青山商事、AOKIの決算から見えるメンズスーツ市場の厳しさ
2026年5月13日 決算 1
順位が入れ替わるとそれはニュースになる。
ただ、メディアの悪しき風潮としては「順位逆転」ばかりを過度に強調してしまいがちな点にある。その方がセンセーショナルで、購買部数やクリック数が増えるからだ。
しかし、この記事は割と冷静・公平に要因、背景、単純な順位逆転ではない点を伝えられていて評価に値する。
紳士服業界で首位交代 AOKIHDが青山商事を抜く – WWDJAPAN
紳士服専門店の2強の売上高が2026年3月期決算で初めて逆転した。長らく業界首位を走っていた青山商事は前期比3.4%減の1890億円。2位だったAOKIホールディングス(HD)は前期比1.0%増の1945億円となり、青山商事を抜いた。
とのことで、長らく業界1位の売上高だった青山商事が2位となった。かつて青山商事とAOKIは数百億円くらい売上高に差があった。2000年代半ばから顕在化したメンズスーツの需要減に一早く対応したのはAOKIの方で、ネットカフェやカラオケなどの異業種を育成し始めた。これによって、圧倒首位だった青山商事との売上高の差を年々縮めて行った。
いくら騒ごうが盛り上げようが、メンズスーツの需要減は止めらないと見切ってのAOKIの異業種進出の速さは素晴らしい経営判断だったといえる。
現在、青山商事も異業種に参入しており、メンズスーツの売上高減少をそれで補填している。逆に、異業種がほとんど育っていないコナカ、はるやまの2社は今後ますます業績は厳しくならざるを得ないだろう。
だが、記事中にもあるようにアパレル事業はいまだに青山商事の方が大きい。
青山商事もAOKIHDも事業の多角化を進めており、売上高において青山商事は約34%、AOKIHDは約47%をアパレル以外の事業が占める。アパレルに絞ると青山商事の売上高の方が依然として大きい。青山商事のビジネスウエア事業(「洋服の青山」「スーツスクエア」「麻布テーラー」など)は前期比6.6%減の1242億円、AOKIHDのファッション事業(「AOKI」「オリヒカ」など)は同0.3%増の1028億円だった。
とのことで、青山商事は麻布テーラーの買収など、アパレル事業の強化も比較的積極な姿勢が見える。
しかし、改めて見ると、両社ともに異業種の売上高の大きさが際立つ。青山商事で34%、AOKIに至ってはほぼ半数の47%が異業種売上高である。恐らく、2027年度以降もこの比率は両社ともにさらに高まり続けるだろう。
AOKIは早晩、半数以上が異業種売上高になるだろうし、青山は40%が異業種売上高になるだろう。
印象的なのは、青山商事のアパレル事業はいまだに首位をキープしているとはいえ、前年比6・6%減と結構な減少幅を記録していることに対して、AOKIはわずか0・3%減にとどまっている。外野から見ると、青山商事はいまだに新規出店に積極的な姿勢を感じるが、AOKIはほとんど新規出店をしていないと感じる。AOKIとしては「アパレル事業はこの水準を維持できれば良い」と考えているのではないかと思われる。
AOKIHDが首位に立った要因としては、アパレルの売上規模を維持しつつ、時間をかけて他事業を育成してきたこが大きい。複合カフェ「快活クラブ」、フィットネスジム「FIT24」などのエンターテインメント事業の売上高は767億円(同1.0%増)に達する。営業利益はファッション事業の85億円に対し、エンターテインメント事業は72億円であり、安定した収益源になった。
とあり、AOKIにおける売上高は異業種がアパレルよりも500億円くらい少ないが、営業利益はほとんど変わらず、たった13億円少ないだけとなっていて、異業種の効率性の良さとアパレル事業の低収益性が一目瞭然となっているから、AOKIがアパレル新規店をあまり積極的に出店しないのも当然の経営判断だといえる。
さて、興味深い一節がある。2010年代に盛んに「メンズスーツの落ち込みを低価格オーダースーツで穴埋めする」という論調が業界とメディアで繰り広げられたわけだが、低価格オーダースーツは客単価を上げることには成功しているが、数量的にはあまり役に立っていないことがわかる。
両社の本業である紳士服はオフィスのカジュアル化によってスーツ離れに歯止めがかからない。青山商事は長年、メンズスーツ(セットアップは含まない)の販売着数を公表している。それによると、16年3月期は222万着だったのが、26年3月期には95万着へと10年間で半減した。オーダースーツ人気によって平均販売単価は2万7484円から3万4917円へと上昇しているが、販売着数の減少をカバーするには至らない。
もちろん、これは青山商事だけのことだが、AOKI、コナカ、はるやまも内情はほとんど同じだろうと思われる。麻布テーラーの買収など積極姿勢がまだ垣間見える青山商事ですらこの水準なのだから、AOKIはもっと減少しているのではないかとさえ考えられる。
グローバルスタイル、カシヤマ、などの低価格オーダー専門店が増えたが、グローバルスタイルでようやく売上高100億円を越えたくらいなので、カシヤマが猛追しているが最大でもそれと同レベルだろう。他の低価格オーダースーツ各社の売上高はそれよりもはるかに小さい。
いかに低価格オーダースーツ市場が小さいかという話である。
いくら、オーダーが低価格で手が届きやすくなったとはいえ、スーツをこれまでよりも1着余計に作ったり、今まで以上に購入数量を増やしたりする人はほとんどいない。
さらにいえば、以前から何度も書いているように、晴れの日や冠婚葬祭以外で「わざわざ」スーツを着用したい男はほとんどいない。仕事上で強制されなければスーツを着用する人が減るのは当たり前だし、最大人口である老人層はリタイアすればスーツをわざわざ購入することは無くなる。
メンズスーツ市場は消滅しないだろうが、再び大きな成長に転じることは絶対に無い。そういう市場である。
・お知らせや仕事の依頼がありましたら、Gメールまでお願いします。
>スーツを1着余計に作ったり、今まで以上に購入数量を増やす人はいない
>晴れの日や冠婚葬祭以外で「わざわざ」スーツを着用したい男はいない
>メンズスーツ市場は消滅しないが、再び大きな成長に転じる事は絶対に無い
5年後10年後に上記のミナミさんのまとめを読み直してみたいと思います
21世紀になってから紳士の重衣料で食べてた人間の職が
ざっとみ3000人は無くなったと思います
細ったマーケットを数社で分け合う・食い合うという
構造はもはや存在しないだろうから
低価格紳士服重衣料の世界は最終的に3社程度に
集約されるのでは?
10年後、製造部門の人たちは全日本トータルで
300人もいれば十分というふうになるのでは?
そしてスーツがマストな職業は
1.うさん臭い不動産関係の営業マン
2.芸人
3.オレオレ詐欺の受け子
ぐらいになるでしょう