中高価格帯へのリブランディングの難しさとノースフェイス一本足打法の危うさと
2026年5月14日 決算 0
かつて、日本国内の量販店向けにライセンス展開されていたブランドを中高価格帯へリブランディングしようとする動きは、正直なところあまり成功しているのを見かけたことがない。
ゴールドウインが今年9月でウールリッチを終了する。
ゴールドウイン、26年9月で「ウールリッチ」販売終了 選択と集中を推進
ウールリッチは、2017年に八木通商とウールリッチ・インターナショナルの合弁会社としてウールリッチ・ジャパンが設立されたが、同年7月にゴールドウインがウールリッチ・インターナショナルの少数株主持分を取得し、同社を持分法適用会社化。ゴールドウインの100%出資によるウールリッチ・ジャパンの設立(同年12月)以降、同社が持つ高機能素材の技術とウールリッチのブランド力を掛け合わせたアウトドアラインの開発などを進めてきた。
営業中の7店舗は今後、順次閉店を予定。販売終了や店舗閉鎖の具体的な時期は現時点で未定としている。
とのことである。
当方も含めた国内業界の古い人からすると、ウールリッチというのは、量販店やジーンズカジュアルチェーン店で売られていたTシャツ1900円、ネルシャツ3900円のブランドというイメージが強い。
当方も90年代前半の販売員時代、自店でウールリッチのTシャツやネルシャツを販売していた。当時はハワードがウールリッチの製品をライセンス生産していた。
ウールリッチが歴史あるアウトドアブランドであることは承知しているが、それでも当時のイメージは鮮明に今でも焼き付いている。ちなみに、社員割引価格でTシャツやネルシャツを何枚か買った。
ゴールドウインがなぜウールリッチを閉鎖するのかというと、端的に言うと売れなかったからだろう。スタートから10年弱が経過しているにもかかわらず、いまだに7店舗しかない。しかもそのうちの2店舗はアウトレットである。プロパー店は5店舗しかない。
店舗数を増やせなかったのは、それだけウールリッチの売れ行きが芳しくなかったからだろう。
たったの7店舗しかないから閉鎖によるゴールドウインへの影響は軽微だろう。
それにしても2010年代にリブランディングが始まったライセンスブランドで売上高が目覚ましく拡大しているブランドをあまり見たことがない。
水甚のファーストダウン、ヤマトインターナショナルのペンフィールドはウールリッチと並ぶ代表例だろう。ファーストダウン、ペンフィールドもウールリッチと並んで90年代前半には量販店のカジュアル平場やジーンズチェーン店で「値ごろブランド」として販売されていた。
当時の記憶を引っ張りだすと、両ブランドとも5900円のダウンジャケット、中綿ブルゾンをメイン商材にしていた。同価格帯に美濃屋がライセンス生産しているコンバースの中綿ブルゾンがあった。
さて、今回のウールリッチの廃止について、ゴールドウインは「選択と集中」を理由に掲げている。不振ブランドだから廃止するのは理解できるが、個人的にはゴールドウインはすでに「選択と集中」しすぎているのではないかと見ている。
売上高のほとんどがノースフェイスなのである。直近で発表された3月期決算を見てみよう。
ゴールドウイン26年3月期、過去最高売上高に 中国人客減少で計画には届かず – WWDJAPAN
ゴールドウインの2026年3月期連結業績は、売上高が前期比3.9%増の1375億円、営業利益が18.0%増の258億円、純利益が同1.4%減の240億円だった。純利益の減益は、スパイバー社株式売却に伴う特別損失を計上したため。
売上高のブランド別内訳では、主要ブランド「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」は同3.1%増の1047億円、「ゴールドウイン(GOLDWIN)」は同30%増の65億円だった。
とのことで、売上高1375億円のうち、1047億円がノースフェイスの売上高で、次いで挙げられるゴールドウインブランドの売上高はわずかに65億円しかない。
ちなみに、ウールリッチの売上高は
また、子会社ブランドである「ウールリッチ(WOOLRICH)」(前期売上高15億円)は、26年9月での撤退が決定している。
とのことで、15億円しかない。10年弱かけて15億円なら撤退するのも当然の結末といえる。
ノースフェイスとゴールドウインブランドの売上高を合わせると1112億円となり、全社売上高の80%を占める。
明らかにノースフェイス一本足打法であり、選択と集中しすぎている。
ゴールドウイン社の現在のブランドラインナップを見てみると、知名度が一般的に高いのは、ノースフェイスを除くとヘリーハンセンとカンタベリーくらいだろう。あと辛うじて水着の「スピード」である。
ただ、これらをすべてを合わせても250億円くらいしかないので、一般的には知名度が高めだと思われているヘリーハンセン、カンタベリーの売上高がいかに小さいのかがわかる。
ノースフェイスのブームが過ぎ去り、減収に転じた際、今のままではゴールドウイン社の屋台骨自体が揺らぐ。それほどに集中と選択しすぎている。
それをわかっているからこそ、ゴールドウインブランドを育成しようとしているのだろうが、現在65億円のブランドが大きく育つまで何年かかることだろう。
ゴールドウインはすでに「選択と集中」しているのだから、第二・第三の柱となるブランドを育てることに注力すべきだろうと思って外野から眺めている。
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