上場することで得る物と失くす物と
2026年5月19日 企業研究 0
当方にとっては買い物先ではなく、あくまでも観察対象に過ぎないユナイテッドアローズだが、先日、ホールディングスするとともにTABAYAホールディングスへと商号変更した。
このことは広く報道されたのでご存知の方も多いだろうが、当方からすると「社名が変わりました」ということだけの情報でそれ以上でもそれ以下でもないと受け取っている。単なる一事象に過ぎない。
だから、例えば、昨年秋から当方も「認定エキスパート」として参加しているニューズピックスからコメントを求められても大したコメントもできないわけである。
カタカナで「タバヤ」と書くとカバヤ製菓みたいだし、何となく南国の島名みたいにも見える。
アルファベットでTABAYAと書くと全然何の社名かもわからない。TSUTAYAの仲間みたいにも見える。とはいえ、そんなものは慣れでしかないから、そのうちに聞き慣れる・見慣れることだろう。その感想しかない。
Yahoo!に掲載されたニュースを読んでいると、トップのヤフコメが目に入った。
ヤフコメなんて便所の落書きみたいなものだから、何が書かれていても(関係者からの匿名リークを除く)大した意味も無いし、企業側に届くこともない。
ほとんどが単なる個人のつまらないオキモチでしかないのだが、そのトップに「創業当時の専門店らしさが消えて、量産的なチェーン店になってしまって残念だ」というような意味のことが書かれていた。
表現の自由、思想の自由があるからそういう感想あっても不思議ではないし、ユナイテッドアローズに限らず、何事においても古参ファンの感想は同様である場合が多い。
当方だって他の事柄に関してはそういう感想を持つこともある。ユナイテッドアローズの商号変更には持たないが。
ただ、セレクトショップでありながら、上場し、売上高も1700億円弱にまで拡大した大手企業としては、量産型チェーン店にならざるを得ないことは理解すべきだろう。
古参ファンがいうような「個性的な専門店」であり続けたいなら、チェーン店化すべきではないし、上場すべきでもない。実際に他の大手セレクトショップチェーンはほとんどが上場していない。だから、株主の顔色をあまり過度に伺う必要がない。
TABAYAホールディングスへと変貌するユナイテッドアローズに問われる「覚悟」【小島健輔リポート】 – WWDJAPAN
この長い記事の結末でも同様のことが指摘されている。
上場企業となると、経営者と従業員だけではなく、株主への配慮も多大に求められる。株主からすれば「個性的な専門店」として小ぢんまりとまとまられるよりも、量産型だろうが、大規模チェーン化してガンガン設けて配当金を増やしてもらいたいと願っている。
もちろん、良心的な株主もいるだろうが、世の中はそんな性善説ばかりで成り立ってはいない。最大利益を求める株主の方が多数派だと認識して経営すべきである。
上場したということは誰でも株式が買えるわけだから、どんな人が買うかもわからない。
善意の株主だけを集めたければ上場など最初からすべきではない。
商号変更が発表された当日には株価が上昇したと報道されているが、逆に投資家が何に期待したのか当方にはさっぱり理解ができない。
商号変更は名称を変えただけにすぎず、店舗網も経営陣も何一つ変わっていない。それで何に対して過剰な期待ができるのか理解に苦しむ。
これと同時に「中高価格帯に特化する」という方針が発表されたが、これは完全に低価格ブランド「コーエン」の失敗から学んでユナイテッドアローズにとっては正解といえる。
資金力も知名度もあるユナイテッドアローズが低価格帯では惨敗を喫したのだから、そういう意味ではアパレルビジネスというのはそれだけ難しいということがわかる。
ただ、先に挙げた記事では、ユナイテッドアローズが現在展開している中価格帯が、実は客単価低下による低価格化の傾向が見られることを指摘している。
これは単にユナイテッドアローズの企画力や販売力が落ちたというよりは、物価高による生活防衛の一環として購買する洋服の値段を下げている客層が、中価格帯においても増えていることを意味する。
光熱費、食費が最優先され、洋服への支出が削られるのは極めて当然である。
光熱費・食費は命の維持にかかわるが、洋服は買わなくても死なないし病気にもならない。合理的に考えれば洋服への支出を削るのは当たり前である。
今後、恐らくは初期のコーエンほどではないが、ユニクロの少し上くらいでプラステくらいの「ギリ低価格ブランド」がタバヤから開発されるのではないかと思っている。
最後になるが、個性的な専門店がそのままの姿で大型チェーン化した例はないし、一瞬実現できてもそれが維持できた事例はない。
だから、ユナイテッドアローズに限らず、初期の品揃えや雰囲気そのままで、上場して1700億円規模にまで成長できるという選択肢はあり得ない。そんな無い物ねだりをしても無意味だし、それを意見として公開するのも無意味だと思って生暖かく眺めている。タバヤは上場企業として成長を追い求め続ければいい。
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