同様になることはあまり不思議ではない。もちろん、安全保障上の観点から磁性体や警察用の衣料品の国内製造は残すべきという意見には反対しないし、むしろ賛成だが、他の欧米諸国で縫製業や生地製造業が廃れて他の産業が主力となったことを考えると致し方ないとしか思えない。おそらく今後は中国、韓国、台湾あたりも縫製業や生地製造業は減少していくと考えられる。
そんなわけで、現在の経営者である40代~60代の皆様にはあと20~30年、何とかがんばっていただきたいと願うばかりである。
最後になるが、25年の国内衣料品全供給量は久しぶりに22年実績を上回ったとのことだが、22年が37億2770万点で、25年は37億3311万点だったので大きく増えたわけではない。600万点弱増えただけで全供給量が増加に転じたというよりは下げ止まり感、底打ち感が出たというところだろうと思う。(増加率はわずかに0・15%増)
26年の供給量も横ばい程度ではないかと考えているが、かつてのような40億点を突破するほどに回復することは今後ほとんど期待できないだろうと思われる。
なぜなら、前回も紹介した記事のように衣料品販売の国内市場規模の頭打ちが続いているからで、要は需要が伸びていないのに供給量を大幅に増えることはあり得ないからである。
全供給量も35億~37億点台をうろうろと推移し続けるのではないか。
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