南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

クールジャパン

繊維製品における日本製の強みとは?

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 先日、素材関係のある会社の人と話した。
この会社はすでに海外にも営業所を複数進出させている。

近頃、「メイドインジャパン」「日本製」「クールジャパン」を売り出そうとする機運が強まっている。
国威発揚は基本的には賛成だし、自虐の100倍以上マシだと思っている。

生地、製品での繊維製品における「日本製」の長所・利点というのは何だろうか?
それはいまいち曖昧模糊としているのではないかと感じる。

一般的には「高品質」を掲げるケースが多いのだが、ここでいう「高品質」とは物性的なものと仮定すると、実際のところは中国製のほうが「高品質」である場合も増えてきた。
もちろん、いまだに高品質を誇る商品や企業はあるが、そうではないケースがこの10年で増えたという印象である。

例えば縫製でも、高品質な縫製工場もあるが他方ではかなり粗雑な工場も目に付く。
指示通りにサンプル品が上がってくるかどうかでいうと、アパレルやブランドからは「中国工場のほうが指示通りに上がってくる。国内工場はやりにくい」という声もある。

裏地が破れて仕上がってきたブランドもある。

ニットにしてもそうだ。
手編みニットなんていう製品は国内ではほとんど生産不可能になっている。
店頭に並ぶ手編みニットのほとんどは中国製か海外製(とくにアジア地区)である。

専門家の中には「旧型の機械設備を使い続けている国内工場に比べて、中国やアジア地区の工場は最新の機械設備がそろっている」と指摘する人もいる。
機械設備の差は以前からもあったが、それを工員の技術でカバーしてきた。しかし、海外工場の工員が熟練するのに対して、国内の工員の多くは高齢化しており、年数が経てば経つほど老化による衰えが顕著になるという状況もある。

そういうわけで「高品質」というのが日本製の最大の売りになるとは個人的には思えないし、今後、年数が経てば経つほど日本製は「高品質」ではなくなるのではないかとも思える。
クールなジャパンの組織がやっていることはなんだかピントがズレていると感じる。

一方、「日本製」の利点や長所はいまいち曖昧模糊としながらも、良い意味でのブランドイメージがあるらしく、今、中国国内では「日本製」衣料が需要を伸ばしているとも聞く。ただし、それは現地の中国人がMDやら企画内容やらをローカライズさせたものに限られるようだが。

そういう意味においては、「日本製」ブランドのイメージは良いといえるし、良いイメージのまま確立できる可能性も十分にあるのではないかとも思える。

このあたりの意見はその素材関係の会社の人とほぼ同じだった。

この素材関係の会社の人は、日本製の利点・長所を「アフターフォローの誠実さ」にあるのではないかと自社も含めて分析していた。
海外の営業所で活動していると、価格競争では日本製は太刀打ちできないという。
現地の素材はもっと安い。

いわゆる「品質」が高いかというと上に書いたような理由で、一概にそうともいえない。

それでもその会社がある程度の売上高を稼げるようになった理由は「アフターフォローを評価された」からだという。
トラブルが起きた際、日本企業はかなり誠実に対応するが、海外企業は売りっぱなしという場合が多いようだ。
そこを評価されて全面的に契約に結び付いた例もあるそうだ。


このあたりを再度きちんと考えずに根拠なき「日本の物作り神話」を構築するのは危険ではないかと思う。
自虐に陥り卑下する必要は微塵もないが、冷静に強みを分析して、それを育成することを考えないと夢想や空想や妄信だけでなんとかなるほど現実世界は甘くない。
夢想や空想や妄信だけでクールなジャパンを売り続けるほうが我が国の価値を棄損するのではないか。












「伝統」一辺倒では飽きられる

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 クールジャパンも含めてにわかに国産製品が見直されているという風潮が醸し出されている。これもキャンペーン臭と勘違い臭が漂っているのだけれども。(笑)

各ブランドが日本製だとかメイドインジャパンだとかメイドインニッポン(笑)だとかを続々と打ち出し始めている。

これらの多くは、「伝統の技法」とか「匠の技」をウリにしており、どちらかというとやや民芸品、伝統工芸品的な匂いが多いように感じる。

例えばジーンズなんかはそういう打ち出しにマッチしやすい。
何せビンテージジーンズブーム以来、なんだかんだと20年間そういう打ち出しをしているのだから、世間一般への認知度は高い。

