連休中にふとこの記事を読んで、その中のグラフに目が止まった。

100年続くアパレル工場とは
http://www.huffingtonpost.jp/toshio-yamada/apparel_b_8168812.html

べつに内容に深く共感したわけではない。

その中でファッション専門学校生の人数の推移というグラフが掲載されていてこれに興味をひかれた。

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ファッション専門学校生の数は77年をピークにずっと減り続けている。
途中に微増する時期はあるが、77年・78年のピーク時までに戻ったことはない。

この状況を指して、「減り続けていることが残念」という意見があるが、筆者は別にそうは思わない。
学校関係者にはお気の毒だが、アパレル産業が若者にとって魅力ある産業ではなくなったのだから志望者が減少するのは何の不思議もない。

このグラフのソースはイマイチよくわからない。
しかし、某学校関係者が2年くらい前に見たことがあるそうなので、2013年ごろに作成されたのではないかと思う。

2012年は2万人となっている。
しかし、某専門学校の理事長がすでに2013年ごろには「全国のファッション専門学校生の人数は13000人くらい」と発言されており、この2万人でさえちょっと多めに見積もられているのではないかと思う。

さて、興味深いのが76年の4万人強から翌年の77年に9万人弱に倍増している点である。
このグラフが事実に近いとするならば、ファッション専門学校生の人数は徐々に微増を続けてきたのではなく、77年にいきなり倍増したということになる。

そういう意味ではジワジワと人気が高まってきたのではなく、何か特別な事件や事態が起きてそれに影響されたのではないかと考えられる。

筆者は70年生まれなので、76年当時は6歳であり、77年当時は7歳だ。
当然、その当時の社会的風潮や雰囲気はわからない。

先達によると、当時、パリコレで日本人デザイナーが大活躍をしたからそれに影響を受けたのではないかということである。
また別の先達によると、75年後半に放映されたドラマ「あこがれ共同隊」の影響もあるのかもしれないという。

ちなみに「あこがれ共同隊」についての詳細は以下を参考にしてもらいたい。

http://middle-edge.jp/articles/0bJEd

たしかに影響があったのかもしれないが、その割には視聴率が振るわずに打ち切られている。
しかし、こういうドラマがわざわざ作られたということは、これに近い雰囲気が社会に蔓延したと考えて間違いはないだろう。少なくともテレビ局側はそう考えていたということになる。

また別の先達によると、77年にポパイ創刊、78年にVANが倒産しているということなので、ファッションブームが76年ごろから醸成されていたとも考えられる。

ところが、7年後の85年には早くも5万人を割り込む。
ものすごい勢いで生徒数が減少していることがわかる。
さらに生徒数は減少を続け、バブル絶頂期の89年・90年には76年当時と同じ4万人強にまで生徒数が減っている。


このあたりになるとさすがの筆者も社会的雰囲気は覚えている。

たしか85年とか86年という時期、ブランドショップはすさまじい人気だった。
バーゲン時には開店前から長蛇の列ができているし、DCブームも到来した。
にもかかわらず生徒数は減少しているのである。

今でも業界では「バブル期は飛ぶように服が売れた」と認識しているが、そういう絶好調な業界にもかかわらずそこに入りたいという若者は減少し続けていたということになる。
しかもバブル期の89年には団塊ジュニアの先頭集団が高校を卒業する。
18歳人口は現在よりも当然多かった。

「空前の好景気+18歳人口の増加」にもかかわらずファッション専門学校への入学者数は減少している。

この事実を学校関係者はどう読み取るのだろうか。

現在の生徒数減少は18歳人口の減少という側面が少なからずある。
まあ、減っても仕方がない。
しかし、89年~92年ごろまでは18歳人口は増加を続けていた。
この時期にも生徒数が減っているということは、すでにアパレルは若者にとって魅力的な産業ではなくなっていたということになる。

アパレルの衰退はすでに30年前から起きていたといえるのではないか。
なにもバブル崩壊後に始まったわけではない。すでに80年代には若者に見放された業界だったといえる。

先達に言わせると、「80年代に入ってすぐにアパレルは他の産業間競争に敗れて、優秀な人材はこの業界に入らなくなった」ということになるが、まさしくその通りだろう。

その後、99~01年にかけては生徒数が微増する。
これは就職氷河期のピークで大卒でも就職できない時期だったから、「手に職を」と考えた若者が微増したと考えられる。
その後、2004年以降はまた減り続けるが、2004年以降は景気が回復して大卒が就職しやすくなったからまた減少したのだろう。

そして2008年からさらに減るが、これはリーマンショックによる不景気だろう。
また、少子化の影響もあるし、今度は労働力不足から売り手市場になったこともあるだろう。
ファッション業界なんかに来ずとも、もっと条件が良くて成長性の見込める企業に大卒者が就職しやすくなったからである。

おそらく2015年、2016年はもっと生徒数が減少しているだろう。

なぜならアパレルは不景気産業である上に、労働条件も良くない。産業としての成長性もあまり見込めない。
だから逆に言えば、学校関係者はお気の毒だが、生徒数が足りないくらいの方が、業界との需給バランスが成り立つのではないかと思う。

どうせ、就職先もあまりないし、就職したところでブラック紛いの企業が多い。
べつにユニクロのことではない、ブラック紛いの企業はアパレル業界には掃いて捨てるほどある。
正社員雇用だけど各種保険が完備していないとか、タイムカードがないとか、そんな企業はざらにある。
解雇は常態だし、そもそも企業自体がすぐに倒産する。
小規模・零細企業だけではなく著名ブランドだってすぐに倒産してしまう恐ろしい業界である。

まあ、それでも何とかしたいと思う人がいるなら、まずは業界での労働者の待遇を改善し、業界の成長性を提示・実証することだろう。
倒産が頻発するのはそういう産業構造だからこれは改善しようがない。

それがなされないままに、「夢」とか「希望」とか「楽しさ」を提示したところで専門学校生の人数が増えることは永遠にない。人間は「夢」や「希望」のみでは生活できないからだ。
まずは賃金、待遇である。そして産業としての成長性である。
成長性のない産業や企業に「夢」や「希望」は持てない。


だから個人的には、このまま生徒数は自然減に任せるのが良いのではないかと思う。

ちなみにファッション専門学校の淘汰はすでに始まっており、直近の事例でいうと、大阪ファッションデザイン専門学校はすでに生徒募集を停止したし、文化服装学院広島校も来春以降の生徒募集を停止した。
生徒募集を停止したということは、在校生が卒業したら閉校するということである。
今後、さらにファッション専門学校の数も生徒総数も減少すると考えられる。