オールバーズの敗因は「単なる実店舗戦略の失敗」だけではないという話
2026年4月22日 ネット通販 0
そんなに熱心には読んでいないし、結論にはあまり賛成しないことが多いが、米国市場の情報ということで流し読みしている連載がある。
それが先日、オールバーズの破綻からの米国市場でのDtoCの限界に触れていた。結論は別にそれほどの共感はなかったが、オールバーズに対してワービーパーカーの成長を対比させている。
価値はピーク時の1%未満 D2Cブランドの寵児 オールバーズが「死んだオウム」に転落した理由
一方、同じD2Cのパイオニアであるワービーパーカーは、全く異なる軌跡を描いている。
同社の2025年通期の売上高は前年比13%増の8億7190万ドル(約1307億8500万円)に達し、初の通期純利益の黒字化を見事に達成した。
この成長を牽引している最大の要因は、戦略的かつ積極的な実店舗の展開である。
同社は2025年に過去最多となる47店舗を新規出店し、合計323店舗体制となった。
さらに2026年には50店舗の追加出店を計画しており、経営陣はアメリカ国内で少なくとも900店舗を展開できる余地があると見積もっている。
とのことで、情報としては価値がある。
ワービーパーカーとはご存知だろうが、あえて補足するとDtoCのメガネブランドである。
オールバーズが店舗展開で失敗したのに対し、ワービーパーカーが成功した理由は、実店舗ならではの明確な価値を提供できたからである。
同社は全店舗の約90%に眼科検診の設備を導入し、アイケアの総合拠点としての機能を強化している。
と実店舗戦略の明暗を対比させている。
国によってそれぞれ法律などが異なることは言うまでもない。我々日本人にとってはメガネというのは、標準レンズならば定価1万円前後くらいで、20分くらいで加工が終わるという手軽な視力矯正器具である。
しかし、海外ではメガネはそんな気軽な物ではないらしい。確かな出典としては「破天荒フェニックス」という本によると、海外では完全な医療器具として扱われているとのことで、視力検査はもちろん、その調整にも非常に時間がかかるうえに高額なのだという。
だから最近ではインバウンド客が、我が国のジンズやゾフで簡単にメガネが作れることに感動するというYouTube動画が増えている。圧倒的に安くて速くてその上にフレームのデザインバリエーションも豊富なのだそうだ。
さて、DtoCの当初の触れ込みに立ち戻ってみよう。
中間業者を飛ばすことで、割安で高品質な物を消費者に届けられるから存在価値があるといわれてきた。
この定義に米国市場におけるワービーパーカーは完全に当てはまる。我が国だとゾフとジンズがあるので、ワービーパーカーが進出しても存続は難しいだろうと思うが。
米国における従来型医療器具としてのメガネよりも安くて高品質なサービスを提供しているのだから、消費者が指示するのは当たり前である。
では同じ実店舗展開を開始したオールバーズはどうして売れなかったのだろうか。
当方は米国に行ったこともないし、米国人消費者の性向も知らない。
それを踏まえた上でも、オールバーズの実店舗が売れなかったのは当然だと思う。ワービーパーカーには圧倒的な「お得感」「割安感」があった。しかもメガネというのは必需品である。
当方も近視用のメガネをかけているが、これが無ければ自転車に乗ることはできない。そこら辺を散歩するくらいの視力はあるが自転車に乗って移動するのは無理である。
だから自転車に乗るときは必ずメガネをかける。それほどにメガネは必需品である。
この必需品が他社よりも圧倒的に安いのなら、それは必ず支持を集める。
一方、オールバーズはどうだろうか。
スニーカーである。必需品ではない。他の種類の靴がある。そしてスニーカーは競合他社が多い。その中において圧倒的に「割安感」があっただろうか?
ゴールドウインが提携して販売している国内商品価格を見てみると「割安感」は全くない。基本的に1足2万円強である。
ABCマートに行けば9000円くらいのナイキのスニーカーがある。型落ち品なら5900円くらいで売られている。どちらが「割安感」があるだろうか。おそらく米国でも同じような状況だったのだろう。現地のオフプライスストアあたりに行けば、ナイキやアディダス、リーボック、プーマあたりの型落ち品番がオールバーズよりも安く売られていたのではないだろうか。消費者がどちらを買うかは火を見るより明らかだろう。
「履き心地が良い」という評価もあったが、ナイキだってアディダスだってアシックスだって履き心地の良いスニーカーはある。また同等価格なら「オン」「ホカ」の方が履き心地がよいだろうと思われる。何ならオールバーズよりも安い1万円台後半のオンの品番もある。
そうなると、以前のブログにも書いたが、オールバーズに残っているのは「環境にやさしそう」というストーリーしか残らない。DtoCなのに割安感もなく、履き心地の良さでは競合がひしめき合っていて、環境配慮ストーリーしかないスニーカーを多くの人が支持しないのは極めて当たり前の結果だろう。
仮にオールバーズが環境配慮ストーリー以外に、ワービーパーカーのような医療的スペックを持っていたなら売れ行きは全く異なっただろう。例えば外反母趾にも優しいとか、膝に優しいとか、腰痛に優しいとか、そういう医療的スペックである。それがあれば、オンラインでも売れただろうし、実店舗でも売れただろう。
敗因は、環境配慮ストーリーしか持っていなかった点にある。
この記事は
D2Cモデルは中間業者を排除すれば簡単に利益が出るという魔法の杖ではなかった。
デジタルネイティブなブランドであっても、最終的にはリアルな実店舗での緻密な経営戦略や、他社には真似できない圧倒的な顧客体験の提供が不可欠である。
と締めくくられているが、これはまさにその通りだろう。
さらに加えるなら、実店舗戦略以外に卸売りも重要である。これは以前にも触れたが、卸売りを削減してDtoCを強化したナイキが減収大幅株安に見舞われていることがそれを証明している。
「ネットで何でも完結できる」という主張があるが、世の中はそんなにイージーではないということだろう。
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