南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

セメントプロデュースデザイン

価格競争に巻き込まれないための2つの方法

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 衣料品に限らず、服飾雑貨、雑貨も含めると今までの売り方で売れるはずもない。
これは各企業がこの15年とか20年間で身を持って体感したのではないかと思う。

昨今流行りのパクリ問題ではないが、見た目の形状だけならいくらでも模倣が可能である。
しかし、一方では模倣によってトレンドが拡散するから、メリットもある。
そうでないとファッショントレンドなんていうのは生まれない。

ブーツカットのジーンズが流行れば、各メーカーがブーツカットのジーンズを発売する。
厳密にいえばそれは模倣である。下手をするとパクリであるが、それによってブーツカットジーンズ人気がさらに過熱してそこに市場が生まれる。

ファッショントレンドというのはこれの繰り返しであるから、一概に「似た物はすべてダメ」なんてことを言いだしたらトレンド品なんてものはなくなる。

ただし、模倣品が出回りすぎると今度は値崩れが起きる。
いわゆる相場価格の下をくぐる業者が多数出現するし、供給量が増えれば市場での価格も下落する。
需要と供給のバランスからいえば当然である。

「低価格品を発売する業者は許せん」なんて声をよく耳にするが、ちょっと短絡的・感情的になりすぎではないか。

実際に物はなんでも安い方が売れやすい。
安いだけでは売れないこともあるが、多くの場合、安い方が売れやすい。
衣料品でも食品でも。それは実体験としてわかるはずだ。わからないならお話にならない。

安い方が売れやすいのだから、少し安い物を供給すれば売れるのではないかと考えるのは供給側としては当然であろう。
家電製品だって出回れば価格は安くなる。高止まりしたままの家電なんてない。
家電が高止まりしたままなら、日本人の現在の生活はもっと不便である。

そして似たような物なら安い方が絶対的に売れやすい。
これは別に消費者のモラルが云々という話ではなく、世界的に共通した消費者心理である。
どんな商品でも市場には必ず低価格の代替品が登場する。
低価格代替品によって消費者にあまねく行き渡るという側面もある。


供給側(製造も販売も含めて)はこの代替品と異なる価値を提示できないと、価格競争に巻き込まれてしまう。
価格競争に巻き込まれているのはその価値が上手く提示できておらず、消費者に伝わっていないからだといえる。


価格競争に巻き込まれないためには、2つしか方法がないと考えている。

1つは、売り方・見せ方・伝え方を圧倒的に変えること
もう1つは、原料から店頭販売までの各段階企業で連合チームをつくること


この2つである。
連合チームを作ることは需給バランスの根本的解決となりうるが、壮大な計画であるし、複数の企業にまたがることなのでなかなかすぐにまとまる物ではない。
長期的展望で取り組むことが望ましいのではないか。

売り方・見せ方・伝え方を変えるのは比較的短期で実現できる。
こちらから取り組む方が容易ではないだろうか。

国内の製造加工業に対してそういう活動をしている企業がいくつかある。その中の1社がセメントプロデュースデザインで、筆者とは意外に古くからおつきあいいただいている。
もう8年くらいになるのだろうか。

ここは衣料品には手を出していない。繊維製品だとタオルとかシオリくらいか。
主に雑貨である。
金谷勉社長は「ファッション衣料は怖くて手が出せない」というが、筆者も同感である。
もし自分がやるとしても衣料品は怖くて手が出せない。
かといって雑貨も怖く感じるが、衣料品と雑貨をどちらか選べと言われるなら、紙一重で「雑貨?」という感じである。

ここの製品で個人的にもっとも評価しているのは、メガネフレーム素材を使った耳かきである。

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正直に言ってメガネフレーム素材を使って何か他の製品を開発するというのはなかなか難題である。

最近だと石鹸だろうか。

石鹸の場合は、原材料と製法を全く変えずに、見た目のデザインとパッケージを変えることで売上高を格段に伸ばしている。
オーソドックスな普通の四角い石鹸を五角形に変えた。
まさしく、売り方・見せ方・伝え方を変えた実例ではないかと思う。

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メガネフレームというと福井県の鯖江市が有名だが、ここの産地も苦しんでいる。
メガネがすっかりファッション雑貨になったし、高価なファッションメガネブランドも出てきたから活況を呈しているのかと思ったら、産地全体としては厳しいそうだ。
倒産・廃業する工場も多い。ときどき倒産情報にも上がってくる。

