メディア的には「イベント初参加」というのはニュースバリューがある。
とくにそこそこに知名度の高いブランドや企業がイベントに初参加することはメディアとしては「報道する意味がある」と考える。

逆にイベント自体にも参加者にも知名度がなくてもメディアはそれを報道する価値があると考える場合が多い。

ニュースの価値の一つに「常とは異なる状態にあることを伝える」というものがあり、それに照らし合わせると「初参加」「初開催」「初出店」というのは「常」とは異なるから報道する価値がある。
一方、2回目・3回目になると、よほどの知名度がないとメディアは報道する価値を見出さない。

これがメディアの考える現実である。

逆に運営側・出展側からすると「続けられている」ということの方が、「初」よりも重要だと考えることが多い。
なぜなら、初参加・初開催というのは、勢いとタイミングでやってしまえる要素が多いが、数回以上続けようと思うとそれこそ資金繰りやら人員の確保やらが必要となるため、より緻密な組み立てが求められる。

「初」よりも長く続けることの方が難易度が高い部分が多い。

さて、先日で東京コレクションが終了した。
ファッション感度の鈍い筆者にとってはまったくの興味の対象外イベントである。

そんな中、アダストリアの「HARE(ハレ)」がコレクションに初参加したらしい。
そこそこ知名度が高い大手企業ブランドの「初」参加というのはメディア的には報道価値があるから、それなりによく報道された。

しかし、個人的には「初参加したよ」という以外にはほとんど知るべき要素はないと考えている。
断っておくが別にアダストリアが嫌いなわけでもHAREが嫌いなわけでもない。
これがアダストリアでなくハニーズでもライトオンでもユニクロでも無印良品でも同じように考える。
「初参加したよ」ということ以外に知るべき要素はほとんどない。

なぜなら、東京コレクションで大手企業ブランドがショーを開催するのは珍しいことではないからだ。

あまり昔のことをほじくり返しても意味がないから、近年のことを振り返ってみよう。

ワールドのタケオキクチは何度も東京コレクションに参加している。
また、2013年春夏コレクションにはウィゴーのwcが初参加している。

その他、センソユニコ(現、松尾インターナショナル)のブランドが参加したこともあるし、探せばまだまだ出てくるだろう。

大手アパレル企業ブランド、大手SPA企業ブランドの東京コレクション参加は決して珍しいことではない。

メディアではない外野のオッサンからすると、「初参加」よりも今後定期的に参加を続ける方がハードルは高いと思う。

コレクションショーに限らず、合同展示会でもなんでも初参加でそれなりの成果をあげることはかなり難しい。
ここでいう「成果」とはビジネスの拡大、売上高の拡大である。

大手総合展示会の社員を3年間経験したこともあるが、初出展でいきなり予想を越える受注額を獲得できた企業やブランドというのは数えるほどしかない。
統計を取ったことはないが、体感的にはそれは1割くらいだろうか。
残り9割はよくて費用対効果トントン、出展費用の方が高くついたということも珍しくない。

逆に何度か出展をし続けて成果が出てきたという企業やブランドは多い。

海外の素材展示会でも同じで、昨今は助成金やら補助金で3年間だけフランスやイタリアや中国に出展する産地企業が多い。
そういう産地企業の多くは助成金の終了とともに海外出展も終了する。
効果はあんまりなかったと話す産地企業は多い。

一方、国内2位のデニム生地メーカー、クロキは欧州の高級ブランドのほとんどと取り引きがあるが、海外展示会に出展し続けている。正確には10年近くは続けて出展している。
取り引きが成功した理由はさまざまあるだろうが、継続し続けるところが多くの産地企業とは一線を画している。

初参加、初開催だけでやめてしまったほとんどの場合は、それ以降何の効果もない。
1000万円の費用をかけて海外で特大花火的イベントを仕掛けた団体もあったが、現在ではすっかりその事例は忘れ去られている。
もっといえば、300万円のイベントを3年続ける方が効果的だっただろう。

初参加だけで終わるなら、それは単なる「思い出作り」に過ぎない。
wcの東京コレクションなんかはその「思い出作り」の好例といえる。

そういう意味から考えると、せっかくなのでHAREには今後も出展を続けてもらいたい。

ただし、10年以上も出展を続けて「成果」が伴わないなら、それはそれで問題だといえる。
東京コレクション参加ブランドの中には10年以上続けているのにほとんど「成果」のないブランドもある。

それは、作っている物、営業活動のやり方、販促広報活動のやり方のどれか、もしくはそのすべてが間違っているからだといえる。
そういう場合は軌道修正が必要になる。
いわゆる、Plan(計画)→ Do(実行) → Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルが必要だということである。

それができなければ、市場から退場を迫られるのは、デザイナーズブランドだろうが大企業ブランドだろうが関係ない。

東京コレクション
東京事変
EMI Records Japan
2012-02-15