スポーツウェアへの支持が底堅いのは「着用時の効能がわかりやすい」からではないか
2026年4月30日 トレンド 0
元々、業界紙記者時代にはいくつもの分野を兼務したが、全く担当しなかった分野もいくつかある。その一つがスポーツウェアだが、独立後は原稿の依頼がいくつかあったため、スポーツウェアブランドも何度か取材をするようになった。
先日オープンした複合商業施設「クオーツ心斎橋」の内覧会に出席したが、その中でもデサント、ノースフェイスの取材もした。

スポーツウェアをたまに取材すると、「ファッション衣料に比べて『わかりやすい』」と感じる。スポーツウェアは基本的に機能性を重視している。一部の量販店向けの綿100%Tシャツを除いて。
この点はワーキングユニフォーム、アウトドアウェアと似ている。
スポーツウェアはいずれも機能性が明確で、そのスペックが数値化されて示される場合が多い。まあ、最も各社ともに「売らんかな」という姿勢が強すぎて、変な評価基準の数値スペックを示すことがたまにあるのだが。(笑)
吸水速乾機能だったり、発熱機能だったり、ストレッチ性や着圧などそういう機能性に富んだ衣料品、スニーカーを発売している。そうすると、当たり前のことだが、その衣料品やスニーカーがどういう状況に対応した商品なのかが素人でもわかる。
で、スペック差による価格差もわりと明瞭で、わかりやすい。高スペック品がその人にとって適品ではない。例えば発熱機能アウターがあったとして、高価格で発熱量が多いアウターが全員に適品とは限らない。暑がりの人なら低価格低発熱量のアウターで十分である。とは言っても、スペックの高低差と価格差が連動していることが多く、素人にもその差がわかりやすい。
これに比べるとファッション衣料はわかりにくい。
クオリティーの高い〇〇素材と言われても、たしかに手触りは良いかもしれないが、それだけのことである。高品質な〇〇素材を使ったのに値段を抑えましたという売り方をされるブランドもあるが、元来の高価格が適正なのかも素人には判別しづらいし、抑えましたという価格も「割安」とは思えない場合が多々ある。
前回も書いたが、ジーンズにはいまだにタテ落ち信仰がある。信仰があるというよりは復活したという感じが強い。
スキニーブームが終わって少しした2010年代半ば頃は、80年代古着調が求められ、タテ落ちせずにのっぺりとした色落ちが好まれた。
それがいつの間にかまた2020年代に入ってからタテ落ち信仰が復活している。
タテ落ちが古き良き時代のデニム素材を表していること自体は当方でも理解している。しかし、タテ落ちだから〇十万円しますと言われても、その価格なら要らないという人も少なくない。当方も〇十万円のタテ落ちジーンズは別に欲しくない。その何分の1かの6万6000円でパーフェクトグレードνガンダムのプラモデルを買って組み立てたい。
タテ落ちにしろ、高品質の〇〇素材にしろ、陰影のあるセンシティブなデザインにしろ、正直なところそれを身に着けたときの「良さ」をファッション衣料は実感しにくいことが多い。
しかし、スポーツウェア、スニーカーは(機能性ワーキングユニフォーム、アウトドアも)それを身に着けたときの効能が実感しやすい。
スポーツウェア、スニーカーが何年間も支持され続けている理由の1つはこの「わかりやすさ」ではないかと思う。
もちろん、ファッショントレンドとしてのスポーツテイストやアスレジャーは理解できるが、着用してみて不快であればそのスポーツトレンド、アスレジャートレンドは複数年に渡って継続しなかっただろう。
不快な服をファッショントレンドのために我慢して着続けるというようなドMマゾは世の中にそんなに存在していない。
そして、この「機能性による着用感のわかりやすさ」はワーキングユニフォームやアウトドアウェアにも通じている。
スポーツウェアがデイリーカジュアルファッションに取り入れられて久しいようにアウトドアウェアもカジュアルファッションに取り入れられて久しい。
近年はワークマンの躍進によってワーキングユニフォームがデイリーカジュアルファッションに取り入れられるようになってきた。ビンテージのワーキングユニフォームとは異なり、現代のワーキングユニフォームはデザイン的にはこれまでデイリーカジュアルとの親和性は低かった。いかにも作業員然としたブルゾンとかそういう物が多かった。これを容姿端麗な若者が着るとまだそれなりに見えるが、当方ごときが着ると本物の工場の人みたいになってしまう。
しかし、ワーキングユニフォームのデザインもカジュアルに親和性が高い物が増えており、カジュアルへの取り込みが着実に定着しつつある。
23年に「ブームが終わった」と業界メディア内でマニアが叫んでいたスニーカーだが、スニーカー市場全体は今でも伸びており、オン、ホカ、アシックスのような機能性の高いランニングシューズは引き続きカジュアルに取り入れられている。
個人的には、ノースフェイスが提唱しているように、ランニングシューズの次は高機能トレイルランシューズや高機能トレッキングシューズがカジュアルファッションに取り入れられ定着して行く可能性は十分にあるのではないかと思っている。
逆にいうと、ファッション衣料はマス層にも理解できるような「わかりやすさ」の提示が必要不可欠なのではないかと思っている。
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