南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

フランドル

社名の知名度が低くて、ブランド育成に失敗しているのは三陽商会だけではない

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 バーバリーを失った三陽商会の危機を伝える報道は数々あるが、歴史の順を追ったこの記事はなかなか資料的価値はあるのではないかと思う。

三陽商会、バーバリー喪失ではない失速の本質
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/061400129/?n_cid=nbpnbo_fbbn

どこでも書かれているように、バーバリーの代わりに導入したマッキントッシュフィロソフォーが穴埋めをできなかったというのはその通りだが、三陽商会の凋落はこれだけが原因とはいえない。

記事中では、バーバリーが「中高年向けブランド」になってしまった90年代後半に、三陽商会が独自に「バーバリー・ブルーレーベル」を作って大ヒットを飛ばしたことを触れているが、単なるブルーレーベル礼賛に終わっていない部分が秀逸だと感じる。

 歌手の安室奈美恵さんが97年の結婚記者会見で同ブランドのミニスカートをはいたことで「火に油を注ぐような勢いで売れ出した」(新名宏行・現常勤監査役、社史より)。百貨店にとってもドル箱となった。「女子高校生や若者がこぞって百貨店に訪れた。万引き対策が大変だったほどだ」と大手百貨店幹部は当時を振り返る。

 ただ、世の中が「安室フィーバー」に沸いた頃の、三陽商会の業績をつぶさに見ると、ブルーレーベルが、会社全体の売り上げを底上げするほどではなかったことが分かる。ミニスカートが話題となった97年12月期の売上高は前期から1億7000万円増え1486億6800万円だったが、98年には早くも減収に転じた。2年後の2000年12月期の決算は、26億円の最終赤字となった。


バーバリーブルーレーベルが絶頂期を迎えたときでさえ、わずか1・7億円の増収、ピークは越えたとはいえまだまだ人気を維持していた2000年でさえ、26億円の最終赤字に陥っている。

ブルーレーベルを含んだバーバリーは好調だったのだろうが、それ以外のブランドがまるでダメだったということである。

そもそもバーバリー本社は、ライセンス先が勝手に作った(本来のライセンス契約ではあり得ない奇手)「ブルーレーベル」と、のちに作られる「ブラックレーベル」の存在を嫌っていたといわれている。
嫌ってはいたが好調だったので黙っていたともいわれるが、ライセンス契約が更新されなかったのもこれらを嫌っていた部分があるのかもしれない。

現在は、バーバリーとのライセンス契約を変更し、クレストブリッジとしてこのブルーレーベル、ブラックレーベルは存続しているが、かなりの不調だ。

以前にも書いたが、三陽商会も百貨店もマッキントッシュフィロソフィーが苦戦することはある程度織り込み済みだったと考えられるが、彼らの慌てふためきぶりを見ていると、クレストブリッジの不調は計算外だったのではないかと思えてくる。
しかし、バーバリーの冠ではなく、クレストブリッジなんていう名前に変われば、たとえ商品内容が同一でも売れなくなるのは当たり前だ。

で、90年代から現在に至るまでの三陽商会の失敗の本質は、バーバリー以外のブランドが育っていないことと、バーバリー以外での知名度がまるでないことだ。

ブランドが育っていないことは一目瞭然だからあえては触れない。
問題は、三陽商会という社名もバーバリー以外のブランド名も実は業界人が思っているほど知られていない。

最近はファッション専門学校生ですら「三陽商会」という社名を知らない。
「2年前までバーバリーをやっていた会社」と説明すると、「あー、わかった」と答える程度の知名度の低さである。

ちなみに専門学校生に知名度が低いのは三陽商会だけではなく、オンワード樫山、TSIホールディングス、ファイブフォックス、イトキン、レナウン、フランドルなどかつての百貨店向け大手アパレルは軒並み社名を知られていない。
ワールドは社名だけはかろうじて知られているが、それだけの存在だ。

このあたりはまったく同じ病巣があるといえる。
「カネのない若い奴らに知られる必要はない」と、各社の関係者は思うかもしれないが、知られていないのは存在しないのも同然だから、若い人にとっては存在しない会社なのである。
そして、10年後、20年後は今の若い人が中高年になる。
その時に、見ず知らずの会社の製品を選ぶだろうか。
まあ、ほとんどの人間は選ばないだろう。

