南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

台東デザイナーズビレッジ

商品開発のために各工程の知識を共有化しよう

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 先週の金曜日、台東デザイナーズビレッジのご依頼で2時間の講演を行った。
出席者80人前後、そのあとの懇親会の出席者は30人前後と、けっこうな数の聴衆にお集まりいただき、驚くばかりであった。
どうでも良いことだが、これが筆者にとっての東京での初講演である。(笑)

これもひとえに台東デザイナーズビレッジの集客力ではないかと思う。
筆者が個人で講演会を主催したところで一体どれほどの聴衆に集まってもらえるかどうか。

2時間(実質1時間半、残り30分は質疑応答)かけて取り留めのない内容を散漫的に語らせてもらったのだが、その中で、価格競争に巻き込まれないためには2つの方法があることを話した。

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(こんな感じの集まり具合。筆者が腕まくりをしているのは熱意があふれ出たからではなく気温が暑かったから)


1つは、原料から小売りまでの連合体を作ること
もう1つは、それぞれの企業が見せ方、伝え方、売り方を工夫すること

である。

前者は、企業同士の連合チームを組むことになるので、各社の利害得失や企業間のさや当てもあることなので実現するのはなかなか難しいのが現実である。

それを踏まえて、実現可能なことを言えば、原料から小売りまでの各段階から熱意のある有志を募り、知識の共有化を図ることは可能なのではないかと思う。

繊維業界の各段階での知識というのは驚くほど共有化されていない。
もちろん、業界には「物知り博士」みたいな人が何人かいる。各段階のことにある程度の知識を持っている人がおられるがそれはあくまでも少数派である。

例えば、ウール・アクリル・レーヨン混の混紡糸があったとする。
この糸を3色使ってマダラに染めることは原理上可能である。
ウールとアクリルとレーヨンが染まる温度はそれぞれ異なるから、それぞれが染まる温度で各色を染めれば3色がマダラになった糸が出来上がる。

別に綿とポリエステルでも同じことができる。
染まる温度が異なるだけである。

少し染色の知識をかじったことがある人ならだれでもわかる。

しかし、このことを知らない小売店関係者はけっこう存在する。
彼らが不熱心だと言いたいのではない。
逆に彼らがそれを勉強する機会がこれまであまりなかったのではないかということである。

反対に、染色関係者で小売店のことを知っている人はかなり少ないだろう。
これもそういう機会が少なかったからではないかと思う。

もし、こうした知識が共有化できれば、小売店側から「こんな風に染められないか?」という提案が出てくるのではないか。
染色関係者が作り手として考え付かないような案が、小売店側からは出てくるかもしれない。

今、現在もそういう案は出てきているだろうが、基本的な知識がないから、小売店側の描く妄想や思いつきの域を出ない。
実現できた確率はかなり低いのではないか。

業界には「他工程のことは知りすぎるな。知れば無茶を言いにくくなる」というありがたい教え?があるが、それが通用したのはバブル期までである。
今は通用しなくなったのに、それを通用させようとしているに過ぎない。

そこそこに高い売価で大量に売れた時代なら、無茶も押し通せた。
発注数量で黙らせることもできた。
しかし、今は低価格な代替品の登場によって、中価格帯以上の商品が大量に売れる環境ではなくなっている。
おまけに工賃は上がらない。

数量も少なくて工賃も上がらないのに、製造工程に対して無茶を言って、それを製造工程が受け入れるのだろうか?
時々、受け入れてもらえなくなったという泣き言を聴くことがあるが、それはブランドや小売店側の自業自得である。
知らんがな。

商品開発を円滑に進めるためにも各工程の知識はある程度共有化できた方が良いのではないかと思う。

理想論ではあるが、各工程の有志を集めてフォーラムとか勉強会とかサークルとかが作れれば良いのではないかと思う。
かなり迂遠だが、こういう地道な積み重ねをするほか、繊維業界を変革することはできないのではないかと思う。
一足飛びに変わる方法なんてどの業界にもないのだから。










デザイナーズブランドを取り巻く現状の2つの課題

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 先日、東京の台東デザイナーズビレッジの鈴木村長を訪問した。
目的はとくにない。ごあいさつと雑談程度である。

ここはクリエイターのインキュベーション施設である。

雑談の中から自分なりに現在のデザイナーズブランドの置かれている環境の問題点をいくつかまとめてみたい。

いくつかと書いたが、2つである。
ちょっとかっこをつけすぎてしまった。かっこ悪いオッサンなのに。

まず、デザイナーズブランドの販路がほぼないという状況にある。

クリエイターとかデザイナーと呼ばれる人は元来物作りが好きなので放っておいても物は作り続ける。
そのデザインとかセンスが良いか悪いかは別問題だ。

で、せっかく作っても今の業界では販売する先がない。

自分でインターネット販売をするのがもっともやり易い方法だろう。
しかし、インターネット販売も集客するのが一苦労である。
ポッと出の無名のブランドの通販サイトを誰がわざわざ覗くだろうか。
よしんば覗いたとして、そこで商品を買おうと思う人はかなり少ない。