ただし、ジーンズ業界が停滞しているのはこれにこだわり過ぎているからではないかというのが、個人的な意見だ。

「ジーンズ=匠の技」みたいなブランドが多すぎて飽和状態にあるのではないかと感じる。

それはさておき。

昨今、唐突に「日本製」を語りだしたブランドの多くは、当然、民芸品・伝統工芸品的なイメージを強めているのだが、筆者にはそれがどうにもミスマッチだと感じられる。
ミスマッチというか「付け焼刃感」がハンパナイと感じられる。

アメリカ発祥のワークブランドやスポーツブランドのジャパン社までが「日本の伝統の技術を用いた云々」みたいな新ラインを立ち上げたりする。
はっきり言って違和感満載である。「お前らアメリカやん。日本の伝統の技法と関係ないやん」と思ってしまう。

また日本のブランドでもこれまで「イタリアガー」とか「パリガー」とか「西海岸のセレブガー」とか叫んでいたブランドが唐突に「日本の匠の技術を用いた云々」なんて言い出しているところもある。
どう見てもクールジャパン的な売り出しに乗っかるための付け焼刃感しかない。

繊維・アパレル業界全体を見ても、なんとなく世界に対して「日本の伝統のナンチャラ」を売り出したいのかなと思ってしまうが、古くからそういう取り組みをしているブランドは別として、売らんかなのためにイタリアーン命みたいなおっさんから突然「やっぱり日本製だよね」とか言われても説得力ゼロである。

日本製の打ち出しって「伝統」とか「匠」とか民芸品以外の打ち出しができないのかと疑問に感じていた。

もちろん、そういうブランドや製品があるのは当然だが、そういうブランドばかりになっている現状はちょっと違うのではないかと思う。

それこそ、伝統とか匠の過当競争になり、その中で激しい生き残り合戦が行われる。
需給バランスから考えても早晩供給過多になるだろうし、もしかしたらすでにそうなっているのかもしれない。

先日、某デザイナーとそんな話をしていたら、そのデザイナーは「ハイテク素材、合繊素材が日本を象徴してるのではないかと最近思うようになった」と言い始めた。

もともと「和」とか「日本製」を強く打ち出しているブランドだったら、「伝統」路線で違和感はない。
しかし、このブランドはどちらかというと欧州的なテイストを表現し続けてきたブランドだし、一部は日本製生地を使用していたがそれを強烈にアピールしていたわけでもない。

このブランドがもし「伝統」とか「匠」とか言い出したら、それこそ付け焼刃感しかない。

今後、欧米市場への販売を考えたときに、やはり「日本」を表すなにかが必要だと感じた。
自分でも「匠」を打ち出すのは違和感があったから、考えた結果が、ハイテク・機能素材を含めた合繊だったというわけである。

たしかに日本の合繊は世界でも最高水準にあるし、ハイテク・機能素材もトップランクにある。

今までの欧州的服作りのままで、そこに合繊を使用することで日本を強くイメージさせられるのではないかという結論に至った。

筆者もこのプランニングは賛成である。

そんなことがあった直後、ジョイジッパーさんもこんなブログをアップされていた。


青い海と赤い海
http://ameblo.jp/knitkitchen/day-20150915.html


これで渚に白いパラソルがあったらトリコロール完成である。

閑話休題。


でも唯一、

今のアパレル業界で

ブルー・オーシャンを作れるとすれば

それは「テクノロジー」なんじゃないかと

思ったりもしてます。

(※「売り方(=サービス)」という視点で見ればブルー・オーシャンになり得る事例は多数あるとは思いますが、今回は「売り方(=サービス)」という概念は除きますね。話がややこしくなりますから(笑))

個人的には

あまり「機能」を前面に押し出すのは

好きではないのですが(笑)


とのことである。

個人的には機能だけを打ち出さなくても、合繊使いによってこんなに肌触りが良くなったとか、表面の風合いが良くなったとかそういう打ち出しでも良いのではないかと思う。

一般的に、外国人は日本に対して「ハイテク」とか「テクノロジー」のイメージも強いといわれているから、ハイテク・機能素材を含めた合繊をメインに打ち出すのは関連付けがしやすいのではないだろうか。

何度もいうが、「伝統」とか「匠」のイメージを打ち出すのは当然だが、その方向だけで日本製のイメージを限定させるのはミスリードを引き起こすのではないか。
それに需給バランスもとりにくい。