20年後は、老人層が支持する会社になってしまっているだろう。
でも、これらの会社が20年後も存在しているとは限らないから、そういう心配は不要なのかもしれない。(笑)

閑話休題。

よく書けている記事だが、異説も紹介したい。

ライセンスの契約更新が上手く行かなくなりそうだとは、業界では早い時期から噂されていた。
記事中に三井物産出身の田中和夫社長が登場するが、その田中社長もバーバリーの契約更新には危機感を持っていたと、中の人に聞いたことがある。
丸っきり楽観していたわけではなかったようだ。
しかし、目に見えた対応策を掲げなかったので、結果としては同じことだったともいえるのだが。

また百貨店の再編は2000年後半に起きたが、きっかけは2000年のそごうの経営破綻だろう。
そごうの経営破綻以降、各百貨店の経営は極めて悪化し、経営統合が進んだ。
そごうも西武も経営破綻した者同士がくっついたし、経営が悪化した三越は伊勢丹に助けを求めた。

阪急と阪神は某モノ言う株主の企業買収を予防するためだったといわれる。


で、戻ると、三陽商会が金看板の「バーバリー」以外のブランド育成に失敗したということは、実は先ほど挙げた「若者に知られていない大手アパレル各社」に共通する問題だといえる。


ワールドは黒字回復と盛んに報道されているが、この2年で新たに話題になった新ブランド、復調ブランドは耳にしたことがない。黒字回復の要因は、経費削減によるものでしかない。
一説には、大規模な人員削減をやった結果、残すべきはずの人たちまでが自発的に辞めたために、逆に予想以上の黒字になったとまで言われている。

あとの各社も似たような状況で、話題ブランドをいくつか傘下に持つTSIは除外して、オンワード、レナウン、フランドル、ファイブフォックス、イトキンで、新たに伸びてきたブランド名を耳にしたことがない。

人件費を含む経費削減で当分の間は延命し続けるだろうが、それはいつまで続けることができるのか。

記事で三陽商会に指摘された事実は、旧大手各社に共通した課題だといえる。



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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25





大手百貨店アパレルは今の若者にほとんど知られていない

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 46歳の初老にもなると、若い人と接触するとジェネレーションギャップに驚くことがある。
ついこの前までは、こちらがジェネレーションギャップに驚かれる側だったのだが、いよいよジェネレーションギャップに驚く側に回ってしまった。
人生も残り時間がそんなになくなってきたことを痛感するし、もう少ししたら老害と呼ばれ始めそうである。

「若き老害」をキャッチフレーズにしている方もおられるが、こちらは「文字通り老害」と相成りそうな気配である。

今年9月下旬からファッション専門学校に週1度講義に行くようになった。
来年1月末までの下半期の非常勤講師というやつである。

生徒の年齢は18~23歳くらいまでの若い人ばかりである。

ふとしたことで「イネドというブランドを知っているか?」と尋ねたところ、10人くらいの生徒全員が「知りません」と答えた。もちろん、イネドを展開しているフランドルという会社の名前も知らない。

もう一発「コムサ・デ・モードというブランドを知っているか?」と尋ねるとこれも全員が「知りません」と答えた。
当然、ファイブフォックスという社名も知らない。

しかし「コム・デ・ギャルソン」は知っており、「よく似たブランド名ですね」と彼らは答えた。
似ているのは当然で、ファイブフォックスがわざと似せたブランド名を付けたからである。

1年くらい前だろうか、繊研新聞に「今のファッション専門学校生は東京コレクション出展ブランドを知らない」という記事が掲載されたが、まあ、それと同じような事柄である。

で、この2つの事象に対して、意見は二つに分かれる。

1、ファッション専門学校生にすら知られていないということは一般人にはさらに知られていないから、それらのブランドや企業の行く末は暗い

2、そんなことも知らないファッション専門学校生はダメだ

という二つである。

個人的には1の立場だが、2の意見もわからないではない。

東京コレクションブランドを知らないというのは、少し怠慢ではないかと思う。
なぜなら、ウェブニュースであるファッションスナップドットコムもWWDも連日、東京コレクション出展ブランドの報道を挙げている。
個人的にはあまり興味がないからほとんど飛ばし読みしているが、ファッション系ニュースサイトをこまめにチェックしていればだいたいのブランド名くらいは覚える。