繊維に限らず何の産地も厳しい。

鯖江市のメガネフレーム産地が苦境に陥ったのは、中国からの安価品が大量に輸入されるようになったからである。では、なぜ中国のメガネフレームの製造技術が向上したかというと、鯖江市が技術供与したからである。
現地では、当時の市長がパンダと引き換えに技術供与を約束したと語りつがれている。

しかも当時の市長は「パンダ=ジャイアントパンダ」だと勝手に考えていたら、実際に中国から送られてきたのは「レッサーパンダ」だったというオチもつけられており、笑い話としては上出来だし、事実だとするなら下手な漫才のネタよりも笑える。

まあ、意味のない外国への善意の技術供与は自国産業に何の利益も持たらさないという好例であろう。

そんな鯖江市(笑)のメガネを含む産地イベント「産地ゴト展」がセメントプロデュースデザインが運営するギャラリーで開催されるそうだ。
決してゴト師展ではない。

http://store.coto-mono-michi.jp/

http://www.fashion-press.net/news/18629

もちろん鯖江市以外の製品も常に販売されており、このギャラリーの特色は、各種イベント時は別として基本的な運営には行政からの補助金・助成金の類が一切投入されていないところにある。
行政からの補助金・助成金なしで基本運営する産地製品ギャラリーはけっこう珍しい。

そんなわけで売り方・見せ方・伝え方を変える企業はポツポツと現れ始めている。

そうなると、もう一つの根本的解決法である、原料から店頭販売までの有機的なチーム作りである。
こちらも本格的なモデルケースがそろそろ登場してもらいたいところなのだが。















生地のスペックや製品の品質は売れるための最重要事項ではない

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 普段、懇意にしてもらっているセメントプロデュースデザインが、湖東繊維工業協同組合との取り組みで、麻バッグを完成された。

http://cementdesign.shop-pro.jp/?pid=46786196

この写真を見て「商品の良しあしは、やはり色柄・デザインが占める比重が高い」と再認識した。
このデザインなら産地ブランドでなくともある程度は売れることが予想できる。

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湖東繊維工業協同組合は、滋賀県の湖東地方の産地組合で、ここは麻織物の産地である。
産地共同のオリジナル製品ブランドも3年ほど前から展開されていたが、商品のデザインは自前だったのか、どうにも外見が野暮ったい。(失礼)

湖東に限らず、数年前から生地産地の組合がオリジナルの製品ブランドを開発しているが、あまり成功している事例にはお目にかかったことがない。
その理由の一つに「色柄・デザインが野暮ったい」ことがあるのではないか。
多くの場合は、観光地の土産物か民芸品の域を出ない。
おそらく、産地企業内の自社スタッフにデザインをさせているのではないかと推測している。
残念ながらデザインを本職としない人間に、製品をデザインさせても良い物はできない。

こういうと、「デザインの素人であるはずのタレントやモデルがプロデュースしているブランドがあるじゃないか」と反論される方もおられるだろうが、彼らはあくまでも「プロデュース」や「アドバイザー」で、実際のデザインはOEM/ODM企業の担当者が行っている。
だから「素人」でもブランドを展開できる。

生地産地ブランドが往々にして陥りやすいのが、「生地のスペック」や「製造工程」への過度なこだわりである。
そこを強調すれば「売れる」と考えているのではないか。
しかし、いくら生地が高品質で丁寧に製造されているからといって、色柄・デザインが悪ければ衣料品や服飾雑貨は売れない。
それなら、グンゼは白肌着だけで売上高が稼げただろうし、ステテコは白無地のままでも需要が減らなかったはずである。


今回のセメントプロデュースデザインの湖東の麻バッグは、限定33個の販売だという。
おそらく、テストセール的な意味合いがあるのだろう。販売の方は順調そうなので、次シーズンからは量産体制に入るのではないだろうか。


製品ブランドをするなら本職のデザイナーやそれに長けた集団との取り組みが不可欠である。

こういう主張をすると、今度はとっくの昔にピークを過ぎたような昔の有名デザイナーと破格の高額ギャランティーで契約をしてしまう。ピークを過ぎているので出てくるデザイン案はあまり良くないし、破格の高額ギャラなので複数年支払うことが難しい。
そうやってまた製品ブランドが頓挫して、産地側は「デザイナーは胡散臭い」という誤った固定概念を持つことになる。
もう何十年も繰り返されてきた構図であり、今後もまた繰り返されることが予想される。

産地の製品ブランド化への道のりは果てしなく長くて遠い。
「男坂」くらい果てしない。





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