もう一方で、ハイテク・テクノロジーをイメージさせる打ち出しを日本製に付与してはどうか。
日本製にというよりは、日本製衣服にと言った方が正確だろうか。


一本柱よりも二本柱の方が安定性は増すではないか。









難問である

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 クールジャパン政策についての議論が盛んである。
部外者からすると、もとよりこれは結論の出ない議案であるので、全方位が納得できる結論が議論で出るとは思えない。

部外者なので識者の言説を読むほかはないのだが、そもそもどうなれば成功型なのかということも明確ではない。
これが企業や業界の話なら簡単で、売上高を10%伸ばしますとか、利益率を2%高めます、というような数値目標が立てやすい。
しかし、これは文化事業であるので、どういう形を持って「成功」と見なすのかがなかなか定めにくい。
また、通常の企業活動とは異なり、どれくらいの期間でその「成功」を目指すのかという期間設定も難しい。

繰り返すが、企業なら「5年後に売上高100億円を目指します」という目標設定が可能だが、文化事業に関してはそうではない。

とりあえず、日本の文化を広めるために国が支援しますよということくらいしか我々にはわからない。

これに対して様々な意見があり、それらは一面ですべて正しい。

例えば、「文化を他国に輸出するのは国策でどうのこうのできるものではない。自然な流れに任せるべき」というものがある。これはこれで正しい。その通り正論である。

しかし、国としてやることを決めたのなら何らかの行動は起こさざるを得ない。

数百億円規模の予算が動く。
じゃあ、このお金をどのように使えば有効なのかというのも明確ではない。
それぞれの意見がすべてそれなりに正しい。

企業活動なら、「○億円の投資で○○活動を行う、その活動によって○○億円の売上高を確保し、利益率を●%高めます」と明確に数値設定が可能である。
しかし、今回の数百億円の予算を投入して、何にどれだけの効果があるのかは現時点ではだれも予測できない。
しかもどれだけの期間取り組めば、効果が出るのかもわからない。

こういうことに国が多額の予算をつぎ込むことに批判もある。
それはそれで正しい。

けれども他方で、他国は文化産業に国が投資しているから育成ができており、我が国はその取り組みが遅れているという意見もある。
筆者の知人で、地場産業とかプロダクトデザイン支援を長年行ってきた一民間人の大先輩がおられる。
マスコミに出てくるような著名な方ではない。それこそ草莽の士である。
彼に言わせると「韓国は国ぐるみでデザイン教育を強化しており、早晩我が国のデザインが追い抜かれるかもしれない」とのことだ。

これは彼の感想でしかないのだが、好き嫌いは別として韓国が近年、自国文化を強硬に国ぐるみで輸出・発信しているのは事実である。
筆者は、かなり「ゴリ押し感」を感じて彼らの取り組みが好きではないのだが、そういう取り組みを行っている国もある。結果的には成功していない部分も多い(例えばアメリカ進出、日本でのミュージカル公演など)が、我が国がそれに近いことをやっても非難されるいわれはない。

で、個人的には慶應義塾大学の中村伊知哉教授が書かれていた意見に概ね賛同である。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakamura-ichiya/20130522-00025115/

難問である。クールジャパンやコンテンツを話題にすると、「そんなの国のやることかよ!」という声が必ず飛び交う。マンガ、アニメ、ゲームの海外人気が認知されたとはいえ、未だサブカル扱いなのだ。

そう、国のやることだ。これは特定産業の育成策ではない。コンテンツを支援するのは、外部効果が大きいからだ。コンテンツ産業の売り上げを伸ばすというより、コンテンツを触媒として、家電や食品や観光などを含む産業全体、GDPを伸ばすことが狙い。むろん、ナイ教授のいうソフトパワー、つまり文化の魅力で他国を引きつける政治学的な意味合いもある。

中略

しかも、日本の文化予算は他国に比べかなり低い。文化予算/政府予算は、日本が0.13%なのに対し、フランスや韓国は1%近くある。文化政策のプライオリティーを全政策のどのくらいに位置づけるか、を考える機会であろう。


とのことである。

そして、我が国の文化事業への取り組みが何となく白い目で見られがちなのは、

それは、予算にしろ規制緩和にしろ、どこにどう政策資源を配分するかの「目利き」が国民から信頼されていないせいもあろう。コンテンツのよしあしを政治家や官僚が判断できっこない、という指摘はごもっとも。審議会のような権威の集まりも白眼視されがちだ。

