メンズスーツ大手4社だけでも大きく違う各社の施策
2026年6月15日 企業研究 0
団塊世代の完全リタイアによって、メンズスーツは最大人口の客層を失った。
また、あと15年後くらいからは、次いでの最大人口である団塊ジュニア世代も完全リタイアの年齢に達してメンズスーツを買わなくなる。
何度も書いているが、冠婚葬祭を除いて、仕事も無いのにわざわざスーツを着る人はほとんどいない。いるとしたら相当の変態的マニアである。
変態的マニアは圧倒的に人口が少ないから、そこに焦点を当てたビジネスは必然的にニッチビジネスにならざるを得ない。
そんなわけで、メンズスーツ各社は生き残り策を15年くらい前から模索し続けてきたわけだが、当初はほぼ横並び施策だった大手4社だが、現在は随分と各社ごとに事業の特徴が顕在化し始めたといえる。
各メディアではこの15年間くらいずっと「低価格オーダースーツが最適解」だと主張され続けてきたのだが、なぜだろうか?ポジショントークだろうか?
低価格オーダースーツは一助にはなるが、各社共通の最適解では決してない。大手4社を見ても低価格オーダーにはそれほど力を入れていない社がある。
男性客全員が必ずしも低価格オーダースーツを強く切望している状態でもない。
各メディアが異様に低価格オーダースーツにこだわるのはポジショントークなのか、それともイメージだけで主張しているのか?ポジショントークならメディアは腐っているし、イメージだけで主張しているなら底抜けの間抜けである。
まず、業界最大手2社である青山商事とAOKIを見てみよう。
両社に共通している点は、飲食などの異業種事業部の売上高が相当に大きく成長している点である。これに先鞭をつけたのはAOKIで異業種事業の売上高が1000億円くらいある。青山商事は遅れて追随したが700億円規模まで成長している。
これは、コナカ、はるやまの2社にはない特徴であり、今後も異業種事業の売上高は両社ともに拡大し続けるだろうと考えられる。
一方、各メディアゴリ押しの低価格オーダースーツだが、青山商事は積極的に推進しているといえるが、麻布テーラーを買収したように、自前ブランドを育てるというよりはM&Aでの拡大を推進している。他方、AOKIは低価格オーダースーツはほとんどない。これは両社の視点が異なるためだろう。AOKIは低価格オーダーに旨味をあまり感じていないと思われる。青山商事は活路は見出しているのだろうが、わざわざ自前ブランドを育てるよりも企業買収で拡大した方が効率的だと考えているのだろう。
当方は従来型既製スーツの落ち込みを補完しているのは、低価格オーダースーツだけではないと常々から考えていて、カジュアルセットアップ、機能性合繊セットアップも大きな補完材料になっていると見ている。
何なら販売枚数は低価格オーダーよりもカジュアルセットアップ類の方が多いのではないかと思う。
この分野もAOKIが先鞭をつけており、コロナ禍でパジャマスーツ、アクティブワークスーツを投入し、現在までロングセラー商品となっている。青山商事はいつもの如く後追いだが、みんなのスーツは4万7000枚が売れて出足は好調だと報道されている。
大手4社の中で低価格オーダースーツに積極的に当初から踏み込んだのはコナカだろう。「ディファレンス」という屋号でいち早く取り組んでチェーン化している。
これは大手4社の中では独自の動きである。
はるやまには目立った低価格オーダースーツブランドはない。
また、コナカ、はるやまの2社はカジュアルセットアップで目立った商材は無い。
はるやまで目立っているのは、ビッグサイズ専門店が充実している点である。買収した岐阜のマンチェスに加えて、フォーエルがある。2種類もビッグサイズ専門店があるのは、はるやまだけなので大きな特色といえる。
2000年代前半に業界を席捲したツープライススーツショップだが、4社ともに原型をとどめていない。
まず、青山商事だがスーツカンパニーはスーツスクエアに屋号を変更したし、価格帯もツープライスではなくなって幅が広がっている。
AOKIはスーツダイレクトを早期に廃止してオリヒカに変更している。価格帯もツープライスではない。はるやまはパーフェクトスーツファクトリー、コナカはスーツセレクトでいずれも屋号は変更していないが、両社ともに価格帯は広がっていてツープライスではない。
4社すべてが価格帯を広げて品ぞろえをするようになった。
コナカ、はるやまともに飲食などの異業種がほとんどないか、あっても小さいため、アパレル不況の波が直撃しやすいというデメリットがある。
そのため、はるやまは、2026年3月期決算で赤字転落しているし、コナカも25年9月期決算では赤字継続していた。コナカは26年9月期決算では黒字回復の計画を発表しているが果たして実現するかどうかは不明である。
このように見てみると、大手4社といえども施策は様々で、総花的な青山商事、先進的で異業種に熱心なAOKIの2社がリーディングカンパニーとなっていて、衣料品依存度が高いコナカ、はるやまは苦戦傾向が続いているといえる。ディファレンスでいち早く低価格オーダースーツに積極的に取り組んだコナカの業績が決して順風満帆でないことを見ると、各メディアが提唱してきた「低価格オーダースーツ」が完全な補完事業になり得ていないことがわかる。
15年後の団塊ジュニア世代リタイアまでを含めた中高年層の大量リタイアという戦後80年間経験が無かった事態に対処するための正解は誰にも見えていない。それだけに今後、各社の工夫がさらに試されることになる。
「低価格オーダースーツ」で補完などという画一的な施策で乗り切れると思っているメディアやコンサルがおかしいのである。
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