MENU

南充浩 オフィシャルブログ

バブル期以降ずっと「三十貨店」「五十貨店」と呼ばれた百貨店を今更揶揄しても(笑)

2024年10月1日 百貨店 0

以前にも書いたが、ヌー茶屋町のリニューアルプランとして「アニメイト」がテナント入店することが発表された。

70年生まれでアニメ好き・漫画好きでファッションとは無縁の学生生活を送った当方からすると、エリアが凋落してガラガラになったとはいえ、「隠れ家的オシャレビル」みたいな立ち位置でかつてはとらえられていたヌー茶屋町にアニメイトが目玉テナントとして入店する時代が来るとは、15年くらい前までは想像もできなかった。

 

また、9月6日に一部分が先行オープンした「グラングリーン大阪」だが、フロアマップを見ると、衣料品系は1階のパタゴニアしかない。あとはコーナンだったりコンビニだったり飲食店だったりする。

 

この2つの施設の姿勢は如実に「衣料品は集客の目玉テナントにはなりにくい」という時代の空気感を反映していると考えられる。

 

当方も重ねて書いているが、自分が買い物をする際に衣料品への興味がとみに薄れてきている。これが時代の空気感を反映したものか、加齢によるもろもろが弱ったものなのかは、我が事ながら判然としない。ただ、40代前半までのような衣料品に対しての強い物欲は今はほとんど無い。

とは言っても、パタゴニアしか無いグラングリーン大阪にはよほどの用事か仕事でもない限りは足を踏み入れることはないだろうと思っている。

さらにいうと、昨年にオープンし髙島屋SC京都店も目玉テナントは、まんだらけであり蔦屋書店で、衣料品ブランドの数は少なめにラインナップされており、今回の両施設も一連の流れに乗ったものだろうと想像できる。

 

 

先日、9月21日にガンプラ新商品「HGライトニングバスターガンダム」が発売されるので、ガンダムシード人気を考慮していつもより早めに近所のジョーシンに到着した。9時45分ごろである。

すでに20数人が行列を作っており、ライトニングバスターガンダム人気か?と身構えたのだが、実はその日は、トミカの新作発売と、バンダイによる新シリーズプラモ「アーマードコア」の発売も重なっていた。そのためにいつもより行列が長かった。

内訳でいうと、バスターガンダム狙いが16人(当方含む)、トミカ狙いが7人、アーマードコア狙いが7人(バスターと両方買う人は除く)という割合だった。

結果的には並んだ人全員は目当ての商品を購入できたわけだが、田舎の国道沿いのジョーシンで毎月、毎週、こうしたホビー品・玩具の争奪戦が繰り広げられており、さらに視点を広げると全国各地の家電量販店各店で争奪戦が毎月、毎週繰り広げられているということを考え合わせると、ホビー品需要の高まりは一昔前とは比べ物にならない過熱ぶりであり、それが定着化しつつある。

それを考えると各施設がサブカル系のテナントを目玉に据えることは当然の帰結といえる。

逆に毎月・毎週全国各地の各店舗でこれほどの行列ができるような衣料品ブランドは存在しない。強いて挙げると、ナンタラ感謝祭のユニクロくらいだろうか。それでも年に2回か3回しかない。

 

 

そんな中、こんな記事が掲載された。

 

特選、化粧品、食品の「三十貨店」 – WWDJAPAN

百貨店は「五十貨店」「三十貨店」に移行するのでしょうか。

昨年9月に米ファンドに売却されたそごう・西武は、旗艦店である西武池袋本店の百貨店区画を半分に縮小すると発表しました。新たに池袋本店の土地・建物のオーナーになったヨドバシカメラ(ヨドバシホールディングス)が大型店を出店するからです。集約した百貨店区画は、主に特選(ラグジュアリーブランド、時計・宝飾)、化粧品、食品の3領域を中心とした売り場に変わります。最大の面積を誇っていたアパレル(婦人服、紳士服、子供服など)は、長年の主役の座を明け渡すことになります。

 

とある。

当方はこの見出しと論調に強い違和感を覚えたのだが、いわゆるファッションど真ん中で暮らしている人々の感覚は一般マス層とはズレているとしか言いようがない。

恐らくは、新しい西武池袋店のメイン売り場から衣料品が外され、特選・食品・化粧品の3つが選定されたことに対する残念な気持ちからそういう論調になったのだと推測できる。

しかし、この見方は過去の歴史的事実から振り返ると正確ではない。なぜなら、80年代のバブル期以降に急速に衣料品売り場比率を異様に高めた百貨店は90年代後半から2000年代前半にかけてすでに「70貨店」「50貨店」「30貨店」などと揶揄されていたからである。

それまで百貨店内にあった玩具売り場、書店、家電売り場などが排斥され、それが衣料品売り場に変わったからだ。あとは百貨店名物大食堂や屋上遊園地などもこの頃に排除されている。

 

結局、百貨店から子供連れのファミリー客が逃げて戻ってこなくなった理由の1つはこの施策にある。かつて子持ちだった当方から言わせれば、百貨店は到底子供を連れて行ける売り場ではなくなっていた。洋服に興味の無い子供からすると苦痛の売り場である。

その百貨店のメイン構想から衣料品売り場が排除されたことに対して「五十貨店」「三十貨店」と衣料品メディア業界が揶揄するのはいかがなものか。

すでに何年か前から百貨店の売り上げ構成比でトップになっているのは「食品」である。だから、新生・池袋西武が食品を重視するのは何の不思議もない。

 

 

衣料品に強い執着が無くなって、毎月ガンプラ争奪戦に参加している当方からすると、新型商業施設が衣料品ではなく、食品やホビー品、サブカルを目玉テナントに据えることは当たり前としか思えない。業界メディアはまずその現状を認識すべきだろう。

 

 

 

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