サイトを覗いてもらうための仕掛けが必要だし、自分の商品を買ってくれそうな人を集めなければならない。
買ってくれなさそうな人を何人集めても買ってもらえない。

話は逸れるが、先日、インターネットでオリジナルのTシャツを販売している方とお会いした。
軌道修正して今は毎月、一定数は販売できているが、開始当時はなかなか販売につながらなかったそうだ。
広告を出稿してみたこともあったが、集客はできるけど売れないという状況が続いたそうだ。

広告を出稿した媒体の読者層と自身が展開していた商品のテイストがマッチしなかったのだと考えられる。

「極端な言い方をすれば1000人訪問があっても1枚も売れなかった」と言っておられた。

ポッと出のブランドが物を売るのはこれほど大変である。

デザイナーズブランドも同じだ。

以前だと、セレクトショップへの卸売りが大きな販路だったが、現在のセレクトショップは有力であればあるほど自社オリジナル商品比率が高い。
雑貨は仕入れ品の比率がまだ多いが、衣料品だと8割くらいは自社オリジナル品になっていてもおかしくはない。
仕入れ枠は2割あるが、この2割はクリエイターブランドためだけのものではない。
ここに国内外の有名ブランドがいくつも入るわけだから新進のクリエイターブランドが入れる確率というのはかなり低くなる。

そんなわけでセレクトショップへの卸売りは狭き門と成り果ててしまっている。

地方の小規模専門店は仕入れ枚数も少ないし、すっかり保守的になっている店も多いから、そういう店はどれだけ売れるかわからない未知数のブランドを積極的に仕入れようとはあまりしない。

残るは百貨店のポップアップショップのみとなる。

これは百貨店側も売り場の目先が変わるから、割合に好意的に取り組んでくれる。
しかし、期間は1週間とか最大でも2週間くらいしかない。
トータルしてもそれほど高い売上高を望むことは難しい。

ただし各百貨店ともポップアップショップの誘致は積極的だから、毎月どこかの百貨店で開催することは可能になる。

フロアや出店場所にもよるが、毎月1週間で100万円売れたとして1年間で売上高は1200万円にしかならない。
単価設定にもよるが1週間で200万円売れたら上出来である。
ネット販売や卸売りを合わせても年商規模は3000万円~5000万円くらいだろう。
もちろん、己一人ならそれで生活はできるが、逆にここから規模を拡大することはかなり難しい。
下手をすると流しの催事屋のようになって年間1000万~2000万円の売上高を稼ぐことに終始しなければならない。

いくら好きな物作りとはいえ、せめて年商規模1億円に届かなくては次の展望も見えないから、最悪の場合は、引退するまでその水準に甘んじなくてはならなくなる。


有力セレクトショップとがっちり取り組んでなんていうのは、現代においては単なる空想か都市伝説の類である。


次の問題点は、売り上げ規模を拡大し、ビジネスを広げようとすると、デザイナー本人がデザインや物作りの業務からどんどんと己を遠ざけねばならないということである。
物作りが大好きなデザイナー、クリエイターにそれが耐えられるかである。

鈴木村長から伺った話だと、卒業生の中にも伸びつつあるブランドがいくつかあるという。

その中の一つは、デザイナー本人が営業、資金繰りを含めた「経営」に徹するようになり、ブランドのデザインはスタッフに大半以上を任せるようになったという。
そうすることでビジネスとしては拡大局面を迎えつつあるということである。

筆者は物作り志向が薄いから、金が儲かるならその体制で何ら問題ないと思うが、デザイナーやクリエイターと呼ばれる人はこういう体制に自らの身を置くことを良しとできるのだろうか?

ビジネスを拡大するためには自らがデザイン業務から離れていくというのは何とも皮肉だと感じる。

欧米だとデザイナーズブランドと言ってもデザインを担当するデザイナーとビジネス・経営を担当するマネージャーとのチームであることが多い。
そのためデザイナーはある程度デザインに専念できるが、国内だと、そういうマネージャータイプのビジネス人間が成長性のあまり見込めないデザイナーズブランドへ身を投じることはほとんどない。
ビジネス人間の多くは、もっと儲かりそうな業種に身を置く。

だからデザイナー自らが経営に徹して、デザイン業務をスタッフにゆだねるほかない。

また現在入居中の別のブランドは、そこそこの売上高があるが、デザイナー自らが手作りしている。
これを工場製造へと切り替えさせているという。

作るという業務をゼロにして、その他の営業や広報、経営業務への比率を高めさせる狙いがあるのだろう。

しかし工場へ製造を依頼するということは、工場に工賃を払わなければならなくなるため、これまでよりも売上高を増やさねばならない。
最初はなかなか苦しいだろう。

業界関係者の中には「自分一人で物を作ってほそぼそとそれを続けていければ十分ではないか」という意見があるが、たとえば、その人が病気で長期入院するようになったらどうするのだろうか?
彼・彼女が手を動かさなければ物はできないから売り上げが作れない。
となるとたちまちのうちに困窮することになる。

どこかで製造を自分だけの手から離すことは重要であるが、物作り志向の人はそれに耐えられるのかどうか。

この2つの課題を克服しないと国内の新進デザイナーズブランドが事業成長することはかなり難しい。
まあ、事業成長なんてしたくないと言われればそれまでである。

事業成長なんかしたくないというデザイナーやクリエイターが覚悟しているならまだしも、その同じ口で生活にゆとりを望むのならそれは不覚悟と言われても仕方がないだろう。














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