ただ、若い人が独立系デザイナーに興味を持たないことを責める気にはならない。
もし魅力ある職業なら、オッサン連中がとやかく言う前に自らデザイナーズブランドを調べているだろう。
そうでないということは、それだけ魅力がない職業だといえる。

しかし、イネド&フランドル、コムサ&ファイブフォックスを知らないということを専門学校生の怠慢だというのは、業界人の思い上がりではないかと思う。

なぜなら、これらのブランドはウェブメディアはもちろんのこと、業界紙でも経済誌でもほとんど報道されないからだ。おまけに近年のショッピングセンターやファッションビル、百貨店への出店はほとんどないに等しい。
売れ行きも苦戦傾向が続いている。

これではいくら熱心だったとしても学生がそれらの名前を目にする機会はほとんどない。
報道でこれらを知ることは事実上不可能だし、店舗リサーチで知ることもかなり難しい。
フランドルやファイブフォックスに対して予備知識を持っていないと、それらを追跡することもできない。これらのブランドが存在感を消してからすでに10年くらい経っており、現在20歳前後の若者が予備知識を持っている方がおかしい。10歳当時からフランドルやファイブフォックスの動向を気にし続けるなんてそんな薄気味悪い子供は見たことがない。

はっきりと言ってしまえば、この2社の知名度が低いのは露出不足であり、自己発信不足である。
それが最大の原因だ。

90年代後半に隆盛を極めた大手アパレル各社の中で、この2社は現在もっとも若者に対する知名度が低いといえるが、それ以外の大手も似たり寄ったりでそれほど大差がない。

知人のウェブ業者はオンワード樫山のあるブランドの仕事を請け負ったことがあるが、そのブランド名はもちろん、オンワード樫山という社名すら10代・20代の若い世代にはあまり知られていなかったことに衝撃を受けていたが、その理由は露出不足・自己発信不足だった。

ちなみにイトキンについては、生徒たちは「名前を聞いたことがある程度」と答えており、ちょっと「幻の動物」っぽい扱いだった。
これも理由は同じである。

大手各社からすれば「我々は10代・20代をターゲットとしていなから構わない」と答えるかもしれない。
しかし、上でも書いたようにファッションに多少なりとも興味のある専門学校生でこのレベルなら、一般消費者にはさらに知られていないと考えるべきである。

現在は30代半ば~60代前半くらいの顧客層に支えられて何とかなっているかもしれないが、これほどに知名度がないということは、現在の顧客層の下の層での顧客開拓はかなり難しくなっているということである。
そして、10年後、20年後に、今の若者が30代・40代になったときには、今の大手各社の商品やブランドは選ばれなくなっているということである。

まったく知名度がないブランドを、いきなり30代・40代になったからといって買い始めるわけがない。

ちなみに彼らはラグジュアリーブランドはだいたい知っているし、セオリーは知っている。
今の低価格SPAも知っているし、リーバイスやエドウインのブランド名は知っている。
マッシュスタイルラボやバロック、マークスタイラー、ストライプインターなどは知っている。

となると、これらのブランドは10年後・20年後もある程度選ばれ続けるという可能性があるということで、大手各社はもう少し危機感を持つべきだろう。

何度も書いているが「知られていないのは存在しないのと同じ」である。

かつて隆盛を誇った大手百貨店アパレルのほとんどは、若者にとっては「存在していない」のである。

これは推測だが、メルローズやビギなどもおそらくほとんど知られていないのではないか。次回尋ねてみたい。
メルローズやビギも極めてメディアへの露出、自己発信が少ない企業だからだ。
最近の筆者自身もときどきその存在を忘れている。

ウェブによる自己発信にはリスクはあるが、ゼロリスクを志向してそれを避けていると、これほどまでに知名度を失うという好例だといえる。
仕入れでも製造でも自己発信でもリスクを取らない企業は今後、確実に淘汰される。
世の中にゼロリスクは存在しない。









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