と指摘されている。

今のクールジャパン審議会の有識者が完全に正しいとは筆者も含めてだれも思っていない。
その有識者の人選でさえ見識を疑われている部分もある。

その上で

20年前、政府にコンテンツ政策を打ち立てようと企てた研究会の事務局を務めていた時、ある委員の発言が今も耳に残る。「こういう政策は、本気で100年やり続けるか、何もやらないか、どちらかだ。」私は、「そうだ、政府は本気で100年やり続けろ。」と言いたい。

と締めくくられており、この部分に賛同する。

成功の形態もわからない、数値化も難しい取り組みとはあっては、「やるか、やらないか」を決めるしかない。その上で何らかの成果が出るまでは「本気で100年やり続けろ」としか言えない。目先の「費用対効果」なんて言い出したらこんな取り組みはしない方がマシということになる。

コスプレイヤーが集まり始めたATC クールジャパンは掛け声倒れ

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 大阪の南港にATCという複合商業施設がある。バブルのピーク時に作られたのだが、バブル崩壊後は凋落の一途をたどり、アウトレットモール「マーレ」を施設内に開業したものの、客足がさっぱり伸びず、テナントも退店しておりゴーストタウンのようになっている。
バブル時の第3セクターの無責任な開発の見本のような建物である。

この1年はATCに行っていないのだが、先日、知り合いのデザイナー氏から「日曜日、久しぶりにATCに行ったら、コスプレイヤーたちの集結地になっている。コスプレイヤーのおかげで、施設内のサイゼリヤは長蛇の列ができるほど繁盛していた」と驚いていた。

ATC凋落の原因はいくつもある。
まず、一つは地下鉄から接続されて南港へ向かうニュートラムの料金が高すぎた。大阪・本町から往復するだけで1000円弱かかる。ニュートラム区間はわずか2,3駅に過ぎないのにだ。4,5年前にニュートラム料金は引き下げられたが、はっきり言って後の祭りである。対応が遅すぎる。

次に、かつてのテナント出店者によると、家賃が高すぎる。家賃はある程度変動しているが、3年前に聞いた話では「1坪10万円」との提示があったという。坪10万円の家賃は大阪なら梅田のテナント出店家賃と変わらない。同じ金額なら梅田で出店するに決まっている。
なぜそんな法外な価格設定なのかというと、第3セクターのお役所仕事の典型なのだが、建設時のバブルのころの家賃設定のままであることと、その家賃をアテにして建設費や施設内装費を費やしてきたから、今更家賃を下げることは赤字になってしまうからだという。
本当にバカも極まれりの話しであり、テナントも集まらず収入は低下の一途をたどっているのに、そんなことをのうのうと言う。

出店者が減少してゴーストタウン化しているのであれば、10坪の店を月額1万円の破格の値段で貸し出して、若手デザイナー事務所や独立したばかりのショップを誘致した方がよほど施設と近隣の活性化につながる。

で、その知り合いのデザイナー氏は「あれほどのコスプレイヤーが土日祝日に集結するのであれば、ATCは集客装置としてコスプレイヤーが利用しやすいような施設や設備を作って、さらにコスプレイヤーを集めたら良いのではないか」という。例えば、コスプレイヤーのためのお着替えルームやコスプレイヤーが買い物をしそうなコスプレ用具一式のショップ。またお金がないコスプレイヤーたちのための格安飲食店の誘致である。
施設内の飲食店で格安ジャンルに属するのがサイゼリヤしかないため、そこに集中してしまう。ならば、吉野家、すき家、松屋、ガストなどを誘致すればさらにATCに集うコスプレイヤーが増える。

例えば、国を挙げて「クールジャパン」を世界に発信しようと経産省は雄たけびだけを挙げている。クールジャパンに含まれるのは漫画、アニメ、特撮、ファッションである。しかし、実際は漫画、アニメ、特撮の文化振興につながるような施策を国が行っているだろうか?
麻生内閣が提案した「アニメの殿堂」は計画中止になり、東京アニメフェアも規制強化で開催が危ぶまれている。大阪府にしたところで、ATCの近隣のWTCに府庁を移転させる計画を立ち上げたものの、それ以外に南港の振興策は皆無である。

「クールジャパン」を標榜するなら、集積しつつあるコスプレイヤーをさらに集めるような施策を打つべきではないか。実態が伴っていないのに「クールジャパン」の看板だけ掲げてもちっともクールではないし、クールジャパンの海外輸出など画に描いた餅である。
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