南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

大塚家具

大塚家具の株主は至極まっとうな判断を下した

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 大塚家具の株主総会が開かれ、話題となっていた父娘対決で、娘社長が勝利をおさめた。

創業者であり、家具のカリスマである父会長と、大手銀行やコンサルティング会社出身の娘社長との対立は、親子関係があるから世間の注目を集めたが、血縁が無ければどこの会社でも経営方針の対立だといえる。

金融機関は、娘社長を支持するのではないかと思っていたがその通りになった。

父会長がこれまで作ってきた高級品・接客重視の販売に対して、娘社長はイケアやニトリを視野に入れた中・低価格で接客を軽減したセルフ・カジュアル販売店を提唱した。
どちらも一長一短があり、ビジネスには、これをやったから確実に売れるということはない。
どっちの方策を採っても上手く行くかもしれないし、上手く行かないかもしれない。

今回は家具業界のことだが、同じような事例は繊維業界・アパレル業界にも数多くある。
産地の製造加工業者にだってある。

カリスマ親父と対立する息子役員なんてのは産地でもザラに見かける光景である。

カリスマである創業者や先代が年老いてくると、後継者が問題になる。
家具にしろ、服にしろ、繊維製造にしろ、カリスマと言われる人はセンスというか、嗅覚というか感覚に秀でている。
幾人かそういう方に直接取材をしたことがあるが、性格の好き嫌いは別にして、あの感覚の鋭さは天性であり、学んで近づくことはできるが、完全コピーすることは不可能である。

後継者に先代や創業者と同じくらいのカリスマ性があるというケースは滅多にない。
皆無といっても言い過ぎではないだろう。

となると、後継社長は先代や創業者と同じ企業経営はできない。
逆にカリスマをまねるととんでもないことになる。

とくに大塚家具の場合、長男を差し置いてなぜか、姉である現社長を後継者に選んでいる。
現社長は大手銀行やコンサルティング会社で育っているから、理詰めのビジネスを好むものと推測される。

そういう人を後継社長に選んだのだから、今後は、そういう方向性に流れるであろうことは、最初から分かっていたはずである。とくに家族なら。

ここからは個人的な意見だが、この娘社長が、逆に親父と同じ経営スタイルを選択したとしたら、そちらの方が経営危機に陥ったのではないかと想像してしまう。


これが家族数人で経営している零細事務所なら、潰れようとどうなろうと大したことはないが、大塚家具は上場企業であり、昨年末で1749人の従業員がいる。
当然、新社長としては1749人の従業員の生活を支えなくてはならない。企業もなるべく長続きさせなくてはならない。
「めんどくさいから事務所たたむわ」というようなことは許されない。


であるなら、新社長としては自分ができる範囲でのビジネスを企画構築するほかはない。
新社長が、中・低価格のセルフ販売路線を企画するのは当然だと個人的には思う。

株主総会の記事が掲載されている。

大塚家具、優勢だった父・会長はなぜ大敗したのか?具体論なき感情的発言連発の代償
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150329-00010003-bjournal-bus_all&p=1


この「知」対「情」アプローチが、株主総会で両者の明暗を分けたのである。

とある。
もちろん、娘社長が知で、会長が情である。

勝久氏は発言内で「私には5人の子供がいて、最初の子供はとても難産で」などと家族のことに触れ、それが一般株主に強い違和感を覚えさせた。その後、一般株主が何人も質問に立ったが、勝久氏の独善的な差配を指摘したり、今回の騒動を批判する発言が続いた。

さらに勝久氏の妻、千代子相談役も株主として発言したが、久美子氏を諌めるような長い発言の途中で一般株主から失笑が漏れたり、「もうやめろ」などと野次を浴びる有様となってしまった。勝久氏は最後に次のように訴えたのだが、将来のビジョンや方策を示すことがなかった。それが一般株主の支持を得られなかった最大の理由だろう。


とある。

親族間の話合いなら情に訴えかけるのは有効な一手段であるが、株主総会という場にはふさわしくない。
株主総会は会社の今後の方向性やビジョンを討議する場であり、家族間の情とか愛憎を見せつける場ではない。

この記事が事実なら、筆者が株主でも会長を支持することは絶対になかっただろう。

この記事は

単純に「自分を信じてくれ」では、他人である一般株主に対して通用しない。

と結んであるが、まさしくその通りである。

そして個人的には、情に訴える経営が可能なのはカリスマだけであると思う。
そのカリスマ会長の年齢はもう72歳である。あと10年ほどすればほぼ確実に引退せざるを得ないだろう。

娘社長はあと10年経ってもまだ56、57歳くらいである。

カリスマ会長が今、もし50代か60代なら、「俺を信じてくれ」でも良かったかもしれない。
あと20年~30年陣頭指揮することが可能だからだ。
しかし、あと10年くらいしかないなら、今のうちに次のビジネスモデルを模索するのは新社長としても株主としても当然ではないか。

やや的外れかもしれないが、ジョブズというカリスマを失ったappleだが、新CEOに代わってからの方が、iphoneの売り上げ台数を増やしている。
もし、新CEOがジョブズと同じカリスマを演じようとしたなら失敗した可能性が高いのではないか。
新CEOがジョブズとは異なる路線を採ったことが奏功したのではないかと思えてくる。

今回の事例は、アパレル業界や繊維業界にとっても他山の石となるのではないだろうか。

一般消費者はそこまで家具も服も好きではないし、目利きでもない

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 今、注目を集めているのが大塚家具の親子の争いであろう。
大塚家具の親子争いに関してはさまざまな分析記事が出ているが、そのレベルはピンキリである。
その中でもっとも秀逸だと感じたのが先日の東洋経済オンラインの記事である。

今回はそれをご紹介したい。
そこには家具業界だけではなく、アパレルやその他の業種にも通じることが書かれてある。

大塚家具、「お家騒動」で見落とされた本質

家具業界への2つの革命と3つの減速要因
http://toyokeizai.net/articles/-/61988


長い記事なので詳細は全文をお読みになっていただきたいが、特に注目したいのは以下の部分である。

2点目は、なんといっても商品のアピール力だ。高級品購買層にはまだ大塚家具は強みを発揮している。問題は、中間層だ。筆者のような「良い家具にこしたことはないけれど、ニトリでじゅうぶん」という正直な感想をもつ購買層は、他社に逃げていった。実際に、イケアやニトリ、そしてカッシーナといった同業他社が好調の中、大塚家具は低迷にあえいだ。

もちろん異論をお持ちの方もいようが、筆者の周りに聞いてみると大塚家具に優位性を感じているひとは少なく、「高そう」「店員さんがくっついてくるのがイヤだった」「いつもすぐ引っ越すから安くていい」「いまいち良い家具かわからなかった」という本音が出てきた。もちろん高尚な議論もできるだろうが、なによりもマスイメージとして競合他社に後塵を拝したのが大きいように思う。


とのことである。

これはアパレル業界にも言えることではないだろうか。
ニトリをユニクロに、大塚家具を百貨店・専門店向けアパレルに入れ替えればそっくりそのままではないか。

我々を中間層と言って良いのかどうかはちょっとためらいがあるが、マスマーケットが「良い服にこしたことはないけれど、ユニクロでじゅうぶん」と考えていることは異論がないだろう。
だから、昨年秋冬から値上げしても買い上げ客数は落ちないのである。
また値上げしたと言っても、百貨店向けブランドや専門店向けブランドと比べるとまだ安い。
十分に庶民が買える値段帯である。

そして、

3つ目は、お家騒動のことだが、勝久会長と久美子社長ではおそらく会社経営の考え方に大きな違いがある。大塚勝久会長は家具が好きで、家具に合わせて家を替えるといい、さらに誰も勝てないほど家具バイヤーとして一流だった。すなわち、その卓越さゆえに、ワンマンにならざるを得ない側面があった。

である。

これもアパレルにありがちである。
独自のセンスを持ったカリスマ経営者である。
しかし、カリスマはそのうちに老いる。
老いなくても長期間君臨している間に、カリスマの感覚と世情がズレる。
これは避けようがない。

カリスマ経営者が時代の変化に対応できずに会社を潰したことはアパレル業界では珍しくない。
カリスマの作り上げたモデルはいつしか時代に適応できなくなる。
それが個人のセンスに支えられたものならなおさらだ。
個人のセンスほど脆い物はない。

個人のセンスが、どの時代にも適応するような普遍のモデルになることはありえない。


アパレル業界には、「服好き」で「卓越したセンス」を持つカリスマが多数存在する。
そういう人たちはユニクロを否定する。もしくはユニクロを買う消費者を否定する。
「ユニクロは邪道だ」とか「消費者の感性が退化した」とか。
しかし、それは少数派の意見であり、この大塚会長がニトリやイケアを否定するのと同じである。
一般消費者の大多数は大塚会長ほど家具が好きでもないし、目利きでもない。
ニトリやイケアでじゅうぶんなのである。
そしてニトリやイケアのデザインセンスは悪くはない。とびきりではないが、落第点でもない。
ほどほどそこそこにおしゃれ感もある。

アパレル業界のカリスマほどには一般消費者は服が好きでもないし、目利きでもない。
彼らの多くにはユニクロでじゅうぶんなのである。
そして、昔はともかくとして今のユニクロは見た目のデザインはほどほどでそこそこに良い。
ユニクロに限らず、無印良品にしろハニーズにしろライトオン、ポイント、ウィゴー、ジーユーみな同様である。

そして最後はこう締めくくられている。

市場環境の変化によって中間消費者層を競合他社に奪われ、創業者個人で引っ張ってきた組織のゆがみが露呈した。こう考えると、まるで大塚家具だけではなく、いくつもの日本企業で共通している内容だ。大塚家具を舞台にしたお家騒動は、日本のあちこちで起きていることを象徴しているように思えてならない。

と。

これもまさしくその通りで、カリスマ創業者が長期君臨したことによるゆがみは、何も家具業界だけではなくどの業界でも生じる。
アパレル業界も百貨店業界もGMS業界も。それで潰れた企業がいくつあっただろうか。
旧そごうしかり、旧ダイエーしかり。

今後、ユニクロやポイントがそうならないとは限らない。なりえる可能性も十分にある。

蛇足だが、大塚家具が赤字転落した理由も述べられている。
それはもともと薄利だったため、販売点数が下がれば利益も下がるということである。
記事中にあるように利益率はほぼ変わっていない。
販売点数が下がればそれに比例して利益も薄くなり、そして赤字転落してしまったということである。
これもアパレルでもありがちな現象ではないか。

かといって、原価率をむやみに引き下げて粗悪品に高額な値段を付けるのもどうかと思う。
某百貨店アパレルのように原価率18%の商品なんてユニクロ商品以下である。

閑話休題


大塚家具の経営者がどちらになるのかはわからないが、もし大塚会長が返り咲くようなことがあったとして、ニトリやイケアで十分という大多数の一般消費者の感覚が理解できなければさらに赤字が続くだろう。
そしてこれと同じことはアパレル業界にも言えることで、カリスマがユニクロやその他低価格SPAで十分という多くの一般消費者の感覚が理解できないのであれば、業界全体の低迷はまだまだ続くことになるだろう。


そういう観点からこの東洋経済の記事は非常に秀逸だったといえる。







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